09
『………?』
一瞬で風景が切り替わり、黒い靄から放り出された先で、慌てて周囲を見渡した。
見えるのは崩れたビルの数々。
怪獣が暴れた後の様な光景を見て、此処が倒壊エリアである事を察した。
「あ?女のガキが一人だ」
その声に反応すれば、ぞろぞろと人影が此方に近付いてくる。
一様に下卑た笑みを浮かべているのが見えて、意識せずとも眉間に皺が寄ったのが判った
「可哀想に、一人かぁ?」
「女なら何でも良い!」
「胸も尻もねぇけど良いだろ!見ろよ、顔は上物だ!」
悪かったな胸も尻もなくて。コイツらに顔を褒められても全然嬉しくない。
地味に腹が立つが、しっかりと地を踏み締めた。
向かってきた数は二十程度。
数は多いが、恐らく此方を舐めているんだろう。ニタニタ笑うばかりで、構える事すらしない
「痛いのヤだろ?大人しくコッチ来いよ」
「そしたら可愛がってやるからよ」
────ビビってんなよ。
脳裏で低い声がする。
判ってる。大丈夫。
今までだってずっと特訓してきた。大丈夫。信じろ。
私の個性は雪女。
凍り付かせて、吹雪を起こす。
ふっと短く息を吐く。
そして────地面から、旋風の様な吹雪を巻き起こした
『くたばれぇ!!!!』
「ぎゃああああああ!!!!」
「んだコレ!?竜巻!?」
急な事態に対応しかねたのか、敵が一斉に吹き飛んでいく。
全員一応飛びはしたが、皆が皆ビルに叩き付けられてくれる筈もない。
「クソガキャア!!」
「叩き潰せ!!」
『大丈夫。信じろ』
勝己と何度も組手をやってきた。
それを、思い出す。
両の拳を固め、メリケンサックを作り上げた。
脚にも氷で鎧を作る
────馬鹿正直に向かってくるヤツは
『らぁ!!』
────脇に避けて、顔面ブン殴れ
崩れ落ちた男の後ろからやって来る敵には吹雪を叩き付けた。
後方も巻き込んで倒れ込む敵が起きない様に、氷で拘束する。
大丈夫。
私、動けてる。
向かってきた敵の横っ面を蹴り飛ばし、飛び掛かってきた奴を吹雪で吹っ飛ばす。
巨大な鋏を持った敵の腕を氷漬けにした所で、立っているのは私だけになっていた。
『…終わっ、た…?』
浅い呼吸を繰り返す。
取り零しがないか、辺りを見渡していた私の背後で────ざざっと砂を踏む音がした
『死ねっ!!』
────背後取られたら速攻で殺せ。
その言葉に忠実に従い、振り向き様に回し蹴りを放った。
────その蹴りを予想していた様に受け止められ、背後の人物を目にした所で、私の口から間抜けな音が漏れた
『あ』
「落ち着け馬鹿、俺だ。
…まぁ教えた通りに背後に立ったヤツを殺そうとしたのは良いけどよ」
勝己を見た瞬間、全身から一気に力が抜けた。
崩れ落ちる前にひょいと腕で支えられ、深く深く息を吐く。
『勝己だ…助かった……』
「…一人でやったんか」
『勝己の教えてくれた護身術思い出して頑張った』
「おー、お前にしちゃ上出来だ」
にっと笑った勝己に笑い返す。
ダメだ、勝己の安心感が半端ない。
思わず緩みそうになった涙腺を引き締め直す為、頭を振った。
だって、怖かったのだ。
敵は沢山居て、独りぼっちで、心細かったのだ。
それを察しているのか、ぽんぽんと頭をグローブのない左手で撫でられた。
その手が頬に滑って、勝己が眉を寄せる
「…冷えてんな」
『二十人ぐらいだったから、初手で大技使ってぶっ飛ばした』
「抱えるか」
『ううん、もう大丈夫。ありがとう』
「ン」
もう脚も震えていない。大丈夫だ。
しっかりと立って見せれば、そこで右手が離れた。
左手はチョーカーの暖風を確かめる様に突っ込まれたので放置する。
これからの動きを勝己に問おうとした所で、前方から赤い髪が走ってくるのが見えた
「おーい爆豪!!置いてくなよ!…あ、白露!!だからか、急いで行っちまったの!!」
『あ、切島くん』
「白露、無事で良かったぜ!…お前この数一人で相手にしたのか!?凄ェ!!」
『いや、勝己に護身術教わってたからね』
「それでも凄ェって!」
にこやかに人を褒める彼はとても優しい。
切島くんは流れた汗を拭って、口を開いた
「っし!白露とも合流出来た事だし、早く皆を助けに行こうぜ!
俺らが此処に居る事からして、皆USJ内に居るだろうし!
攻撃手段少ねぇ奴等が心配だ!」
『助けに行くって…全エリア回るの?』
「そのつもりだ。
俺らが先走った所為で、13号先生が後手に回った。先生があの靄吸っちまえばこんな事にはならなかったんだ。
男として責任取らなきゃ…」
確かに切島くんの意見には一理ある。
でも、皆が何処に飛ばされたか判らない以上、全エリアを回るのはあまりに非効率じゃないだろうか。
葉隠さんや峰田くんみたいに、攻撃的じゃない個性の人が孤立していたなら優先して加勢した方が良いだろうけど、ぶっちゃけ轟くんなんかは放置しても勝手に生還しそうだし…というかそんなに強くないだろう私でも制圧出来た訳だし…
悩んでいれば、隣の男がきっぱり言い放った
「行きてぇなら一人で行け。
俺はあのワープゲートぶっ殺す!!」
「はぁ!?」
『あ、それだ』
最優先アイツだわ。
目を輝かせているであろう私に、勝己が頷いた。
一方切島くんは未だ納得いかないらしい。
切り捨てた勝己に言い募っている
「この期に及んでそんなガキみてぇな…それにアイツに攻撃は…」
「うっせ!
敵の出入口だぞ。いざって時逃げ出せねぇ様、元を締めとくんだよ!
靄の対策もねぇ訳じゃねぇ…!」
そう返して、勝己が急に私の背後に移動した。
次の瞬間────聞き慣れた爆破音と、次いで誰かが倒れた様な音が聞こえてくる。
『え?』
「つーか」
振り向いた先、勝己が敵を取り押さえているのが目に入った。
「
「凄ぇ反応速度…つーかそんな冷静な感じだっけ?おめぇ…」
「俺は何時でも冷静だクソ髪野郎!!!」
「ああ、そっちだ」
中指を立ててがなるのを見てほっとするのもどうなんだ、切島くん。
念の為かもう一度爆破してから立ち上がった勝己は、そのまま私を上から下まで見た。
『勝己が庇ってくれたから平気。ありがとう』
「ン」
短く返事して、勝己が右手の籠手を嵌め直した
「じゃあな、行っちまえ」
「待て待て、ダチを信じる…!男らしいぜ爆豪!ノったよおめェに!!」
ガイン、と硬化した両の拳を打ち付ける切島くんを見て、勝己が鼻で笑った。
どうやらこのままパーティーで移動する様だ。
決まったところで勝己を見上げる
『あのワープゲート、居るとしたらセントラル広場かな』
「だろうな。中央なら各エリアに分散させた仲間も集合させやすい。
犯人は犯行現場に戻るっつーだろ」
『ああ…Gと一緒か』
「お前は見付けたら凍らせんのやめろや」
『だってスプレーなんかより簡単に捕まえられるし…ティッシュはほら、掴まなきゃだし…』
「叩けや」
『中身出たら嫌じゃん』
「フルスイングすんな。加減覚えろ」
「いやゴキブリの話で盛り上がんなよ!」
切島くんにツッコミを入れられたのと同時、セントラル広場を目指していた私の腕が掴まれた。
あれ、と思う前に反対方向に引っ張られる。
ちらりと紅い瞳が呆れた様に此方を見下ろして、呟く
「お前、ゴーグルにマップと音声ガイド付けて貰え」
「ん?白露、方向音痴なのか?」
「重度のな」
長年私を牽引してきた勝己に言われると何も言えなくなる。
にこっと笑って誤魔化す私にデコピンして、勝己は腕を引いた。
因みにあのまま私が進んでいたら、セントラル広場ではなく火災ゾーンに着いていたらしい。真逆だった。
セントラル広場が目前となった時、金髪の大柄な影と黒い巨体と靄、それから飛び出した小柄な影が見えた。
それを目にした瞬間、勝己が飛び出す。
遅れて切島くんも勝己に続いた。
小柄な影────出久が駆け寄る前に、勝己が靄に籠手を叩き込んだ
「どっけ邪魔だ!!!デク!!!」
靄の首らしき装飾の付いた部分を掴み、勝己が押し倒す。
オールマイトが膠着状態に陥っていたと思しき黒い巨体の身体が凍り始め、私の隣に白い影が並ぶ。
「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」
最後、背後から掌を付けた敵を切島くんが攻撃したが、躱される。
「くっそ!!良いトコねー!!」
「スカしてんじゃねぇぞ!モヤモブが!!」
「平和の象徴はてめぇら如きに殺れねぇよ」
『出久、大丈夫?』
「かっちゃん…!皆…!!」
泣きそうな顔をしている出久に駆け寄る。
見たところ怪我は…してるな。左手をぐるぐる巻きにしてる。
小さな氷を作り、ハンカチで包んで出久に渡した
『出久、気休めだけどこれで冷やして』
「ありがとう刹那ちゃん」
オールマイトが身体を凍らせた敵から脱出する。
それを静観していた掌の敵は、勝己が押さえる靄の敵を見て呟いた
「出入口を押さえられた…こりゃあ…ピンチだなぁ…」
「このウッカリヤローめ!やっぱ思った通りだ!
靄状のワープゲートになれる箇所は限られてる!
そのモヤゲートで実体部分を覆ってたんだろ!?そうだろ!?
全身靄の物理無効人生なら、“危ない”って発想は出ねぇもんなぁ!!」
勝己の言葉で納得した。
あの時気になった靄の言葉は、やはり咄嗟に出てしまった本音らしい。
二人に攻撃された時は、攻撃が来るのが見えていたから、勝己の言う様に実体部分を靄で覆って無効化したんだろう。
けれど今のは奇襲だった。
故に無効化出来ず、奴は地に伏せている。
靄が悔しそうに唸り身動ぎすると、素早く勝己が威嚇した
「っと、動くな!!
“怪しい動きをした”と俺が判断したら直ぐ爆破する!!」
「ヒーローらしからぬ言動…」
「るっせ!…刹那!!」
視線を靄の敵に固定したまま呼ばれ、勝己の傍に寄る。
恐らく私にさせたい事はこれだろうと判断し、勝己が押さえ付ける敵の装飾に指先を置いた。
勝己の掌を避け、地面に接着する様に凍らせた所で、紅い目を見る
『これで良い?』
「念には念をだ。身体もやっとけ」
『ん』
「ぐぅ…」
実体化した部分を遠慮なく凍らせていると、掌の敵が両の指を緩く組みながら呟いた
「攻略された上に全員ほぼ無傷…凄いなぁ最近の子供は…恥ずかしくなってくるぜ、敵連合…!」
そして奴は、凍り付いて動かなくなっていた巨体の敵に指示を出す
「脳無、爆弾小僧と氷結小娘をやっつけろ。出入口の奪還だ」
奴は身体の半身を氷漬けにされているのだ、あんな状態で動ける筈がない。
そう高を括って見つめていた私は、目を見開いた。
────動いたのだ。
ワープゲートを抜けていた上半身を戻して。
力を入れた所為で砕けた右腕と右足など、歯牙にも掛けず立ち上がった。
「身体が割れてるのに…動いてる…!?」
「皆下がれ!なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろう。
これは“超再生”だな」
有り得ない。
人が個性として引き継ぐのは基本一つだ。レアケースで二つはあれど、そもそもあの外見が異形型として入るんじゃないのか。
そうなると、あの異形とオールマイトの言ったショック吸収、それから超再生の三つになってしまう。
「脳無はお前の100%に耐えられる様改造された、高性能サンドバッグ人間さ」
改造、という言葉で想像するのは、本来普通だった人間が文字通り改造されるという事だ。
でもそれこそそんなの、有り得ない。
混乱する間に脳無と呼ばれた敵は手足を修復し────一瞬で、目の前が真っ暗になった
「かっちゃん!刹那ちゃん!?
よっ、避けたの!?凄い…!!」
「違ぇよ黙れカス」
『………?』
気付いたら、見慣れたオレンジと黒が視界を埋め尽くしていた。
何が起きたのか、全然判らない。
顔を上げれば呆然とした勝己が見えて、その隣には出久が居る。
私達がさっきまで居た場所から地面が抉れ、その先にオールマイトが居た。
攻撃を受けたのか、ゴホゴホと噎せている
「加減を知らんのか…」
『……庇われた…?』
「刹那、動けっか」
『あ、ごめん』
勝己に身を投げ出していた状況だった事を思い出し、上から降りた。
脳無の隣に立った掌の敵は、靄の敵を指の隙間から見下ろして言う
「仲間を救ける為さ、仕方無いだろ?
さっきだってホラ、そこの…あー、地味なやつ。
あいつが俺に思いっきり殴り掛かろうとしたぜ?
他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ、ヒーロー?」
上半身の至るところに手を取り付けた敵は、腕を大きく広げて宣った
「俺はな、オールマイト!怒ってるんだ!
同じ暴力が、ヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まる、この世の中に!
────何が平和の象徴!!
所詮、抑圧の為の暴力装置だお前は!!
暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺して世に知らしめるのさ!!」
高らかに並べられた言葉。
一見正当性のある主張を、しかしオールマイトは冷静に切って捨てた
「めちゃくちゃだな。
そういう思想犯の目は、静かに燃ゆるもの。
────自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」
「……バレるの早」
指の隙間から、赤い目がにたあっと嗤った。
静かに立ち上がった所で、相手を見据えた轟くん、出久、切島くんが順に口を開く
「三対六だ」
「靄の弱点はかっちゃんが暴いた…!」
「とんでもねぇ奴等だが…俺らでオールマイトのサポートすりゃ…撃退出来る…!」
「ダメだ!!!逃げなさい」
しかし即座にオールマイトは撤退を促した。
それに対し、轟くんと出久が言い募る
「さっきのは俺がサポート入らなきゃヤバかったでしょう」
「オールマイト血…それに時間だってない筈じゃ……あ…」
『?』
出久が途中で口を覆ったものの、時間、とはどういう事だろう。
隣の勝己は何かを思案する様に、オールマイトと敵を見据えている。
オールマイトは此方を振り向く事はなく、力強い拳だけを握ってみせた
「それはそれだ轟少年!ありがとな!!
────しかし大丈夫!
プロの本気を見ていなさい!!」
…そうは言うものの、オールマイトの脇腹からは血が滲んでいる。
せめて凍らせるか、勝己の爆破で弱く傷を焼くかして止血した方が良いんじゃないかな。
心配する此方の都合を敵が考える訳もなく、掌の敵は靄の敵を拘束する氷を砕くと、仲間に指示を出した
「脳無、黒霧、やれ。俺は子供をあしらう」
「おい来てる!やるっきゃねぇって!!」
そう呟いて、敵が此方に向かってきた。
考える暇はない。けれど、オールマイトの指示に従うべきなのは確か。
せめて、相手の動きを妨害して逃げるべき。
相手の目の前に、氷の壁を作ろうとして────
「!!」
敵が、飛び退いた。
刹那、脳無とオールマイトの拳がぶつかり合う。
びりびりと、肌を叩く強烈なナニか。
…オールマイトの、気迫だ。
あまりの圧で動けなくなった私達から目を離すと、掌の敵は怪訝そうに言った
「ショック吸収って…さっき自分で言ってたじゃんか」
「そうだな!」
オールマイトは笑う。
理解出来ないと言わんばかりの敵の前で。
そして────背後に立つ私達まで風圧が届く程の乱打戦が巻き起こった
「真正面から殴り合い!?」
「“無効”ではなく“吸収”ならば!限度があるんじゃないか!?
私対策!?私の100%を耐えるなら!!!更に上から捩じ伏せよう!!!」
目で追えない程に速い拳が残像を残す。
相手の拳も受けながら、それでも、オールマイトは笑う。
「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊していくもの!!
敵よ、こんな言葉を知ってるか!?」
弾き飛ばされた脳無の両腕が開く。
ぐっと引いた拳が、ガラ空きの胴体に叩き込まれた
「────
あの後、雄英から先生達も駆け付けた事で敵は撤退した。
生徒は無事保護、学校まで送ってもらった所で、刑事が此方に目を向けた。
「両足重傷の彼を除いて、ほぼ全員無事か」
皆が自分の居た場所を話している中で、そっと目を伏せた。
────オールマイトから、離れろ!!
あの時たった一人で飛び出した出久。
無理な飛び出しの所為で両足をやってしまった様だが、彼は一体何を考えてあの場に向かったのか。
オールマイトは強い。だってナンバーワンヒーローだ。
あの時だって、脳無を殴って退けてしまった。
なのになんで、オールマイトを庇う様な真似を…
「刑事さん、相澤先生は…」
梅雨ちゃんのその言葉で意識を引き戻された。そうだ、先生はあの数を一人で相手取っていた。
おまけに耳に挟んだ話、オールマイトが来るまであの脳無と対峙していたという。
刑事さんがスマホで確認を取り、スピーカーにしてくれた
《両腕粉砕骨折、顔面骨折…幸い脳系の損傷は見受けられません。
ただ…眼窩底骨が粉々になってまして…眼に何らかの後遺症が残る可能性もあります》
「だそうだ…」
「ケロ…」
「13号の方は背中から上腕に掛けて裂傷が酷いが、命に別状なし。
オールマイトも同じく命に別状なし。
彼に関しては、リカバリーガールの治癒で十分処置可能との事で保健室へ」
「デクくん…」
「緑谷くんは!?」
「緑…彼も保健室で間に合うそうだ。私も保健室の方に用がある。三茶、後頼んだぞ!」
「了解」
刑事に声を掛けられ返事をしたのは、猫の個性の人だった。
お茶子ちゃんが「犬じゃないんだ…」と呟いたがめちゃくちゃ判る。犬じゃないんだ…
「セキュリティの大幅強化が必要だね」
「ワープなんて個性、只でさえ希少なのに、よりにもよって敵側に居るなんてね…」
校長先生とミッドナイトの言葉で、靄の敵を思い浮かべた。
あれも脳無みたいに複数個性持ちなんだろうか。
何だか靄とワープは別物みたいに思えるけど…
「…寒ィんか」
隣から声を掛けられて、はっと顔を上げた。静かな紅い目が此方を見下ろしていた。
同じ赤でも、あの指の隙間から覗いた赤とは全然違う事に気付いて、安堵する。
『…何でもないよ。ワープって希少なんだなって思っただけ』
「…そォかよ」
素っ気なく返事しておきながら、すっと頬に手を当ててチェックするのがこの心配性である。
タートルネックから覗く首と肩にも触れて納得出来たんだろう、漸く手を離した。
「オイ前から思ってたけどよ…爆豪のヤツ白露にベタベタしすぎじゃねぇか…?心配してれば触って良いのか…?じゃあオイラも…」
「止めろ死ぬぞ!!」
背後で峰田くんと上鳴くんがそんな会話をしているのを耳にしつつ、苦笑いするしかなかった。
薄氷は渡り終えたか
刹那→戦えた。
一通り爆豪から護身術(喧嘩殺法)は習っている。ただし相手の勢いを借りないと力は弱い。
キレたり自分を奮い立たせたい時は、やっぱり幼馴染の口調に寄る。
何度か歩かないと道は頭に入らない。
地図を見たのに何故か真逆を行くタイプ。
爆豪→めちゃくちゃ強い。
早々にビルを制圧したら吹雪が吹き上がったのが見えた為爆速で向かった。
方向音痴のサポートアイテムを頼まなかった事を悔やんでいる。
切島→強い。
突然爆豪に置いていかれてびっくりした。
原因を知って「じゃあ仕方ねぇか!」って許しちゃう。良い人。