▲イチゴ

「なあ蔵、見てへんと取ったろうかなとか無い訳」
「んー、無いなあ」
コイツは携帯片手にニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて私を眺めている。前々から思ってはいたが、中々気持ちが悪い。悪趣味男である。
「無いなぁちゃうねん。こんなモンこんな上に置いたら取られへんやろ。絶対お前やん」
「俺かもしれへんけど、俺じゃないかもしれへんのに。俺のせいにするのはあんまりちゃうか」
「お前が置いた訳じゃなかったら取ったらへんのかいな、そういう話ちゃうやろ」
「え〜、だって▲▲ちゃんが「ここに置いたのはお前やー!」いうて」
「そんな言い方はしてへんし、早よ取ってよ」
部室のロッカーの上に置かれたバケツを指すと、蔵ノ介はうんしょ、と立ち上がり踵を床につけたまま手を伸ばす。
「あー、あかんわ。届かへん」
「背伸びしたら届くやん、何してんのまじで」
「こんなとこ置いたあかんよなあ」
困った困ったと腕を組んで考え込む。考え込むような話ではない。
「なあもうふざけんとってや」
「あ、思いついたわ!俺が▲▲ちゃんのお立ち台になったるわ」
ほら、俺の背中に乗り?と四つん這いになるこの男は一旦何がしたいんだ?
「ええて、お前が背伸びして取れよ」
「ええねんええねん、俺も届かへんかってほんまごめんな。▲▲ちゃんの上に乗るのは忍びないから乗って!ええから!」
「ほんまお前埒あかんわ」
腹を括って背中に足を乗せると、土足はあかんて!と突然騒ぎ出す。うるさいなコイツ。渋々靴を脱いで背中に踏み入れると、おお〜という謎に嬉しそうな歓声を浴びる。気持ちが悪い。さっさとバケツを取っておりると、満足げな男がニッコリ笑ってこちらを向いている。
「ほんま気持ち悪いな、お前」
「俺的にはこんなツンケンした▲▲ちゃんがいちごのおパンツでも穿いてくれとったらな嬉しかったけど、まさか真っ白なおパンツとはなあ」
腕を組んでふむふむ、と感情に浸っているこの男を一発殴ってからバケツを頭から被せた。
「掃除お前がせえよ、しょうもない」