▲ある非番の日

「はい、●●です」
「もしもし▲▲ちゃん、今何してんの?」
「今ですか?隊舎前の草を毟ってます」
「はぁ?▲▲ちゃん今日非番やろ」
「そうですけどヒマだったので…」
「ヒマならええわ、俺んとこ来ぃ」
反論するままなく伝令神機の機械的なツー、ツー、と通話終了を示す音に変わる。非番とはいえ隊長に呼び出された訳で、作業着のままというわけにも行かず、一度自室へ帰ってどろどろとまとわりつく汗を軽く流してから死覇装に着替えて平子隊長の待つ部屋を訪ねた。

「▲▲ー、おっそいわ」
「お待たせして申し訳ありません」
「隊舎やったらすぐそこやんけ」
「作業着だったもので…」
「わざわざ着替えたん?ええのに、そのまんまで」
「そう言う訳には…」
「ふーん。まあええわ」
ところで、と前置きをした平子隊長はいそいそと立ち上がり、棚の扉を開けて何かを取り出すとこちらへ差し出した。
「甘いの好きやろ」
「こっ、これは!」
「ヨーカンもろてん。好きなんやったらーと思てんけど…そんなに目ェキラキラさせとったら聞く必要もないな」
「……本当に、いいんですか」
「ええけど…他の子に言うたらあかんで?エコヒイキやー!言われて面倒くさいねん」
「嬉しいです…!必ず2人だけの秘密にします」
「2人だけの秘密て」
少し愉快そうに笑った平子隊長は、羊羹と一緒に取り出していたらしい風呂敷にそれを包んでくれた。
「洗って返します」
「ええよ、それごとやるわ。俺や思て大事にしてな」
「わかりました!ありがとうございます」
「わかりましたやあらへんがな。…てか、▲▲ええ匂いすんねんけどお前風呂も入ったな」
「あ…ハイ、余りにも汗でどろどろだったので」
「……ほんまは何か期待してたんちゃうの?」
にやりと口角をあげた平子隊長は、私の腕をそっと掴む。
「平子隊長、隊長は今日非番じゃありませんよ」
そう言うと、マジメちゃんやなぁと言って腕を離した。それが妙に名残惜しく感じてしまったのは、まだ気が付かなかったことにする。