「いやだから意味わかんないって!」
「俺に言うな!イル兄に直接言えばいいだろ!」
「言って伝わらないからミルキに言ってんじゃん!ってあー!!またそんなクソみたいな事しやがって!!」

がちゃがちゃがちゃとコントローラーの操作音が部屋に響く中、反則技を使うミルキに腹が立った私は思わず肩をド突けば、「おま、ほんっと下品な女だな!」肩をド突き返される。「ふんだ御姉さまって呼べ!」鼻フックをかますとぎゃっと聞こえる悲鳴。

「都合良く乗り気になるな!ったくこんな奴のどこがいいんだよイル兄は」

「意外に可愛いんだよ、こいつ」

私とミルキの間に突然ぬっと現れる顔に「「ひぃっ!」」と驚き先程までの小競り合いとは打って変わって2人で反射的に仲良く抱き合えば、すぐさまイルミさんにべろりと剥がされた。

姉の婚約者に文句を言いに行ったあの日。
何故かその婚約者に気に入られた私は、まさかの代替を要求された。姉妹でとんだ修羅場である。そんなことしたら今まで苦労してきた姉さんに嫌われるどころか恨まれる!そう思い自殺するかまで考えたのだが、そこから話は予想にもしてなかった方へ転がっていった。

いや、まじで、本当にごろりごろりごろりと転がったのだ。

まず姉はこの話を聞いて狂喜乱舞で喜んだ。
そんな感情を露にする姉を見たことが無い私はぶっ倒れるほどの衝撃を受けたが、聞けば姉としてもゾルディック家の縁談が重荷で仕方が無かったようで。てっきり嬉しかったのだと思っていた私のなんて阿呆だら。
次に我が家族も大喜びした。それは縁談とは無縁の存在であった私を厄介払いできた挙句にそれがあのゾルディック家なのだから一石二鳥、いや百鳥だと父は泣いた。母ももうバーサーカーとして扱うしか使い道がないと思っていたから・・!と泣いた。酷い言われようだ。私も心の中で泣いた。
初めて我が家に来たイルミさんがそんな我々をいつも以上に死んだ顔で見ながらそっと私の手を握ってきたのを今生忘れ事はないだろう。私はこの冷徹な暗殺者にさえきっと同情されてしまったのだ。

そんなこんなで本当に突然で急な展開に対して意外にもゾルディック家側の反応は割りともう分かっているというような感じだった。ずっと苦い顔をしているのはミルキと私くらいだろう。

「あの、本当に申し訳ないのですが私何もできないんです」なので断って頂いても、そう言うより先に私の腰に腕を回したイルミさんが「母さん教えてあげてよ。まぁ要領悪いし無理なら無理でいいから」なんて言うものだからきらきらと輝くキキョウさんの前で私は口を噤むしかなかった。

「イルミが決めたならいいだろう」

シルバさんは端から私の意見を聞く気が無かった。

そうこうあって早1ヶ月。
私はなんだかんだゾルディック家にいる。

「イルミさんなんで私と結婚するなんて言ったの?」
「毒の耐性あるみたいだし、お前なら刺客がきてもある程度自分で対処できるだろ」

手間省けるかなぁって。なんて、酷い言い様だ。その言葉に思わず顔をくしゃりと歪ませ睨みつけるのだが「ほら行くよ」そんな酷い言い様の割には随分と柔らかい表情で彼は私の手をとり歩き出した。
これから先どうなるかなんて分からない。
それでもこの手の温もりを心地良いと感じているのは事実なのだ。ならば存外、この展開も悪くないのかもしれない。なんて思いながら私も彼の歩幅に合わせて歩き出したのだった。


…fin?