▲毒占欲

自分の人生を振り返れば、いつも記憶の節々に▲▲がいる。
幼少期、母親同士が仲が良かった事と俺達の歳が近かった事もあり別に会いたいと望んだわけでもないのに無理やり挨拶させられた茶会で▲▲と出会った。
その時の▲▲はというと今と変わらない危機感のない間抜けな様子で何がそんなに嬉しいのか満面の笑顔を浮かべながら「これから遊ぼうね」「よろしくね」「▲▲って呼んでね」とぐいぐい距離を詰めてくる。しかし不思議と疎ましさを感じることはなかった。それどころかそれからの俺達は親が望む以上に一緒にいたと思う。
イルミ、イルミと必要以上に俺の名前を呼ぶ彼女の声はいつまでも耳に残っている。
変わったのは14か15になった頃からだ。その頃になれば俺は自分が▲▲を好きだととっくに自覚していたし▲▲も勿論そうだと思ってた。あと何年かすれば正式に許婚の話が固まり所謂恋人、更には夫婦になるものだと思っていたし、これから経験していくであろうあれこれを頭の中で考えるときにそこにいるのは当然、彼女。
しかし疑う事もなかったそれは、あの夏。「私、好きな人ができたの」赤い顔で言われた突然の告白に俺は頭から水をかけられたような衝撃を受けそして世界が引っくり返った。
俺だと思っていた。服が女らしくなったのも、髪型を気にしだしたのも、女友達とやらだけで盛り上がっていた秘密の話も、俺だと、俺なんだと思っていた。
あの瞬間から俺は自分が何気なく抱いていた彼女への恋心なんて陳腐なものは棄てることにした。
じゃあこれは何かなんて、それは愛だとか綺麗なものじゃない、何か言葉を当て嵌めようなら、一番しっくりくる言葉はきっと独占欲。▲▲は俺のでないといけない。それがどんな感情でも。結論がそこまではっきりしたならあとは簡単だ。いつもの様に合理的に事を進めればいい。
土台を固め、周囲を囲い、要らない芽は摘んで、水をやる。あの日から十数年。今のところ全て順調だ。
経験していったあれこれも当初の予定通りそこに▲▲がいたし、これから経験するであろうあれこれも▲▲がそこにいるだろう。

「ちょっと、くすぐったいんだけど、何?」

テレビを見ながら寛ぐ彼女を後ろから抱きしめながら、「別に」と一言。
左手の薬指を見つめながら俺は、そろそろかな。と思う。ここだ。ここさえ手に入ればまた一つ彼女の深いところが手に入る。ゆるりと抱きしめる手を腰から腹に回し子宮があるであろう部分を服の上からそっと撫でる。 

そして、次はここだ。

時折俺を見つめるその瞳の中に、恐怖があるのを知ってはいるが、今はそれすらも満足だった。その瞳が映す全てが俺であれば、今はただそれだけで。