一体、この数刻でどれほどの虚を始末したのだろうか。霊圧も底をつき、遂に立つことさえもままならなくなった私の命が尽きるのは時間の問題だろう。最後の一体を無い力を絞り出して斬った後、私の足は機能しなくなり地面に倒れ込む。長いようでいてとても短い人生だったが、それなりに充実した日々だったと思う。唯一心残りといえば
「ーーーー」
耳を劈くような奇声が響いたかと思うと、これまでと比べ物にならないほど巨大な虚がゆっくりと姿を現す。
「こんなの…、もう…」
無理、と言いかけたその時、守るように前に現れたのは、私の尊敬してやまない平子隊長だった。隊長は、いつもの落ち着いた声色で「もう大丈夫や」と言った。綺麗に切り揃えられた長い髪が風にそよぎ、瞬きをした次の瞬間には私と対峙していた虚は消えていた。自分の無力さを感じるとともに、隊長に惚れているという実感が手のひらに残っていた。
「▲▲、怖い思いさしたな」
大丈夫やったか。と私の頭を撫でる手は温かくて心地がいい。
「平子隊長……申し訳ありませんでした」
「何を謝ってんねん」
「折角隊長から任せていただいたのに、何も出来ませんでした」
「めちゃめちゃ出来てるやろ、アホかお前は」
呆れたようにため息を吐くと、「セクハラや言うて騒ぐなよ」と言って足と背中に腕が周り、私の体が宙に浮く。
「平子隊長、私重たいです」
「お前はこんな時に何を気にしとんねん」
「だって、隊長が急に抱っこなんかするから」
「しゃーないやろ、お前歩けへんやんけ」
「はい、歩けません」
「はい歩けませんやあらへんわ」
「すいません、平子隊長」
「謝らんでええ。俺は▲▲が生きとってくれたらええ」
「平子隊長、」
「なんや」
「好き」
「おまっ、急になんやねん!落とすで!!」
「はい、落としてもいいです」
落としてもええですやあらへん!という平子隊長の大きな声が森に轟く。
伝えてよかった。もう、後悔しないように。