通勤列車で久しぶりに会った"元"彼女は、想像よりかなり大人びていてあの頃の面影も薄れていた。
「▲▲、久しぶりじゃん。お前も帰り?」
それでも平然を装って声をかけたのは、きっと俺の強がりだ。なんとなく、どことなく、もう手の届く距離にはいない気がして、でもそれは悔しくて、俺はそんなこと微塵も感じていないように振る舞った。
「ううん、私は今から出勤」
「今から?大変だねぇ」
腕を組んでやれやれ、と首を横に振っていると、発車しますの掛け声と共に電車が揺れる。おっと、と扉に手をつくと、扉と俺に挟まれた▲▲が小さくなっていた。
「悪り、」
「大丈夫」
笑顔を向けられたが、俺に触れないように小さくなった?という疑惑を浮上させて勝手に傷ついている。なんだよ、昔はあんなに俺のこと好きだったくせに。てか、なんで俺も傷ついてんだよ。
「なんかお前、雰囲気変わったね」
「良く言われるけどそれって褒めてるのかな」
「俺は褒めてるつもりだったけど」
気まずくなって嘘をついた。褒めてなんかいないに決まってる。だって俺を好きだったあの頃のお前はもっと可愛かった。
「ふふ、その声の冷たさで言われてもね」
嘘をつかれたと気付いているのに笑った彼女にまたむかついた。まるで俺になんて言われたってどうでもいいみたいに。
「はあー!あの頃の▲▲は可愛かったなぁ」
▲▲を見つけて気がついた時には、大人びた▲▲もまた良いと本当は思っていた。この▲▲の冷たさも、もしまた距離が近くなれば昔みたいに戻れるのではないかと、思っていた。あわよくば、という気持ちを込めて言った一言だったが、その瞬間▲▲の目は氷のように冷たくなっていた。
「都合が良いの間違いではなくて?」
「そんなこと思ったことねぇよ」
「私ね、エースと関わって気付いたことがあるの。大勢の中の1人になりたいんじゃない、私が大勢の特別になりたいんだって。教えてくれてありがとね」
職場の最寄駅なのか、或いは俺と話したくないからか▲▲は電車から降りていく。どう言う意味、なんて野暮な質問をする隙さえない。
車窓から夜の煌びやかな街を眺めながら、若い頃に逃した魚の大きさに気付き唇を噛む。