「食うてるか?」
「はい」
「はいやあらへん、食うてないがな」
今年入隊した子の歓迎会と称して開かれた飲み会で、当の主役はまわりと馴染めていない様子で正座で硬直していた。今期は元々人の集まりが悪く、その上途中で挫折した人が相当数居たらしく、うちの隊に来たのはこの▲▲1人だった。
「すいません、いただきます」
「おん、ちゃんと食べや」
食べな酒回るんも早いで、と言いながら▲▲の隣によっこいしょと腰を下ろしたのは自分でも上手かったと思う。
「ごめんな▲▲。うちの隊にも女の子おんねんけど仕事出てて今日あんまし来れてへんからおもろないやろ」
「とんでもないです、そんなことないです」
「▲▲は酒飲めるん」
「あ、はい。嗜む程度には」
「ほな好きなもん注文しぃな」
「先ほど麦酒いただきました」
ジョッキを握り上げてぐい、とそのまま嚥下した。
「もうそれヌルなってるやろ」
「まだまだおヒヤです」
「ほんまか?貸し」
半ば強引に▲▲のジョッキを奪って一気に飲み干すと、▲▲は呆気にとられたような表情でカラになったジョッキを眺めていた。
「やっぱしヌルかったやないか!」
「そんなことありません、ヒヤヒヤでした」
「ほんで?何がええねん。甘いんするか?」
こくん、と頷いた▲▲に飲みやすそうな酒を選んでやる。
「メシは?何が好きなん」
「はい、えっと…刺身が好きです」
「刺身?甘いんと合うんかいな」
「そういうの気にしないタイプなので」
「まだまだやなぁ。そういうのが一番大事やねん」
とは言いつつも、卓上に置かれた刺身をいそいそと▲▲の前に並べる。
「ほら、食べや」
「すいません、ありがとうございます」
「この鯛絶対美味いで。食べ」
「はい」
さっきまでの硬直が少しは柔らかくなったようで、美味しそうに食べて飲んでを楽しんでいる。
「美味しいです」
「そらよかった。餌付け作戦大成功や」
「なんですかそれ」
「▲▲がちゃーんと俺に懐くように餌付けしてんねん」
「うわ!●●さん、うちの隊長には気をつけてくださいね!」
「ああ?お前余計なこと抜かすなよ」
「●●さんこっちに来たほうがいいです!隊長の隣は危ないですから」
「えっ、あ、あの」
「危なないで、▲▲。俺の横おり?」
遂には隊員が▲▲の存在に気付いたようで、余計なことばかり抜かし始めたものの飲み会の終盤には▲▲と色々話も出来たようだった。
▲▲に余計なこと吹き込まん様後で圧かけとかなあかんわ。