▲▲の彼氏は、男の俺から見てもかなり男前であるし、性格も良くて腕っぷしも良い。強いてダメなところを挙げるとするならば、誰にでも優しいことくらいだろう。無論、▲▲はこいつと結婚するつもりだろうし、相手もその準備を進めているらしい。
初めてだ。こんなに人を殺したいと思ったのは。
こんなにも釣り合っている2人の間に俺がどんな形で介入しようと、俺に勝ち目はない。彼奴さえいなければ。そう、彼奴さえ居なければ、分母が万だろうが億だろうが一の可能性があったというのに、彼奴が居るせいでその僅かな望みさえ消えてしまった。
「おー、▲▲やないか」
「平子隊長、おつかれさまです」
「しっかし今日もまあ暑いなあ」
「隊長は特に羽織もありますからね」
「せやねん。……あー、せや、▲▲ちょうど良かった」
「はい?」
「今度の仕事、アイツ2日間ぐらい借りてもええか?俺1人で行ってもええんやけど…」
「お気遣いありがとうございます。でも、お仕事ですから、どうぞ隊長のご指示のもと」
「すまんな」
いつもの調子で言えていた自信はない。そもそも俺が誰かに仕事を振るのは当たり前なので、事前に▲▲に許可取りをした試しもない。▲▲はそんな俺の怪しげな挙動に気付いた様で、眉毛をハの字にして不安げな表情を浮かべる。
「隊長も、どうかお気をつけてくださいね」
豪雨が体を打ちつける。あたり一面は赤く染まり、血生臭い。俺はと言えば、虚や悪人を捌く時にはない高揚感に包まれている。
「ごめんな、▲▲。お前の大切な人、守ってやれへんかったわ」
不思議な虚に一瞬だけ体を乗っ取られたその隙に、どうやら俺は此奴を刺してしまったらしい。そう、一瞬だけ乗っ取られていた内に。間違いはない。だって、ここに至るまでの事の記憶がないのだから。手元に残った感触と、光景が全てもの証拠である。
「あかん、口角があがってしゃぁないわ」