私はずっとメガネにおさげなんていうとんでもなく典型的な真面目ちゃんである。別に自ら望んで真面目ちゃんしている訳ではなく、きっかけがないのだ。家はまぁ厳しい方だし、この姿でできた友人関係は所詮この界隈だし。
「なんて、言い訳だけど」
テレビに映る大好きなバンドマンを見てこうなれたら良いのにななんて思いを巡らす。
「ピアス、開けちゃおっかな」
翌日登校するとクラスメイトの耳が気になる。まじまじと見たことはなかったが、財前くんの耳はとても輝いていてつい釘付けになって眺めてしまった。
「何見てんねん」
視線を感じたらしい財前くんに絡まれて驚く。近くに来てるのも気づかなかった。
「ね、ピアス、あけるの痛い?」
「どうやろなぁ?もう忘れたわ。何、開けたいん?」
こくりと頷けば、ニヤッと怪しげな笑みを浮かべて意外やなあと呟いた。
「俺が開けたるよ」
きっと夢は夢のままと自分では開けないまま過ごすことになっていただろう未来は彼によって変更されたらしい。私の口からは考える間もなくありがと、という言葉が流れ出て、いよいよ引くに引けない状況が出来上がる。
「ほな今日俺予定あるから明日でいい?」
「まだピアッサーとか買ってなくて、」
「俺使ってないニードルあるからええよ」
え、あ、でも、なんておどついてる間に財前くんはほな明日〜と手をひらひらと振りながら自席へ戻る。待って、ニードル怖い。
翌日の放課後、私は招かれるままに財前くんのお宅へお邪魔することとなった。
「おじゃまします」
「誰もいぃひんから安心し」
バカにするような笑みを浮かべている彼に私は少し鼓動が激しくなった。ここ、座っといて。と彼の部屋のベッドを指さされたので、私はその付近の床へ腰をかけた。財前くんはおしゃれな入れ物の中から鋭い棒を取り出すと私を見て、覚悟は決まりましたか?と笑った。
「ニードル怖いんだけど」
「ニードルのが痛ないって言うけどなあ」
「ピアッサー買ってきた…」
「ふーん。じゃ、それは自分で追加で開ける時使い?今日はこれで開けたるから」
そして〜?となんだか楽しそうな財前くんに圧倒されて私は反論も出来ない。怖いって、言ってんじゃん。
「これは、俺からのプレゼントですー。昨日の用事はこれを買いに行ってん」
黄色の石が光るピアスを手のひらで転がす。さて!始めますよーと私の耳に財前くんの手が触れる。財前くんの吐いた息が私の耳に届いてくすぐったい。
「てか床じゃなくてベッドに座って欲しいねんけど、見えにくいから」
「あ、うん」
いそいそとベッドの上にお邪魔するとなんだかとても色々と意識してしまう。これはメンタル衛生上よろしくないと思う。
「あと場所俺が決めて良い?」
「耳たぶでお願いします」
「残念」
耳元で喋るのやめてくださいなんて言う間は準備されていない。そもそも私達2人しかいないこの部屋でその発言はなかなか危ないだろ、ていうか男の子の家に上がって大丈夫なの、なんて今更か。ぐるぐると不純なことを考えてる間に耳に針が触れる痛みが届く。
「わー、貫通してるわ」
「痛い」
「ハジメテやしなぁ」
「変な言い方しないでもらえますか」
さっき財前くんの手のひらで揺れていたピアスがニードルに装着されているらしく、それが私の耳を貫通する。
「あー、」
「できた…?」
「これで俺を死ぬまで忘れられへんなぁ」
「え、」
「ピアス、通すたびに俺のこと思い出してな」
おどおどし始める私の唇に財前くんのそれが重なるまであと5秒。