「オレ、さ」
夕日に照らされた手嶋は結んでいた髪を解き、ゆさゆさとその癖っ毛を風に揺らされながら恥ずかしそうに視線を下にして泳がせている。
「おまえのこと、好きだわ」
今日の突然の呼び出しから、この空気感でなんとなく察してはいたものの、本当に告白をされると結局まごまごと狼狽えてしまう。
「…意外」
口から出たのは変な言葉で、手嶋はそれを断りと捉えたのか、気まずそうな笑顔を浮かべて顔を手で覆った。
「…いや…なんか、ごめんな!オレみたいなのに急に好きとか言われても困るよな」
「あ、えっと…そうじゃなくて」
そうではないと伝えたいのに、まるで聞く気がなさそうな様子の手嶋はやっちまったわー。などと笑っているが、覆った手の指の隙間から覗く目は少し赤らんでいて、先ほどの私の回答が矢張り断りとして機能していることを確信する。
「いやいや、まじごめん。時間取っちゃって悪かったな」
「あ、いや、だから」
「そんじゃ帰るわ!●●も気をつけて帰れよ!」
「待ってって!」
咄嗟に掴んだ手嶋の手首は思っていたより男のそれで、告白と相まってつい鼓動が跳ねるのは致し方あるまい。眉毛を八の字にして困ったような様子でなんだ?と振り返った手嶋とは、今もまだ目が合わない。
「そうじゃないんだってば。私の話も聞いてよ」
確かにそうだな、と気まずそうに頷いた手嶋は私へ向き直る。
「私、手嶋は自転車が一番だと思ってたから」
「まあ…それはそうだけど」
「だからそういう事って興味ないのかなと思って、諦めてた」
「諦めるって、」
「それでも手嶋のことずっと近くで応援してたのは、手嶋のことを人としても好きだからだよ」
「…そんな言い方されたら、男としても好きって思ってくれてるって勘違いするぞ?オレ単純だから」
「そう言ってんだけど、伝わんないみたい。複雑な人だから」
「まじかよ」
どんよりとしていたオーラがキラキラと華やかになり、先ほどとは正反対の表情を浮かべる。
「待って、今のオレって超ダサい?」
「まあ…最高にダサいかもね」
「うわー、最悪」
「いいじゃん私相手なんだから」
手嶋のダサい所なんて滅多に見られないぞー、と茶化してやろうと思えば、少しむっとした様子で私を一瞥していたのでなんだか言い出せなかった。
「おまえだから嫌なんだよ」
なんて真顔で言うもんだから、私は顔に熱が上るほかない。お前のことになると急に余裕なくなるんだよなー。と呟くと、困った様子で頭を抱えていた。