無駄に若かった。
もう今思い返すことも躊躇うレベルであの頃の私は若さ故に痛かった。
元々面食いな自覚はあったのだが、彼に一目惚れした挙句に猛アタックを続けたのはいいが結局の所は都合のいい女のポジションで落ち着いてしまったあの頃。
彼と会うときはアドレナリン全開でこれが全て正しいなんてなるくせに会わない時は病む。
どこにでもいるつまらない女に私は成り下がってしまったのだ。
なんて、自覚できた事だけ私を褒めてあげたい。
突然呼ばれたある日の夜中。携帯のコールに飛び起きて慌てて身支度をし、急いでタクシーに飛び乗って会いに行った私に対して彼はやることやったら早々にホテルの部屋から追い出した。
あまりに酷い扱いに悲しみよりも困惑が勝ち、涙も出なかった私は帰宅後シャワーを浴びながらふと床の排水口に目をやる。
ぐるぐると渦を巻いて吸い込まれていく水と泡が流れきったのを見届けた頃には自分の頭が妙にスッキリしていくのを感じていた。
もやもやとした思考がスーッと晴れていくような、この感覚は随分と久しぶりだ。
馬鹿らしい。
目が覚めれば早いもので私は彼を追いかけるのを、やめた。
追いかけるのをやめても、追われることがなく、結局そこまでの関係だったのを再度確認した事で悲しいくらいにすぐに終わってしまった。
それからの私は何度か恋をしたものの、優先順位は圧倒的に仕事になった。
時間や思考を仕事に費やし働き続けていると気付けば社内でもある程度の地位に就いていた。
まぁこれもよくあるつまらない女の話である。
「やあ」
グループ会社のレセプションパーティーに出席した私に声をかけてきた人達の中でその声が一番耳にこびりつく。
あぁ声だけで誰だか分かる自分も嫌だなぁ。
理解が追いついてないまま振り返ると忘れもしない彼がそこにいて、まるで昨日まで会っていたかのようかに平然と私をみている。
「どうしてイルミがここにいるの?」
「仕事。そっちと同じ」
▲▲の会社の重役じゃないから安心しなよと付け加える彼。
私は上手く返事ができない。
頭の切れる彼に下手な芝居は墓穴を掘るだけだろう。
「週末空いてるんだけどご飯行こう」
時間連絡してなんて一方的言うと去って行く背中。その背中を見ながらもう二度と会うか。そう心のなかで誓い、私はグラスに注がれたシャンパンを一気に飲み干したのだった。