彼女と別れた。それが理由だった。▲▲が俺に好意を持っていることはなんとなくわかっていた。わかっていて呼び出したのは、前述の通り彼女と別れたからだ。次の彼女候補等ではない。寂しさ或いは性欲の捌け口として呼んだのだ。着いたんだけど、号室何号室だっけ、というメッセージに506とだけ返すと直ぐに既読になり、部屋のチャイムが鳴る。通話を押して直ぐ切って、オートロックを解除すれば▲▲は画面から消えた。そして1分ほど経った頃もう一度チャイムが鳴るので玄関の鍵を開けると、そこには可哀想な▲▲が立っていた。
「赤葦くん、」
「寒かったでしょ。急に呼び出してごめんね」
入って、と促せば嬉しそうにうん、と頷いた。
「そこ、座って」
ソファを顎でさせば、おじゃまします、と小さい声で呟きながらちょこんと座る。小動物の様で少し、可愛い。
「あったかい飲み物、コーヒーかココアしか無いんだけど…」
「あ、ココア好き」
別れた彼女が置いて行った外国製のココアを別れた彼女が使っていたマグカップに淹れて▲▲に渡す。
「ありがと」
俺は机に置いてしばらく経った冷めてしまったコーヒーを啜りながら▲▲の隣に腰をかける。
「赤葦くん、今日どうしたの。元気ないでしょ」
だから来たんだけど。と眉尻を下げる▲▲は、本当に下心もなく俺を心配して来てくれたのかもしれない。そんな▲▲を利用するなんて、本当に俺は最低だと思う。
「うん。元気ない。……彼女と別れたんだよね」
「あ、え、あぁ、そう…なんだ」
少し気まずそうに目を泳がせて逸らしたのは、彼女の存在を知らず自分が俺に好意を抱いていたからか、或いは俺の魂胆を察したからか。
「▲▲、コーヒーは飲まないの」
「あんまりかな。コーヒーは苦いから、紅茶の方が好き」
「ふーん、こんなに美味しいのに」
ほら、と唇を重ねて舌を挿し込むと、▲▲は驚いた様子で俺の胸を叩く。
「ちょ、っと!赤葦くん!」
「俺のこと、きらい?」
「きらいとかじゃない、けど…」
「じゃあ、すき?」
「すきっていうか、」
「ていうか?」
「……すき、……だけど、」
「じゃあいいじゃん」
俺が重しになって▲▲がソファに沈む。最低な夜はこれから。