▲Fickle midnight
いつも通りの仕事終わり。
時計を見ればもう日付が変わろうとしている。ターゲットが1人になるタイミングを狙ったがまさかこんなに時間がかかるとは。深夜料金取ろうかしらなんて、考えながらそそくさ現場を離れようとした私に不意に声をかけてきたのは古い付き合いであるイルミだった。どうしてここに?と尋ねれば彼もまた仕事終わりだったようで、姿を見かけたからついてきた。なんてあっけらかんという彼に私は思わず顔を顰めた。
「これでも仕事中は気配消してたんだけど」
「うん。消えてたね」
「いつからついてきてたの?」
「今日の夕方辺りかな」
仕事終わるまで待ってあげたんだ。なんて平然と言うのだから腹立たしい。一応それなりに仕事はプロだと思っていたのに彼の存在に気付けなかった私は嫌でも格の違いを感じさせられる。
「そういう時は仕事前に声かけてよ」
暇なの?と嫌味を言っても彼は「仕事中のお前見るの好きなんだよね」なんて言う。
「やってることストーカーだから」
「でも俺がいるおかげで▲▲は死んでないってこと分かってる?」
その言葉にピンと来たのは数分前ある場面だ。背後から妙な気配を感じて身構えたが振り返った私には先程倒したターゲットの死体があるだけ。気のせいかと思ったあの感覚は既にイルミに助けられていた後だったなんて。
「…やっぱりあの時のあれって、」
「うん、そう。▲▲はツメが甘いんだよ」
なんてあっさりと言われるものだから表情には出さないようにしたけど奥歯を噛み締めた。悔しい。ターゲットを仕留め損ねただけでなく、気まぐれで付いてきたストーカーにその尻拭いをさせて命まで救われてたなんて。
不甲斐なさからつい口を噤めば、「何か言う事ないの?」とイルミが一言。おそらくこの嫌味は私の自責を和らげるようとしてくれているのだろう。悔しいが有り難く「ありがと」と返す事にする。
この男、ただのサイコかと思えばたまにこういう優しさを垣間見せるから未だ邪険にできない。これは私の弱さだよなぁなんて思っていれば不意に聞こえた「あ、そうだ」なんて棒読みの声。
「どうしたの?」
「じゃあこの後付き合って」
え、それは嫌だ。早くシャワー浴びて寝たいのにと喚く私を担ぎ上げると彼は人の言葉も聞かずにずんずんと歩いていく。
「シャワーは浴びさせてあげるよ」
ん?え、ちょ、待っ