▲いちご

「おかえり〜」
「ただいま▲▲。ええ子にしとったかー?」
家へ帰るや否や駆け寄ってきた▲▲の頭をクシャクシャと撫でてやれば、子供じゃないもんだとかなんだとな言いながら嬉しそうに目を細めている。
「ええ子で待ってた▲▲ちゃんにお土産あります」
「うおおおお!」
嬉しそうに目をキラキラさせて胸の前でグーを握る▲▲は本当に子供のようである。
「はい」
「わ!いちご!」
「貰ろてん」
「わたし、いちご、すき」
「知っとるわ」
ワッショイワッショイ言いながら神輿のように苺を掲げて踊っている。一体どの口で子供じゃないもんとか言うとったんや、お前は。
「そんなんしてたら落とすでー」
「は〜い」
ちゃんと言うことを聞いて、大事そうに両手で抱えてキッチンへ向かう。俺はシャワーを浴びようと浴室へ向かうと、パタパタと▲▲が走ってきたので何かと思って待っていると、壁と扉の境から▲▲がひょっこりと顔を出す。
「苺洗いますから早くあがってきてくださいね」
「あーハイハイ」
「早く!」
ご機嫌な足取りで戻っていく▲▲に向かってもう一度だけハイハイと返してシャワーを浴びる。
しかし、考えものである。ここまで喜んでくれるのは大変嬉しいが、俺が帰ってきたことに対する喜びがまるで伝わってこない。今回家をあけたのは1日とはいえ、もう少し「寂しかった…」的なのを期待していた。(いつもはもっと甘えてくる)苺に主役の座を奪われているのだ。一大事である。

浴室から居間へ戻ると、綺麗に準備された苺と▲▲がちょこんと座っている。
「あの…、ご飯の前に食べたいです」
「食後とデザートちゃうんけ」
「今が一番美味しいと思うの」
「ほんならそうし」
「わーい」
「俺のんも食べてええで」
「え!」
「俺はデザート食後派やねん」
「…?私が食べたら真子の分なくなるよ?」
すっかり不思議そうに首を傾げている▲▲の頬を右手ですりすりと撫でると、恥ずかしそうに赤く染まっていく。
「ちょっと、…なに?」
「俺は苺ちゃうくてお前がええねん」
つい視線に熱が籠る。あかん。食後まで待てそうもない。