「結婚、だめになった」
「寧ろなんでお前が嫁入りできると思ったんだ」
「知らないよ、親が勝手に進めた話なんだし。私の人生そういうルートって思うじゃん」
嘘だろーと電話越しで聞こえる声が思ったより落胆していた事が非常に気に入らなかった。まさか相手に少しでも気があったんじゃないだろうな、と思わず携帯を握る手に力が入るが、「えー就活?婚活?やだーどっちにしろだるーい」と間抜けなその声に肩の力が抜ける。まぁ ▲▲らしい。「心配するな。言っただろう?そのうち広い部屋に住ませてやるって」「でたージャミルの友離れできないやーつ。まじでそんな事言ってたら彼女できないよ?童貞のままだよ?」「お前だって処女だろ」「やだセクハラ!死ね!」「下手な事しないでそのままあと数年家で大人しくしてろ。俺が卒業したらどうにかしてやるから」「どうにかって?」「下手撃って履歴に傷が増えるより、大人しくしてたら俺が全部上手いことやってやる」「うまいこと?…あぁ上手いこと、かぁ。まぁ確かにジャミルがそういうなら間違いないんだろうけど」「まぁ、俺が言うのも何だが悪くないと思うぞ。言うとおりしていればそのうち周りが羨ましがるような生活ができるんだ」「いや別に羨ましがられたいわけではないけど、面倒な事は何もしたくないし考えたくないわけよ。ずっと屋敷の掃除でいい」「そんなわけないだろ」「そんなわけあるの。ジャミルと違って凡人以下の私は平穏平凡が一番だかんね」「心配するな、そのうち気付いたらお前の粗末な部屋サイズのベッドで毎日寝られるようになってる」「その粗末な部屋があるのは生家なんだわ。私の親にも謝れ」
「ともかく、何もするな。俺を信じていろ」
ずっとプランは練ってた。見合い話があったのが予想外だったがそれも潰してしまえば逆に計画を進めやすくなった。あとは外堀を埋めて、流されやすい ▲▲をそのまま意識させればいい。既成事実をつくってしまえば嫌でもそれが普通なんだと思うしかない。これで晴れて俺達は夫婦になれる。
「さすがジャミル」
ほら、結局は自分が全部悪いんだぞ ▲▲。俺は昔から呪縛のようにお前のその言葉に依存してしまっている。その言葉を俺だけにお前が向けてくれるなら簡単にモラルなんて捨てられるんだ。
お前が、悪いんだからな。