今年も夏が訪れ、夏合宿についての知らせが配られた。私は部員ではないが、マネージャーとして合宿に同行させてもらえることとなった。
「なまえ、見たか?沖縄やて!最高やん!」
「白石先輩。残念ですけど、沖縄美女をハントするヒマはないと思いますよ」
「アホか。俺には沖縄美女よりなまえやで」
ウインクをキメて人差し指で私のことを指差すこの人は、矢張り冗談がきつい。ドキドキと早くなった鼓動を鎮めて、「キモいっすわ」と返したのは、周囲の女子の視線が痛く刺さったからだ。
「まあええわ。可愛い水着持っていこな」
「泳ぎませんよ。カナヅチですから」
「あらまあなまえカナヅチやったん!かわいらしいなぁ」
「可愛らしくはないです。運動音痴なだけです」
「ほな海は泳がれへんけど、水着でベッドで泳ごな。約束やで?」
「頼むからほんまにやめてくださいそのキッツイ冗談」
「え〜?ええやんか」
女子たち、聞いてくれ。きつい冗談なんだ。今認めただろ?だからほら…その鋭い眼差しで私を見るのをやめてくれたまえよ。
「まあそう怒らんといてえな」
「怒ってません。困惑してるだけです、先輩からのセクハラに」
「沖縄美女ハントでけへんとかいうイジワル言うからちょっとイジワル仕返したっただけやんか」
「やっぱり狙ってたんですね」
「せっかくの沖縄やからなぁ」
あたりをぐるりと見回した白石先輩は、どうやら私の置かれている状況を理解したらしい。よかった、わかってくれて。
「ほなお寝坊さんしたらあかんで?」
「しませんよ」
「……約束、覚えといてな」
私の頭に大きな手を乗せたかと思うと、一瞬だけ私の耳元に顔が近付いて、一言囁いて去っていった。
いや、約束してませんって…。