▲幸せとは程遠い
▲▲が垢抜けたのは半年前、夏休みが明けて登校すれば様子の変わった女が数人居るが、その数人の一人に▲▲が入っていたのだ。毛染めが特段規制されていないとはいえ、綺麗に真っ黒だった長い髪は一切の色素が抜かれて綺麗な金髪に変化を遂げ、眼鏡を脱いだ目は大きく開かれ、下向きだった睫毛は上向きに反り返りそして長くなり、挙げ出すとキリもない。可愛くなったことは認めるが、素直に喜べないのは▲▲から他の男の香りが消えないことに由来している。
そしてこの場で俺が「で?」と発言したのは、目の前に泣く▲▲の姿があって聞きたくもない話を聞かされている最中だからである。
「それでね」
鼻を吸ってとぼとぼとまた話し始めた▲▲はまるで俺の気持ちには気付いていない。このシチュエーションにも腹が立つが、話の登場人物の男にも甚だ腹が立つ。
「……泣いたら解決するのか?またその何君?の所に戻れんの?」
それほどキツい言い方をするつもりも無かったが、自分でも驚くほど酷く冷たい声をしていた。▲▲も想定外だった俺の様子に驚いて顔を上げて俺の方を向いた。
「ごめん」
眉尻を下げた▲▲の後頭部に触れてそのまま引き寄せれば、▲▲の唇に自分のそれを引っ付ける。キスに慣れた▲▲は抵抗する素振りも見せず微動だにしない。
「……京治君」
大した女経験も無い癖に、余裕なんて一つも無い癖に、俺の口からは一丁前に強がった言葉がコロコロと転がっていった。▲▲は眉尻を下げて困った様な顔で微笑みを浮かべて、ありがとうと言った。
「寂しい時は俺が側に居るから。代わりと思ってくれて良い。いつでも呼んで」
▲▲に偉そうなことを言っておいて、俺だって自分を傷つける恋しか出来ないじゃないか。