6-4


デュランダルは様々な経験をしてきたのだろう。一緒に風呂に入ったり、洗ったり、他にもジュディスが予想出来ないことだって終えてきたから、簡単に出来るのだ。
だがジュディスはそうではない。悩ましく美しい美女であるし、生来の気質もあって、あまり物事に動揺したりしないし、男のあしらいが得意ではあった。性行為だって彼が初めてではない。けれどすべてがあけすけで何の恥じらいもないかと言えばそうではない。羞恥心を楽しむことはできるが、それはあくまでも一般の、普通の男相手だからできることなのだ。デュランダルのような海千山千の男が相手となれば、そうもいかない。背伸びをして、追いかけるだけでやっとなのだ。

「・・・今の私は、おじさまが遊ぶには物足りないでしょうけど・・・、・・・いくら私でも急に追いつけないわ・・・。」

思いきりの悪い、もったいぶった女と思われていたらどうしようと思うが、難しいことは難しいのだ。素直に言うと、デュランダルは優しく笑って、「いいよ。」と言った。

「背を向けているから、洗っておいで。・・・湯船では膝に乗ってほしいけど。」
「・・・呆れないの?」
「ふふ、呆れるどころか可愛いよ。俺はね、ただ言うことを聞くだけの女に興味なんてない。」

両手で顔を包み、ちゅ、と唇を合わせる。

「・・・お前は本当に可愛い。」

大きな手が頭を撫で、デュランダルは言葉通り背を向けると身体を洗い出す。
熱い胸に目を伏せ、ジュディスも身体を洗い出した。彼の好みはやはり普通とは違う。どうやら彼は、ダメ、嫌、やめてをはっきりと伝える女のほうが良いらしい。間違えていなくて良かった、と思うが、彼の可愛いがじわじわと効いてきて、息が詰まる。
普通なら男はあまりダメ、嫌、やめての三拍子を嫌う。いい顔をしないし、ならもういいとそっぽを向かれかねない。だが普通とは縁遠い生き方をしてきたデュランダルはそうではない。おそらく彼には、ダメなことをダメと言ってくれる人がいなかったのだ。アレクセイやレイヴンも、数少ない彼にダメだと言える人間だから、側に置くのだろう。
洗い終わって湯船を向くと、とうに洗い終わっていたデュランダルがにこにこと見つめている。ずっと見ていたのかしら・・・と気恥ずかしさを誤魔化すように視線を外すと、脚を湯につけた。

「・・・見ているなんて酷いわ。」
「見ていたいと思わせるお前がいけない。」
「・・・ぁ・・・、・・・っ」

背を向けて膝に座らされ、長い指が胸に触れる。「地下のことだったね。」と先端を弄りながら言われ、この人は本気で話している間弄っているつもりなんだわと理解するが、それを拒むことは出来なかった。

「地下ギルドは少なくとも俺が帝都に来た時からある。いつからあるのかは、はっきりしないが先々代の皇帝の治世からあるようで、俺が地下のことを知ったのは、当時そこをまとめていた人間と知り合ったからだ。」
「その、時の・・・、・・・ぁ・・・首領・・・ということ・・・?」
「ああ。地下はね、麻薬やら何やら、後ろ暗いものに満ちている。貴族の出入りもあって、帝国の金を回している主な場所はあそこだ。先代の首領は高齢で、代替わりを望んでいてね。当時の俺にそれを望んだ。」

撫でていた指が、こねるように変わる。よく普通の顔で話せるものだと思いながら息を詰めた。

「当時はあまり心惹かれなかったが、地下ギルドの影響力は絶大だ。アレクにはまだ力が足りず、評議会と真っ向から戦う地力がなかった。研究も思うように進まず、いつ追い落とされてもおかしくなくてね。・・・アレクが失脚することは、俺やイルミナだけでなく、俺がいた隊にも影響が及ぶ。そんな背景があったから、俺は代替わりを受け入れた。」
「・・・ん・・・、・・・隊・・・には、レイヴンも・・・?」
「いたよ。だがアレクと縁が近かった俺が地下を手に入れることを当然評議会は恐れた。結果、俺は帝都を離れることになったわけだ。」
「もしかして、おじさまが帝都を離れた本当の理由って・・・、・・・んっ」

振り返ると、それまでほとんど力を込めていなかった指が強めに先端を摘まんでくる。ビクリと肩を揺らすと、こめかみに唇が触れた。

「・・・俺は帝国を許さない。」
「・・・お、おじさま・・・。」
「・・・俺からイルミナとルーチェとの日々を奪ったあいつらを・・・帝国を、俺は絶対に許さない。当時の連中は全員殺す。」
「ぁ・・・、あ、ん・・・っ」
「だから帝都に戻ってすぐに、地下に行って正式に俺のものにした。そしてアレクを牢から出せと、あの王子様に言ったんだよ。」

背景を知り、やっと納得がいく。あれだけの事をしでかして、一年も経たずに恩赦など裏取引があったのは明らかだ。いくら凛々の明星が世界を救った功績があっても、それを表沙汰にしない以上使える切り札ではない。

「帰ったらお前にも地下を見せようね。イヴァンにはもう見せたし。」
「・・・おじさま・・・、いや・・・弱く、しないで・・・。」
「ふふ、まだダメだよ。・・・ベッドに行ってからが本番なんだから。」
「・・・なら、こっちも、して・・・お願い・・・。」
「そうしたら、お前は話を聞くどころじゃないだろう?それとも、話はもういいのかな?」

触れるか触れないかの力で先端を行き来する指に堪らなくなってくる。話は聞きたいし、気になるが、蓄積された快楽の解放に本能が暴れ出していた。
我慢出来なくなり、指を自ら下肢に伸ばす。だが「駄目だよ。」と掴まれてしまった。

「・・・や・・・、もう、私・・・っ」
「・・・仕方のない子だね。ならそこに座りなさい。」

壁に隣接する縁を指され、ジュディスはゆっくりと言われた通りに座る。脚を開かれ、明るい場所で露にされたことに顔を真っ赤にすると、指でさらに開かれ、熱く濡れた場所に舌が這った。

「・・・っ、ん・・・!」

上下に動く舌だけでなく、指が陰核の皮を剥いて、敏感な部分を外気に晒す。親指の腹でそこまでも刺激されて、ビクビクと身体を震わせた。
待ち望んでいた刺激で身体は一気に昇り詰め、すぐに達してしまう。だがデュランダルは達しているにもかかわらず、指を止めず、舌を尖らせ、男根を求めて疼く穴へと挿し入れた。

「っ、ひ・・・ぁ・・・っ、あ・・・いや、いや・・・おじさま、やめ・・・っあ・・・!」

震える指でデュランダルの頭を押さえるが、柔肉に吸い付かれ、脚がガクガクと震える。
気が狂ってしまいそうな快楽は渦潮のようにすべてを飲み込んで、深く深く達したジュディスは潮を吹いてぐったりと壁に背を預けた。

「・・・ぁ・・・、ごめ、んなさ・・・おじさま・・・。私・・・、」

吹いた潮を顔に受けたデュランダルに謝ると、彼はぱしゃりとそれを湯で洗い流して、「謝ることなんてないよ。」と頬に口付けた。

「可愛いお前が潮を吹くくらい感じてくれたなら、嬉しいからね。」
「・・・おじさま・・・。」
「何も恥じらう必要はない。もっと楽しんで、素直に目一杯感じていればいい。俺はそれが嬉しいし、もっとお前を可愛がりたいと思うよ。」
「・・・じゃあ、もうちょうだい・・・?おじさまの、ずっと、欲しくて・・・。」
「じゃあ、上がろうか。」
「・・・ここがいいの。お願い・・・。」
「うーん・・・、ちょっとこのまま待っていなさい。」

デュランダルは脱衣場に出ると、暫くして戻ってくる。身体と髪を拭いたらしく、「おいで。」とバスタオルを手にジュディスを招いた。脱衣場でしっかりと拭かれると、壁に押し付けられ、口の中を荒らされる。必死にそれに応えていると、片足を抱えられ、待ち望んでいた熱の先端が押し当てられた。舌で多少慣らしたからか、やや時間はかかったが半分ほど入ってくる。首に腕を回してしがみつくと、デュランダルは「よいしょ、」ともう片方の脚に手を回し、軽々と抱き上げた。

「・・・っ!?」
「・・・じゃあ、生理も終わったことだし・・・、・・・全部入れようか。」
「っ、あ、あぁあ・・・っ!」
ぐん、と突き上げられ、尻と腰がぴったりとくっつく。今までに感じたことがないほど奥の奥まで入ってきたそれに、目の前がチカチカと瞬く。

「あ・・・、ぁ・・・、や、お、く・・・あた、って・・・あぅ、っ」
「さて、移動しようか。」
「・・・っ!?だめ、きゃあ・・・!」

初めての感覚に身体中をぶるぶる震わせているジュディスを抱えたまま歩き出す。振動で最奥が緩く突かれ、必死でしがみついた。立ち止まり、ベッドに下ろされるまでの間に身体中の力が抜け、ぐったりと横たわる。デュランダルは身体の脇に投げ出された手のひらに重ねるように手をつくと、ぐん、と腰を揺らした。

「っ、あ、あ・・・っ、ん、っう・・・!」
「ちょっとイキすぎだな・・・、キツい・・・。」



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