▲secret class

「荒北くん」
職員室前を通っていると、バタバタとそこから飛び出してオレを呼び止めたのは英語教師である●●先生だった。まるメガネにお下げという如何にも垢抜けてない学生のような出立ではあるものの、隠しきれない美人がはみ出していて密かに人気な教師である。そんな●●先生から呼び止められたのだから、どきっと脈を打ってしまうぐらいは許してほしい。
「ハイ…」
「ちょっと、来て」
ふくよかな胸囲を覆い隠す布がピタッと張り詰めていて、少し引っ張ればボタンが飛んでしまうのではないかと思うとついそこへ目が釘付けになった。そんなオレの様子を気にも止めず、指先が冷たくなった手でオレの手首を掴んだかと思えば、ズンズンと教員室の中へ引っ張り込まれた。
「ねえコレ、ふざけてるの」
キイと椅子が音を立てれば、先生はそこへすっぽりと収まっていた。どうやら怒っているらしい彼女はぷすかと右脚を左脚へ重ねて足を組むと、腕まで組んでほおを膨らませてオレを睨むように見上げていた。少しばかりタイトすぎるスカートの裾から雪のように白い腿がチラ見えしてそそられる。
「スイマセン」
「すいませんじゃないの。頑張って間違えた0点と、何も書かずに0点取るのとでは天と地の差があると思うの」
「スイマセン…」
「だから、すいませんじゃないの。こんなの出されてたら、ただやる気がないんだなって思うでしょ、先生悲しいよ」
やる気が無いわけじゃない。……否、やる気はないんだけど。どちらかというと睡魔に負けてしまったという現実を、仮に先生に訴えたとしてもそれもまたやる気が無いと怒られるのだろう。
しかし、ぷんすかぷんすかと怒りつつもしょんぼりと眉尻を下げる●●先生は本当に魅力的だと思う。
「明日、部活休みでしょう」
「あ、ハイ」
「放課後自習室へ来るように」
「…ハイ、」
「戻っていいわ」
「スイマセンデシタ」
ボールペンでしっし、と出口へ促すと、オレのテストをファイルで挟み他の書類へ目を向けた。失礼しました〜と言いながら教員室の扉を閉め、ついガッツポーズが出たのは許してほしい。
「マンツーマン」
ついニヤリと顔が綻ぶ。部活へ向かう足取りは軽い。