▲▲とは、何かを約束した関係ではない。ただ、お互いに都合が良い時に肌を重ねるだけの関係。正直俺は誰かに縛られるつもりもないし、自由に生きていたいと思っている。意外なことに▲▲とはその思想も合致していて、お互いにお互いが都合の良い相手なのだ。
そう思っていた。
その関係に亀裂を入れたのは、間違いなく俺。
「聞いてへん」
「聞いてへんって…別に報告する必要もないでしょ」
▲▲は意表を突かれたような表情をしていた。それはそうだ。俺自身でさえ、自分の言葉に驚いている。
「そら…そやけど。…そやけど、相手に悪いやろ」
「親が勝手に準備したお見合いだよ?相手に悪いなんてこれっぽっちも思ってもない癖に」
相手に悪いなんて事は、▲▲の言葉通り全く思っていない。しかし、▲▲はこの見合いを断ると言っているが、どうしてか俺はこの現実がおもしろくない。
「ほんまにめっちゃええ男やったらどないすんねん」
「ええ男なら息が詰まるからお断りする」
「ほな丁度ええいい感じの男やったら?」
「え?…んー、でもお見合いなんて数時間で丁度ええいい感じの男かどうかなんてわからないよ」
「ほなやっぱし断らへんやないか」
「なんでそんな怒ってんの!」
「怒ってへんわ」
「怒ってんじゃん。…でも、もし私に男が出来ても真子ならすぐに次の女の子見つかるよ」
「やっぱり受ける気ぃやんか」
「そんなこと言ってないじゃん。…真子、さっきからどうしたの?」
「お前が他の男のモンになるんが嫌や」
「……、」
「…って言ったら、お前もう俺と会ってくれへんやろ」
「どういう意味か、聞きたい」
こんなに女らしい▲▲は今日初めて見た。俺のこんな情けない姿を見せたのも、今日が初めてではあるが。いつもより潤んだ大きな目は俺を捉えて逃さない。その視線は俺に思わず期待を持たせる。
「好きや、▲▲。俺の女になってくれ」
「嘘みたい」
「嘘ちゃうわ。どう言う意味や」
「こんな日が来るなんて思ってもみなかった」
私も好き、と▲▲が呟いた直後、唇が重なる。その唇はいつもよりあたたかくて、いつもより少ししょっぱかった。
「見合い自体断れよ」
「わかってるよ」