「おっ、▲▲おった」
「お疲れ様です、平子隊長」
「ほんま疲れた〜。今日飲み行こや」
「いいですね。…でも隊長大丈夫ですか?」
「なにがや」
「今帰ってこられたばかりじゃないですか」
「せやねん。ほんっま疲れてんねん。せやから飲み行こ言うとんねん。労われや」
「ふふ、わかりました」
「ほなあと1時間ぐらいしたらココ集合な」
「わかりました」
長期で出られていた隊長は、いつもよりげっそりしていて本当に疲れている様子だった。こちらへ戻れば仕事も山積まれていることだろう。長期だったのもあり荷解きもあるだろうに、今日は飲みに連れて行ってくださるらしい。なんと優しいのだ。
時間通りに先ほどの場所へ戻れば、いつもより拍車がかかって猫背になっている隊長がこちらを見て手を振る。
「おそいわ▲▲〜」
「まだあれから1時間も経ってませんよ」
「あー?せやったか?まあええわ。行くでえ」
すたすたと歩き出す隊長を小走りで追う。どうやら今日は私以外に隊員はいないらしい。
「隊長、珍しいですね。私だけなんて」
「他の奴おったらやかましいやん」
「やかましいの好きかと思いました」
「今日はほんまに疲れてんねん。▲▲に癒されたい気分やったところに丁度通りかかってくれたからな〜。調子良かったわ」
「私に癒し効果は無いと思いますよ?」
「それがあんねん。俺には」
こちらをちらりと見やってにやりと笑った。こんな隊長は初めて見たからか、どくんと脈が大きく鳴く。
「照れとんか?可愛らしいのぉ」
「て、照れてません!」
いつのまにか着いていた飲み屋の暖簾をくぐり、いつものものをいつもの席で頼む。
「しっかし今回ばっかはほんまに疲れたわぁ」
「おひとりで行かれたんですよね」
「せやねん。失敗した。次からは▲▲も絶対連れてくわぁ」
1杯目の麦酒をすぐに飲み干した後、机に突っ伏す。
「やっぱり飲みに来るのは今日じゃなかったんじゃないですか?」
「なんでや」
「平子隊長クッタクタじゃないですか。早く就寝された方が…」
「俺は就寝より▲▲がええねん〜。甘えさせてや」
グラスを持つ私の指に隊長の指がゆっくりと触れる。これは、何!?眠たさからか疲れた体に酒を流し込んだからか、少し潤んだ目でじっとりと私を見つめる隊長は、私をからかっているのだろうか…?
「た、いちょ…?」
「▲▲、それ美味しい?」
「え、あ、…はい、美味しいです」
「俺も食べたいなぁ」
「っえ!?」
はい、と小さく開けられた口に誘われるように美味しいと答えた冷やしトマトをそっと放ると、隊長は満足気に笑顔を浮かべた。
「ほんまや、美味しいなぁ」
お待たせしました、と運び込まれたのは、隊長の2杯目の麦酒である。
「隊長、2杯目が来ましたよ」
「おぉん」
突っ伏したまま起き上がらない隊長の目はほのかに閉じかかっている。
「飲めますか?」
「あたりまえや、まだ1杯しか飲んでへん」
がばっと勢いよく起きたかと思うと、2杯目のそれもまた一気に飲み干した。それがまるでトリガーのように、先程までとは比べ物にならないぐらいぐったりと机に突っ伏した隊長はゆっくりと目を閉じた。果たして隊舎まで引っ張って帰れるだろうか。そんな心配をしながらも、隊長と触れた指の熱さを感じる。
「一体、なんなの…」