▲雪が溶ける

春は桃色が舞い、夏は水色が揺れる。秋には赤色が舞い、そして白が降る。▲▲の居ないこの季節ももう3度目になる。俺はまだ、乗り越えられてはいない。だけど、3年も経てば次第に記憶が薄れていくのも感じる。昨日のことのように思い出せることもたくさんあるのに、些細な雑談や、当たり前にあった日々の当たり前の時間の過ごし方が記憶から抜け落ちていくのを火に火に感じている。最後に一緒に歩いたこの道は、ただの家路で、その日も今日のようにちらちらと雪が降り始めていた。だけど、何を話していたかなんて思い出せなくて、そんな自分が嫌になる。仕事で何かある度に、新しいことに気づいた時、面白いマンガに出会った時、事あるごとに▲▲に言わなきゃ、と思いながら誰もいない家に帰り着いた時の寂しさと、▲▲の好きなシナモンロールをつい買ってしまうことも、それをどこが美味いんだと思いながら自分で食べる瞬間の辛さも、全て現実なのに、それに反して▲▲という記憶が徐々に薄れていること、日常生活が送れるようになった事、誰かと居れば笑えるようになった事も全て現実で。▲▲という存在がゆっくりと過去になろうとしているのを感じる。
「それでも俺は▲▲だけだよ」
次の相手を見つけようだとか、そんなことは微塵も思わない。きっと俺を待っていてくれてると信じてるから。
「早く会いたいよ、▲▲」
ふわりと、▲▲の匂いがした気がした。