▲美しい色だけを知りたい

▲▲と”朝”を共に迎えたことはない。何故なら▲▲には、この夕暮れの日が沈み始めた頃に帰るべき場所があるからだ。今日も例外なくいつものように帰り支度を進める▲▲の指に触れると、どうしたの?と俺に優しく笑いかける。しかしその目はどことなく冷たさも孕んでいて、引き留めようとしても無駄なことと悟る。
「指まで綺麗やなぁ思て」
「また適当なことばっかり言って」
「適当なことなんか言うてへんわ」
この左手の薬指に絡まる丸っこい装飾品がなければ、という一言を伏せただけである。
「なあ、▲▲」
「んー?」
「もう一回だけ。…あかん?」
仄かに赤らんだ頬に手を差し伸ばすと、その手は頬に届くこともなく▲▲に掴まれて阻止されてしまう。それが答えだと知りつつも、顔を近付ければ最も容易く唇が触れ合った。
「▲▲、」
「今日だけね」
この”今日だけ”は初めてではない。きっとバレるリスクの低いなんらかの日なのだろう。そんなことを考えると、どれほど頑張っても自分は2番目なのだと痛感する。
そんな現実には目を伏せて、今日もまた終わりのない闇に沈んでいく。



美しい色だけを知りたい



現実も、▲▲のアイツだけに見せる姿も何も考えたくない。ただ、▲▲が俺を愛してくれるこの瞬間だけを見て生きていきたい。





TITLE BY ノーチラス 様