▲酔花

「たいちょ、ちょっと、お花を摘みに行ってきますねぇ」
「おん、便所な。大丈夫か?」
「らいじょーぶれす」
ふらふらとした足取りで便所へ向かう▲▲は今日も今日とてしっかりと酒が回っているようだ。しばらくの間待っていると、やっと戻って来た▲▲の顔は先ほどまでよりかなり赤らんでいる。
「またやん▲▲、もうあかん!お前はもう飲んだらあかん」
「これからじゃらいれすか!」
▲▲が握りしめる麦酒を取り上げると、直ぐに奪い返される。
「あ!あかん言うてるやろ」
「これはぁ、▲▲の麦酒れす」
「せやけどまた」
文句を言う間もなく重なり合った▲▲と俺の唇。そう、いつもこうなるのだ。それが分かっていて飲みに誘う俺も俺だし、来る▲▲も▲▲である。まあ俺は内心これを求めている節はあるが。
「文句ばぁっかり言う隊長はこーれす」
「これがあかんー言うてんねん」
俺が何かを言い返すたびに重なり始める唇は、次第に▲▲の熱を帯びて舌が絡む。
「あ、っかん、ほんまにあかん」
毎度、正直ラッキーという気持ちと、つい望んでしまうその先を求める己の体との狭間で苦悩する。なんと幸せな悩み。
「ふ、たいちょ」
「あかんでほんま」
肩を抑えて体を引き剥がすと、満足そうに笑っている。
「あのな、▲▲。俺やからええけど、ほんま他の男にこんなんしたらあかんで」
「隊長らけれす!…っあ!おかわりくらさーい」
一部始終を見ていた店員も苦笑いではい、と注文を賜っている。そら断りたいわな、こんなキス魔。
と目を離している隙に▲▲は机に突っ伏していた。
「これは…」
すやすやと心地よさそうに寝てしまった▲▲はいつもこうだ。
「すんませーん、さっきのキャンセルできますか?」
さっさと片付けて隊舎まで送り届けるのもいつもの事である。いつもこうして確変に入った途端に潰れるのもあり、あと一歩がいつまでも踏み出せない。




「おー、吉良やないか」
「平子隊長、お疲れさまです」
「おつかれさん。…お出かけですか?」
「はい。▲▲と飲みです…気は乗りませんが」
その一瞬でコイツもあれをされているのかと思うと、やっぱりそうだよなという落胆と、俺だけだったらいいのにという独占欲がふつふつとわく。
「2人?」
「檜佐木さんも一緒です。この前▲▲に借りを作ってしまって…不覚です」
一瞬で3人が共にしている姿を想像して自爆した。
「俺も行こかな」
「やめた方がいいですよ!アイツ隊長とか関係なく潰しますから!」
「潰すてお前」
「笑い事じゃないですよ!本当に…自分が飲めるからって……。吐いても…吐いても…次々に…」
「あ?あいつそんな強ないやろ」
「誰かと間違えてるんじゃないですか?▲▲が酒に酔った姿なんて見た事ありませんよ」
え?と困惑する俺に吉良が困惑している。
「俺と飲む時酔うてるで?」
「はぁ!?……あー…そういえば平子隊長のことかっこいいとかなんとか言ってたんで…」
かましてるかもしれませんね、と気まずそうに言った吉良は、それではお疲れさまです!と走って逃げていった。
「……かましてる…?」