▲わるいおとこ

「ナァ、今誰見てた?」
時折、靖友は少し怖い。
いつもは口調は荒いが温かくて優しさを感じるのに、こう言うことを言うときは決まって目が座っていてとても冷たい。
「誰って…」
「アァ?ごまかすの?」
「あの子を見てたの」
小学生ぐらいの女の子がドリンクバーに立っていたのでその子を指差せば、ふーん。と聞いた割に興味なさげな返事を返す。でも、さっきまでの冷たさが嘘みたいに消えていた。
「ね、靖友」
「あ?」
「嫉妬?」
「ッハ、ンな訳ねェだろ」
軽口を叩いてもいつも通りで安心する。
「一応言っとくけどさ、私靖友にしか興味ないよ」
「わァってる。ったりめーダロ」
「うん」
満足げにスマホに視線を落とした靖友は、正直チョロい。
「ねえ笑ってる」
「あ?」
「嬉しかったんだあ」
「っるせー」
「かわいー」
「可愛いって言うナ」
眉間に皺は寄るが、さっきまでのような怖さはまるでない。
友達は、決まって早く別れた方がいいと言う。私だって、靖友がちょっと危ない男だなんてことはとうにわかっている。だけどそのスリルがたまらないのだ。
「私、いつか靖友に食べられちゃいそう」
「ナニ言ってんノォ?下ネタ?」
スマホを閉じた靖友は、頬杖をつきながら余ったポテトをつまんでいる。
「下ネタではなかったけど…嫉妬した後の靖友って、ハゲシイよね」
「…誘ってる?」
「少しね」
まだ全部食べ終わってないのに靖友はいそいそと会計伝票を握りしめた。