そこからといえば私は食後のデザートまでしっかりと頂き、ミルキくんとキルアくんと3人で1時間ほどゲームで白熱したのが、ずるい裏コマンドのハメ技でぼこぼこにしてきたミルキくんとぼこぼこの喧嘩を始めたものだからイルミさんのストップが入り、なんだかんだで家に帰ることになった。気付けばすっかり夜だ。骨は折れたままだが私の鼻血も止まったし、今麓まで下りればぎりぎり深夜発の最終飛行便には乗れるだろう。そして帰りはてっきり執事さんの運転かと思ったが、

「ほら、早く乗りなよ」

驚いたことにイルミさんが送ってくれるらしい。なんだか最初のイメージと随分かけ離れてしまった。ぶっ飛ばす勢いで直談判するつもりだったが、ちゃんと話せば意外と事実の食い違いがあるのかも。なんて考えながら私は彼の助手席に乗り込んだのだった。

「初対面と思えないくらい弟達と馴染んでたねお前」
「最初はイルミさんに文句言いに来ただけだったのに結局遊びに来たみたいな感じになっちゃいました」
「文句?殺しに来たんだろ?」
「まさかまさか」

へへっと笑うと彼はまたこちらをじっと見つめる。お願い流石に今は運転に集中して。隣崖だから。

「ちゃんと話せなかったですけど、姉さんのことをよろしくお願いします。なんなら輿入れもっと早められません?知ってます?毎日刺客がきてこちとら大変なんですよ。私が守るからいいんですけど、姉さん達の心労の方が先にキそうで。ていうかもういっそ先に一緒に暮らしたらいいじゃないですか。そしたら私もそれを理由にミルキくん達とゲームしに行けるんでででででちょ!いたい!なんで抓るの!」

二の腕をぎゅっと抓られたものだから思わず私は体を窓際へ非難させた。ぎゅっとなんて可愛い言い方で実際は肉がちぎれたんじゃないかってくらいの威力である。信じられないとばかりに彼を見たがイルミさんは相変わらず何も答えない。幸い視線はちゃんと前を向いてくれている。それはよかった頼むぜ安全運転。

「なんなんですかぁ。残念ですけどこんな私が義理の妹になるんですからね。面倒くさがらずに家族付き合いしてください義理兄さん。ていうかミルキくんと私同じ歳らしいんで普通に義理といわず妹が増えたと思ってくれたらあだだだだだ!もうやだ!なんなの!?こわい!」

摘まんでくる腕を避けながらじんじんと痛む二の腕を摩っていると「お前さ」とイルミさんが口を開く。

「料理できる?」
「は?できるわけないですよ」
「作法礼法は頭に入ってる?」
「入ってると思います?」
「男と寝たことは?」
「は!?へ!?いや、あの、せっせっセクハラ!」

「一応は名家だろ」と謎にため息を吐かれるとなんとなくごめんなさいって気持ちになってしまう。私はそっちはてんでダメなんですって。と笑うとこちらを一瞬見てむすっとされた。

「あ、でもその点うちの姉さんは完璧です。間違いなくゾルディック家に恥じない嫁になります」

私が保証します!と言うと急に車が急停止した。
あまりに突然で勢いのある急停止に体がふわりと浮いたと思えばヘッドレストにそこそこな勢いで後頭部をぶつける。いったい!!もうなに!!ちかちかする目を瞬きしながら運転席を見れば、思ったよりも近くにあるイルミさんの顔。ずいっと体をこちらへ寄せて、私の顔を見ているがその顔からは何を考えているのか読み取れない。

「お前、なにができるの?」

そういわれると難しい。
私は本当になにも出来ない子なのだ。
ただそうだな、私ができると断言できるものって言えば。

「色んなものを、ぶっ飛ばすくらいですかねぇ」

絞り出したそれをそう言うや否や、一瞬目を開いたイルミさんは何を思ったのかふっと楽しそうに表情を崩した。

「な、なんですか」

この人てっきり鉄火面だと思っていたけど意外と表情筋生きているんだ。

「いや別に。確かに色々ぶっ飛ばされたと思って」

それだけ言うと何を思ったのかイルミさんは手早くギアを切り替えこの狭い道で勢いよく方向を切り替えると今来た道を戻り始めた。え、ちょ、待って。忘れ物?私の乗る便時間ぎりぎりなんだけど。視線で無言の焦りを送っていると気付いたのかどうなのか、「んー」と何かを考える素振りをした後、一言。

「俺とお前で結婚しよっか」