▲荒北

クリスマスも終わり、寒さに一段と拍車がかかる12月31日。両親は海外旅行へ行くらしく、私は実家に帰らずおとなしく家で過ごすことになったのだが、何故かそこには同僚の荒北の存在もある。
「ねえ、帰らなくて良かったの」
「大丈夫」
私の家なのにまるで自分の家のように寛ぐ荒北は、自分の家のように冷蔵庫を開けまるで自分のモノのようにお茶を飲み出した。
「ちょっと!ペットボトル直飲みしないでよ」
「めんどくせェ」
「私のなんだけど」
「お前が1人で寂しいっつーから付き合ってやってンだろーが」
「別に頼んでないし」
何故同僚と年を越すことになったのか。
テレビでは歌番組も終盤に差し掛かり、そろそろ除夜の鐘が鳴りたそうにうずうずし始めている頃だ。
「ナァ、なまえ」
「っ、なに、いきなり」
荒北に名前を呼ばれたのは初めてだった。同僚にしては仲が良過ぎると周囲から疑いの目を向けられているが、私たちは付き合っている訳ではない。※無論、体の関係もない。
疑われているから尚更苗字で呼んでいたのだが、頬を少し赤く染めた荒北はもう一度、私の名前を呼んだ。
「今年もアリガトナ」
「あ、うん…こちらこそ」
いつの間にか私のそばへ来ていた荒北の腕に包まれる。何これ聞いてない。
「あら…きた…?」
「こういう年の越し方もアリだろ?」
ゆっくりと唇に触れたのは、荒北のそれだ。ニヤリと満足げに口角を上げているこいつは、こんなナリして実は女遊びも嗜んでいるのかもしれない。
「荒北、」
「ナニ顔赤くしてんだお前」
「いや、…そういうつもりじゃなかったから」
「ヤなの?」
「いやじゃ、ないけど」
「フーン」
荒北の温かい唇は首を這い、鎖骨を伝う。
「ヤじゃないなら良い」
ひょいと私を持ち上げた荒北はまるで自分の家のように寝室へ向かうと私をベッドへ投げる。
「靖友、」
「…良いな、お前に呼ばれるノ」
「なにそれ」
荒北の体温に溺れる年越しも、悪くない。