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「さぁ遠慮しないで食べて良いわよ」
目の前にずらりと並ぶご馳走のそれはそれは豪華絢爛なこと。「わー!美味しそう!やべー!」家では中々食べれないその料理の数々に私の口からはすでに涎が止まらなかった。遠慮しないでと言ってくれたキキョウさんを見た後に隣にいるシルバさんを見て「気にしなくていい」とお言葉をもらい、なんとなく「全部食うなよ遠慮しろよ」ミルキさんを見て「うわっ涎汚っ本当に女かよこいつ」キルアくんを見て「・・」カルト君の冷たい視線から逃げるように隣に座るイルミさんを見ていいんですかと確認すれば「もうフォークとナイフ握ってるくせにそれ聞くの?」と彼も眉間に皺をよせて冷たい目で私を見ていた。いいっていう事だろう。それでは遠慮なく!いただきまーす!と目の前の肉に噛み付く瞬間、
その場にいる全員がこちらを見ていたのは気付かなかった。
どうしてこうなったかというと私が面と向かってぶん殴る宣言をした人こそゾルディック家の長男のイルミさんで。
あれから数秒後、彼から顔面パンチを食らって見事気を失った私が目覚めたのが2日後の今朝の事。
しかも目覚めた場所はあのゾルディック家のお屋敷の中でご丁寧にもしっかりと治療までしていただいた後であった。
「●●家の問題児ってお前だったんだ」
と目覚めて初っ端、本当に気配もなにもなくていつからいたのかも分からない男から突然隣で声をかけられた私は人生で一番びっくりしたといっても過言ではなかったはずだ。しかしなんだかどうも見たことのある顔に天才的脳味噌は瞬時に記憶のデータ照合をかけブラックアウトする前の彼だと叩き出し「あ、さっきのお兄さん」と声をかけると「お前の言ってた殴りたいゾルディック家の長男ね俺」とまさかまさかの種明かし。言っている事をすぐには理解できず首を傾げていると「イルミゾルディック」と彼は自身を指差し平然と自己紹介する。
のがきっかけで私は腹に抱え込んでいた不満を思い出し、そして瞬間的に、爆発したのだ。
「姉さんの婚約者ってお前か!嫁1人守れないしょうもねー男のくせに伝説ブランド名乗るな!」
それからはまたもや一瞬の事で。
突きつけた中指がぼぎりと変な音を出しておかしな方向に曲がったなぁと理解する間もなく私の眼前には再び拳が。
あ、やばい。ブラックアウト。試合終了。お疲れ様。
再び目が覚めると窓の外は夕暮れでで、目の前には妙齢の男女。と後ろにあのくそ男。
誰だと身構えたのもつかの間、親だと名乗ったのは男のほう。
「息子がすまなかった」と頭を下げたのがあのシルバゾルディックだというのだから私はとんでもないことをやらかしたのだと反射的にジャポン式土下座をするしかなかった。家族になんて言い訳しよう。と今更ながら冷や汗だらだらである。しかしそこからは割と友好的な人たちで。目が覚めたならこの後良ければと家族との夕食に招いてくれて、冒頭に戻るのだ。
がつがつ。「おいそれ俺の!食うな!」むしゃむしゃ。「あーすいません。お兄さんに殴られた後遺症で私今耳が遠くて」もぐもぐ。「ママ!やっぱりこいつ殺そう!」ごくごく。
「お前ほんといい性格してるよ」
向かいに座るミルキくんと張り合うように目の前の料理を平らげていく。そんな私に対してどこか意味深に微笑むゼノさん。騒がしくても気にもとめていないシルバさん。「げぇ」と呆れている弟君達と何故かこちらをじっと見てくるイルミさん。もっと殺伐とした一家かと思えば皆で食事もするようだし意外と家族仲はいいんだなぁ。と何気なく思う。そして何よりも平らげていく側から嬉しそうに料理を追加でもってくるキキョウさんのなんていい奥様っぷり。聞けば弁当等も作るそうで、こんな大きな一族に嫁いでも給仕にさせず家族のために腕を振るう彼女の女としてのレベルの高さ。なのに溢れる気品。あぁ姉さんもきっと負けず劣らずこなせるはずだ。この中に混ざる姉さんを想像すると嫌でもふふふと笑みがこぼれてくる。「何笑ってるの?」といぶかしむイルミさんに「いえいえ」と私は喜びが隠せなかった。
「姉とイルミさんが結婚したら私も月1はこの夕食会に御呼ばれしようかなと」
呼ばれなくてもきますけどね。と付け加えると「来るな!」向かいから私の顔目掛けてナイフが飛んでくる。それをキャッチしたイルミさんは何も言わなかったが、そのナイフを奪って私がミルキくんに投げ返すと流石に頭を叩かれた。ちくせう。