ピピピピという機械音が私の意識を覚ましていく。
「んん、なんで」
今日休みなんだけど。と不機嫌を露わに手探りでシーツの中に埋もれているであろうスマホを探していると、おはよ。という低い声がスマホを探す手とは反対側から聞こえてくる。
「……え、誰」
「松川です」
「あー……松川かー」
如何にもやらかしました。という状況に、徐々に頭も覚醒して、はあ。とため息が溢れる。不満そうね。と余裕の笑みを浮かべているこの松川という男は、私の想い人だったりする。
「んー……まあ、不満」
「え。流石の俺でも傷つくんだけど」
「私も傷ついてる。まさか松川がこんな男だったとは」
顔洗いたい。と逃げるようにベッドを離れようとするも、松川の腕がそれを阻止する。触れた肌から、私の心音がバレないかとても不安だ。
「昨日の夜のこと、覚えてる?」
熱を含んだ眼差し、荒くなった息遣い、ごつごつとした手が触れる感触、唇の温度、松川の額を伝って落ちてきた汗が辿った道まで鮮明に覚えているが、私は覚えてないと迷わず答えた。ふーん、そう。と言った松川の言葉は淡々としていて温度が無くて、大して興味もないけど。と言われた気分だった。
「折角だし、もう一回くらいさせてよ。俺だけ覚えてるのも寂しいし」
「私付き合ってない人とはしない主義なの」
「でも、俺昨日間違いなく▲▲抱いたよ?」
冗談のようなノリにして流したくて、幻なのでは!?とふざけて振り返った先で、唇が重なった。やめてよ、と押し返すも男の力に敵うはずもなく、結局されるがままに舌を絡めた。
「俺だけ特別ってことで」
「……最低」
私の上に跨った松川は、目を細めて親指で下唇をなぞる。
「そんな口叩けないようにしてあげるね」
本当に、この男は最低だ。
title by 婀娜さま