※おとうとのあねの続き
家族仲は良いほうだと思う。
そりゃあ特殊な家系だけれど皆そこそこお互いを想い合ってるし大人になっても割りと一緒に出かけたりもする。 両親があの歳でもラブラブだしなぁ、なんてちょっと引いてしまうけど実際そこが大事なのかもと気付いた思春期から今現在まで私の目標は好きな人と結婚する事だ。
その事を最初のお見合い話が出た段階で両親に打ち明けると過保護な彼らは少し涙ぐみながら私を抱き締め自由意志を尊重してくれる事になった。
とはいえ我が家はお家柄のそれもあるので一応は見合いだなんだと社交の場は多々設けられるが、 最終的な決定権は私に委ねられ、別で恋人を作っても良いがちゃんと紹介しなさい。それととにかくまずは、とにかく、節度のあるお付き合いを、と父には強く強く言われた。
もうほんとあんな怖い顔を父から向けられたのは人生の中でもあの時が一番だった気がする。
まぁそんな感じで私の恋愛事情は割と緩やかに解禁したのだが、 ここで問題になったのは両親より弟の存在である。
末の子達は皆可愛い。
歳の差があるのは勿論だけど素直で良い子達だ。
ミルキも思春期頃から照れくさくなったのか言葉が強くなったがそれも素直じゃないだけで何だかんだ仲が良い。
だからこそ一番気になったのは年子のイルミの事だ。
長男として産まれ一族の期待を背負い兄としての役割を求められていた彼が心配だった。 元より感情が読み辛い彼は暗殺者として優秀だが、キルが産まれ誰しもが跡継ぎの序列が変わったのを感じたあの瞬間から私はイルミを甘やかそうと決めた。 歳は離れていなくても彼は私の弟なのだ。だから少しでも姉として重荷を背負う彼が我侭を言える存在になってやろう。
そう思った選択はきっと間違いだった。
「俺はね、姉さんに幸せになって欲しいだけなんだよ」
イルミの家族愛は強い。おそらく誰よりも家族、というよりルディック家という概念に縛られている。
それをそうさせてしまったのは誰なのだろう。私?両親?兄弟?ここまでくれば分からないし、彼にとってそれが幸か不幸かも分からない。
ただキルアに対するそれを黙認してしまった代償なのだろうか。
今更イルミの私への執着をいくら訴えた所でこれはもう我が家の当たり前のようになってしまってるのだ。
ゾルディック家の長女に値する男でないと、そういつの頃からか耳にたこが出来るくらい言われ続けている。許可された自由恋愛でさえそれが大前提になっているのだから最早無理ゲーだ。
それもこれも10代の頃、初めての彼氏でろくでもない糞野郎を引き当てた私が駆け落ち未遂をし家族総出の大騒動になったのがあの事が原因だといわれたら、 まぁ、うん、ぐうの音の出ないのだけれども。
それ以来、気品教養暗殺能力全てを叩き込まれてきた私が馬鹿みたいな恋愛体質な事が判明し、 一度容認している手前自分達でストップをかけるのが気が引けるのか情けない両親は防衛権をまさかのイルミに委託したのが悪夢の始まり。
確かにあの駆け落ち事件の時もイルミは色々とやばかった。 だがそれを良い判断材料にしてしまった両親もやばいよね。
だって彼の私を見る目はどう考えても姉弟に対しての感情じゃない。
「姉さん、大丈夫。もしこの先姉さんに相応しい男が現れなくても俺はずっと側にいるから」
鏡見てみろ。
いつも嬉しそうにしやがって。