▲ある朝の告白

オレは間違いなく、やらかしている。
隣で規則正しい寝息を立てる▲▲の姿を見て、昨夜の愚行を思い出す。何をやっているんだ、オレは!▲▲の”仲の良い友達”に昇格するまでの努力を振り返りながら、それが一気に水の泡になったのだと悟る。もう酒は飲まないと心に決めてベッドを降り、生々しく脱ぎ捨てられていたTシャツを拾ってそれに頭を突っ込む。
「はあ…。顔洗ってくるか」
恋人を作る気が全くないというのは本人からしっかり聞いていたし、それでも諦めきれなかったオレは、仲の良い友達でもいいからと▲▲のそばにいることを選んだ。そんなオレの状況を見て、周りはやめとけ。と言っていたが、こういうことだったのか。顔を洗うと腕をつたって床に水が落ちる。それをも気にせずに、昨晩の出来事を振り払うようにバシャバシャと顔を流した。
ケトルで湯を沸かし、輸入食品店で買ったイギリス製のティーバッグをマグカップにぶち込む。これは吊るす糸がついていないのが面倒だが、そのまま漬けっぱなしで飲んでも対して渋くならないから気に入っている。ソファへ腰をかけてテレビを付けると、お昼前であることを示す情報番組がかかり、もう11時かよ、と思わず言葉が漏れる。

「……じゅんた、」
ベッドから顔を覗かせる▲▲は、か弱い声でオレを呼ぶ。
「お姫様のお目覚めですか」
こくりと頷いた▲▲はゆっくりとベッドから起き上がり、まだ眠たそうに目を擦りながら、当たり前のように床に落ちたTシャツを拾ってそれを被っていた。その所作に、昨夜の記憶が▲▲にもあることを悟る。
「純太、昨日のさ」
「歯磨きしながら歩いたら危ないだろ?逃げたりしないから終わってから話そう」
▲▲は素直にはーいと言いながらこくんとまた頷く。歯ブラシを咥えたまま頷いたりするなってことが言いたかったんだけどな。

「ごめん、オレ記憶あるわ」
顔を洗って満足そうに戻ってきた▲▲に、自分のと同じ紅茶を淹れて差し出した。無論、さすがにティーバッグは出したけど。
「謝ることなの?」
「いやだろ?友達とヤッちまったなんてさ」
自分が傷付くことがわかっているから、▲▲と目を合わすなんてこともできず、いつもより早口になっていることも自覚している。スタスタとソファへ戻り、まあ座れよ。なんて▲▲に余裕をこいた。
「正直言うと、ちょっとショックだった」
困ったように笑う▲▲に、オレは涙が出そうになるのを堪える。
「まっ、そりゃそうだよなー。友達って思ってたやつが急にオオカミになったら」
「そうじゃなくてさ。……純太、嫌だったんだって思って」
嫌だったなんてことはない。
少なからず元はと言えば身体の関係すら築けない間柄で、▲▲の身体に触れられたことだけで言えば寧ろラッキーでさえある。だけど、これからの関係を考えたらと思えば複雑な心境であるのは間違いないが。
「オレはラッキーだったよ。▲▲みたいな可愛い女の子とあんな一晩が過ごせたんだからな」
「私の思い込みだったらごめん。でも、昨日淳太が私に好きって言ってくれたこと、雰囲気に流されて言った言葉には思えなかったから」
「…忘れてくれていいよ。迷惑だろ?」
「迷惑じゃないから忘れなくていい?」
「…▲▲、彼氏要らないんじゃなかったのか?」
「純太以外は要らないよ」
オレは返事の代わりにキスをして、▲▲をベッドへ放った。