▲夜風と純情
「どうしたの」
一人で空を見上げる●●を見つけて声をかける
「赤葦くん。……なんだか、眠れなくて。赤葦くんはどうしたの」
「●●が居なくなったから探しに来た」
腕がギリギリ触れるくらいの距離に腰をかけて、●●と同じように俺も空を見上げてみた。授業で何座がどうだとか習ったような気もするが、全くわからない。だけど、きらきらと瞬くそれらは綺麗だなと思うし、隣に●●が居ればそれは尚更だった。
「ていうのはまあ冗談だけど。俺も同じだよ」
「ふふ、赤葦くんって冗談わかりにくいよね」
「●●が部屋に居なかったことから知らなかったし」
「覗いたのかと思った」
「心外だな」
昼間の喧騒が嘘みたいに静かなこの場所に、二人の笑い声だけが響いている空間はとても居心地がよかった。
「きっと今この瞬間のこと、卒業してからも思い出すんだろうなって思うよ」
「どうしたの急に。卒業はまだ先だし」
「うん。でも、なんか青春してるなと思って」
へへ、と照れ臭そうに笑った●●は、普段より幾分か大人びて見えた。
「高校生活最後の合宿も明日で終わりかー。楽しいこと沢山あったなあ」
「●●思い出に浸りすぎ」
「ずっと見てたよ、赤葦くんのこと」
心が大きく脈を打つ。こんな状況でこんな言い方、下手に勘違いするからやめた方がいいと冗談めかして教えてあげたかったが、何分そんな訳がないと思いながら少しの勘違いを捨てきれないか自分が騒いでそれどころではなかった。
「……知ってるよ。色々フォローして貰ったし、感謝してる」
「んー、ふふ。それもそうなんだけどね、」
勢いよく飛んで立った●●は俺の正面にしゃがみ込んだ。しっかりと視界に入ってきた●●の顔は、見た事のない女の顔になっていて煩い心臓がさらに高鳴る。
「好きなの。赤葦くんのこと、ずっと好きだった」
●●の告白と共に吹いた風は周辺の草を揺らしてサラサラと音を立てる。最後だから言いたくなっちゃった。と立ち上がろうとした●●の手首を掴んで、自分の腕に仕舞い込んだ。
「全然気付かなかった」
「鈍感そうだもんね」
「俺もずっと好きだったのに」
「そう、なんだ」
「●●も鈍感」
ふふ、と笑い合った俺たちは唇を重ねた。