▲フラグ回収

その日は酷く蒸し暑く、泥水の様な汚い雨が降っていて、不愉快に拍車がかかっていた。
「このアスファルトが濡れたにおいって私苦手」
じめじめとした湿気と雨によって被服が体にまとわりつき、暑さで吹き出す汗が気持ち悪くベタついて更に最悪だ。
「俺はこの天気の方が苦手」
「この天気得意な人なんているの」
ケラケラと笑う彼女は、俺より遥かにこの天気が得意だと思う。
「お腹すいたけどさ、こんなんじゃ寄り道もできないよね」
「あー。俺の家寄る?」
「今私史上最悪にくっせぇかも」
「そうかな?ずっと良い匂いしてるけど」
「え、何、クンクン嗅いでたの?」
「わざわざ嗅いだわけじゃないけど。……何だろう、柔軟剤?」
外国製のやつ使っててよかった〜、と顔を綻ばせる▲▲は、じゃあ寄ろうかな!と丁度辿り着いた俺の家へ向かう階段に片足を乗せる。
「ポップコーンある?」
「無いけど」
「え〜……」
「帰る?」
「寄らせていただきます〜」
おじゃまします、と玄関を抜ける▲▲の足取りはかなり慣れている。
「あれ?お母さんは?」
「どっちも出張」
「なんかエロアニメぐらい都合がいい状態やな」
「何言ってるの。……シャワー浴びたかったら浴びてもいいよ、着替えは俺の服しかないけど」
「フラグ立ちまくりやな」
「帰る?」
「京治くんごめんねって!」
ずっと騒がしく何か喋りながら▲▲は浴室に向かった。

程なくして、お先でした〜とタオルで髪を拭きながら戻ってきたので俺もシャワーを浴びに浴室へ向かう。扉を開けるとむわっと生暖かい空気が身を包み、いつも自分が使っている石鹸の匂いが立ち込めている。
「やばいな、」
先ほどまで一糸纏わぬ▲▲がここに居たのかと思うと、思わず自身が昂ってしまう。駄目だ、と頭を振って自分の不甲斐なかった試合を懸命に思い出しながらシャワーに打たれる。
「京治くん、喉乾いた」
扉を隔てた向こう側からこんな状態の時に急に話しかけるのは最早嫌がらせである。
「待って、今シャワー浴びてるから」
「長い〜」
ガラ、と音がしたのでまさかと思って振り返ると頬を膨らませた▲▲が立っている。うわあ、という情けない声をあげてしまうわ、シャンプーが目に入り込むわ、抑えていた昂りは復活するわで三重苦である。
「え、ちょ、っと」
「扉閉めて!」
「あっ、ごめん」
「なんで中に入ってくるんだよ」
「いや、こんなの見て放っとけないでしょ」
▲▲は俺の下半身から目が離せない様だ。
「フラグ回収やな」
「馬鹿じゃないの」
雰囲気も何もない状況にすかしつつも、この悪天候も悪くないと思ってしまう自分もいたりする。