▲禁断の一歩


いつものように”コト”を終えた後身支度をして帰る準備を進めていると、真子は少し困ったような表情を浮かべて私の袖をぎゅ、と掴んだ。
「?」
「今日ももう帰んの」
「長居したってしょうがないでしょ」
付き合ってる訳でもあるまいし、と言いかけたが、それは飲み込んだ。なんとなく、それは言わない方がいいのだろうなという表情をしていたからだ。
「▲▲彼氏いんの」
「いないけど」
「俺も彼女とかおらんし」
「…だからなに?」
「泊まってってもええやん。不都合がある訳でもあらへんし」
1人になりたくない何かがあるのかと、どうしたのか問えば別になんも。とそっぽを向くばかりで、真子の意図がまるでわからない。
「着替えもないし」
「俺の着たらええやん」
「大っきいよ」
「それはそれでかわええやん」
「化粧品だって持ってきてないし」
「せんでもかわええやん」
「見たことない癖に」
「ないけどわかんねん。せやから、泊まっていき?」
なんだか、断りにくい。別に明日何か予定がある訳でもないし、真子の言う通り確かに不都合がある訳でもない。
だけど、私と真子はそんなに馴れ合うべき関係ではないはず。とちらかの気持ちが重くなれば心地の良さはなくなるし、都合も悪くなる。
「でも…」
「……▲▲、ごめんな」
いつの間にかベッドから出てきていたらしい真子は私を抱きしめた。その腕はいつものそれより優しくて暖かい。
「好きになってもうた」
「真子」
「▲▲のこと、好きになってしもた。ほんまごめん。でも、こんな関係じゃもう足りひん」
「…、」
「好きやねん」
懇願するように強くなる真子の腕を、私はーー