03
学校後の時間を勉強に当てる事が増えたものの、二日に一回はロードワークか個性練が盛り込まれているのには、流石としか言えない。
「速度落ちてんぞ」
『勝己が速いんだよ』
前を行く黒い背中を追い掛けながら、じんわりと浮かぶ汗を拭った。
普段は早い、なんて感じないのに、いざやる事が決まれば日々はあっという間に過ぎてしまう。
勝己と共にトレーニングを挟みつつ勉強して、今更ながらもっと早く勉強してれば良かった、なんて後悔して。
────二月二十六日。
「自分を信じて頑張るんだよ」
「しっかりね、刹那!」
『うん』
父と母に激励を貰って、家を出る。
扉を開ければ家の塀に凭れた見慣れた影が見えて、ほっと息を吐いた
『おはよう勝己』
「はよ」
「おはよう勝己くん。じゃあ二人とも、行ってらっしゃい!」
「っス」
『行ってきます』
何時もの様に並んで、母さんに見送られる。気だるげな幼馴染も、通学路も変わらない。
でも違うのは、向かう先だ。
『乗り継ぎって不安になる…』
「何でだよ。覚えりゃ問題ねぇだろ」
『一人じゃなくて良かった…入試前から辿り着けるか不安にならなくて済む…』
「これだから方向音痴は…オイ、そっちじゃねぇ。ちゃんと着いてこい」
『あい』
フラフラして見えたのか、駅に入って数秒で手を取られた。完璧に迷子防止。大変ありがたい。
電車に揺られる間、ずるりと下がって来たマフラーをもそもそと巻き直す。
ぐるぐる巻きにした端を首の後ろに放った所で、溜め息を吐いた勝己にマフラーを毟り取られた
「最初からこう巻いとけ」
『ぐるぐる巻きの方が暖かそうじゃない?』
「コッチのが暖けぇんだよ。それにマフラー落ちたらどうせ縁起悪ィって騒ぐだろが」
『ありがとうございます』
「ン」
きっちり巻き直され、鞄を掛け直す。
地下鉄を乗り継いで四十分程度。
辿り着いたガラス張りの高層ビルの前で、思わず感嘆の声が漏れた
『わー…本物だ』
「建物見て満足してんじゃねぇ。行くぞ」
『はーい』
先を行く勝己の背中に続く。
すると急にズカズカと歩き出したものだから、不思議に思いつつ追い掛けて、ああ、と納得した。
勝己の向こうに見えるのは緑色のモジャモジャ頭。出久だ
『おはよう出久』
「退けデク!!」
「かっちゃん!刹那ちゃん!」
「俺の前に立つな殺すぞ」
「おっおはようガンバ張ろうねお互いに」
ビクビクしながら声を掛ける出久を、勝己はスルーした。…意外だな。勝己なら絡むかと思ったんだけど。
『後から来たのに俺の前に立つなはさ…いちゃもんだよね』
「あ…あはは」
『そういえばこうやって話すの久し振りだね。出久、元気そうで良かった』
私は基本的に勝己と居るから、出久と話す機会がないのだ。
それこそ一番最近顔を合わせたのが、例のヘドロ事件の時。
それから何度か学校で出久を見掛けた事はあれど、忙しそうな彼にわざわざ声を掛けるのは躊躇われた
「刹那ちゃんも。…雄英受けるんだったんだね」
『うん』
頷いて、前よりもがっしりした様に思える出久を見上げた。
きっと、受験に向けて身体を鍛えたんだろう。
…前までは、この言葉は彼の重荷になると思っていた。
けれど今なら、大丈夫だろう
『出久』
「なに?」
前までは、ヒーローを人一倍調べてはいたものの、出久が身体を鍛えているとは思えなかった。
それに出久は無個性だ。
個性の有無で差別する気はないけれど、ヒーローは過酷な職業だ。
命を懸けた活動に肉体的な補強もなく、ヒーロー向きの性格と知識だけでなれるとも思えなくて。
…ずっと、この言葉を出久に贈っていいのか、判らなかった。
安易な応援は、彼を傷付けるのではないかと思ったから。
でも、今の出久なら。
今の彼なら、大丈夫だろう。
『…出久、ヒーローになれるよ』
「え…」
『頑張ろうね、お互いに』
元々丸っこい目が、更に丸くなった。
それから何かを噛み締める様にぎゅうっと眉が寄って、少しだけ不格好な笑みになる
「ありがとう、刹那ちゃん…!!」
『…ずっと言えなくて、ごめんね』
「ううん、刹那ちゃんが時々心配そうな目で僕を見てるの、知ってたから…」
『あー、バレてたのか…』
苦く笑った所で腕を取られた。
振り向けば、むすっとした勝己が立っている。どうやら先に行ったが私が来ないので、わざわざ引き返して来たらしい
「オイコラ方向音痴。なに油売ってやがる」
『ごめん勝己。じゃあ出久、会場で』
「あ、うん!」
「チッ。てめェは落ちろ」
『勝己』
ひらひらと手を振って、勝己に着いていく。
うん、三人で合格出来たら嬉しいな。頑張ろう。
「今日は俺のライヴにようこそー!!
エヴィバディセイヘイ!!」
受験会場のピリついた空気では、勿論レスポンスなんて返らない。
それなのに何故求めるのか。
『……いや受験生そんな気分になれなくない?』
「コッチに合わせるつもりがハナからねぇだけだろ」
口元を手で隠して、こそりと右隣の勝己に話し掛ければ、さらりと返された
「こいつぁシビィー!!受験生のリスナー!!
今から実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!アーユーレディー!?」
やっぱりレスポンスはない。
一人で「YEAHHH!!!」と騒いでいるのはどう受け取れば良いのだろう。
首を傾げる私の左隣では、出久が感激した様子で口を動かした
「ボイスヒーロー“プレゼント・マイク”だ…凄い…!!
ラジオ毎週聴いてるよ感激だなぁ雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ」
「うるせぇ」
『結局その癖直らないんだな…』
慣れてはいるが、隣でブツブツ言われると怖い。もういっそ普通の声音で言ってほしい。聞くから。うるさいとか思わないから。出久の話は面白いんだけど、ブツブツ念仏みたいに言われるのは怖い。
「入試要項通り!リスナーにはこの後!十分間の“模擬市街地演習”を行って貰うぜ!!
持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!」
実施会場はAからGまでの七ヶ所。
てっきり最低でもどちらかとは同じ会場になれるかと思ったのだが、予想は外れたらしい。
隣から私の受験票を覗き込みながら、勝己が呟いた
「
「ホ、ホントだ。受験番号連番なのに会場違うね」
「見んな殺すぞ」
『私の覗き込みながら言う事じゃないんだよなぁ』
勝己と出久の受験票も見たが、三人ともバラバラの様だった。
それが不服なのか、勝己が舌打ち混じりに呟く
「てめぇを潰せねぇじゃねぇか」
『……オブラートって知ってる?』
素直に貴方を蹴落としたいですとか受験会場で言わないでほしい。自分に向けられたものじゃなくてもビビるから。
攻撃的な言葉を直接向けられた出久は、何も言わなくなってしまった。とてもかわいそう
「演習場には仮想敵を三種・多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!
各々なりの個性で仮想敵を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが
勿論他人への攻撃等、アンチヒーローな行為は御法度だぜ!?」
プリントに目を落とす。
行動不能…つまり破壊ないしその場から動けなくすれば、難易度に応じたポイントが入るという仕組みの様だ。
此処は無難にポイントの低い仮想敵から行くか。いや、高得点を叩く方が良いかな…
『勝己は』
「わーってんだろ」
『だよね』
「ビビってんなよ」
『ん』
方針は決まった。口許を隠したままで僅かに顎を引いた所で、斜め前方から勢い良く挙手する人が現れた
「質問宜しいでしょうか!?
プリントには四種の仮想敵が記載されております!
誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!
我々受験者は、規範となるヒーローの御指導を求めてこの場に座しているのです!!」
…うわぁ、真面目…めちゃくちゃ堅苦しい感じだな。委員長タイプだ。
そんな感想を抱きつつ眺めていれば、不意に彼が此方を振り向き、指を差した
「ついでにそこの縮れ毛の君」
「!?」
「さっきからボソボソと…気が散る!
物見遊山のつもりなら、即刻
「すみません…」
これもしかして、私と勝己もちょいちょい喋ってたのが全部出久の所為になっちゃったのか…?
口を押さえた出久にごめんねと手で合図すれば、ふるふると首を振って返された
「オーケーオーケー!受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな!
────四種目の敵は0ポイント!そいつは言わばお邪魔虫!
スーパーマリオブラザーズ、やった事あるか?レトロゲーの」
『………?』
「アレのドッスンみたいなモンさ!
各会場に一体!所狭しと大暴れしているギミックよ!」
『………???』
周りは避けて通るギミックとか何とか言っているけれど、ダメだ。さっぱり判らない。
ドッスンって何?あのうろちょろしてる茶色いヤツ?
そっと右隣を見上げれば、此方を見下ろしていたらしい勝己が溜め息を溢した。
シャーペンを取り出して、私のプリントにさらさらと何かを描いていく
「ドッスンっつーのはこういうヤツだ。同じ場所に居て、一定間隔で持ち上がっちゃ降ってくる門みてぇなの」
『……茶色い歩くのじゃないの?きのこの山みたいな』
「それクリボーな」
そうか、あれはクリボーと言うのか。
ドッスンというのがこういうものなら、その場に近付きさえしなければ大丈夫そう。あれ、でも所狭しと大暴れしているギミックって言ったな?
え?どういう…?ドッスンに足生えんの…???
門に…?門に足…???
勝己の描いた四角い門みたいなキャラクターに、そっと足を描き足した。
その瞬間、黙って見下ろしていた勝己が口許を押さえ、勢い良くそっぽを向いた
「ぶっは…何でそうなんだよ…!!!」
『え?だって所狭しと大暴れするドッスン…』
「そこにサンプル載ってんだろが…!!!」
『あ』
そうだった。サンプル載ってた。
そっか、ドッスンじゃなくてドッスンっぽいギミックだった…
まだそっぽ向いてぷるぷるしてる勝己の肩をそっとつつく。
やめてほしい。そんなに笑うのやめてほしい。
恥ずかしさで居たたまれなくなるから。ねぇほんと笑うのやめて。
周りから注目されちゃうから…
「俺からは以上だ!
最後にリスナーの諸君へ、我が校校訓をプレゼントしよう!
かの英雄、ナポレオン=ボナパルトは言った!“真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者”と!」
プレゼント・マイクが口角を吊り上げる。
それを見て、しゃんと姿勢を正した
「
それでは皆、良い受難を!!」
『カイロ良し。勝己は?保冷剤持ってきた?』
「試験中にゃ要らねぇよ」
『じゃあ何入れてんのそのポーチ』
「瓶」
『瓶?』
「アルコール入り」
『……ああ、そういう』
簡易手榴弾か。納得した。
でも勝己の性格上、念の為持ってるだけで使う気はないんだろう。
私はポーチにカイロが五個入ってるのを確認して、きっちり閉めた。
『良し、頑張ろう』
「ダセェ怪我すんなよ」
『ん。勝己は…怪我しないか。トップ取ってね』
「ヨユーだわ」
にっと笑った勝己と別れ、演習場に向かう。
緩く関節を伸ばして準備運動していれば、上空から声が降ってきた。
「ハイスタートー!!」
『!』
それに合わせて飛び出す。
突然の宣言に対応できたのは少数で、動かない受験者を急かすプレゼント・マイクの声が響いた
「どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!
賽は投げられてんぞ!!?」
街中を模した演習場の道を真っ直ぐに進む。このまま進めばポイントの取り合いだ。違う道を行った方がいい。
他の受験者達が直進するなか、目に付いた曲がり角に入った。
その直後、上空から影が落ちる。反射的に掌を向けた
《標的捕捉!!ブッ殺ス!!》
『勝己じゃん』
氷の塊を作り出し、仮想敵のレンズを破壊した。
ごしゃりと崩れ落ちるのを聞きながら、次に向かう。
向かってくる二体にタッチして凍り付かせ、同時に現れた三体を吹雪で地面に叩き付けた。
基本は3ポイント狙い。でも遭遇した仮想敵は根刮ぎ潰す。
それをずっと続けつつ、広い演習場を飛び回った。
『きっつい…40ポイント!』
そんくらいだと思う、たぶん。
3ポイントは率先して取りに行ってるから、少なくとも30はある筈。
これ何点取れば合格なんだろう。
残り時間はそんなにない。途中でバテた人も出始めている。
『そこの人、危ない!』
「ケロ?」
2ポイントの仮想敵を仕留めている女の子の背後から、1ポイントと3ポイントが腕を振り上げているのが見えた。
咄嗟に仮想敵を吹雪で吹っ飛ばし、彼女の傍に着地する。
『怪我は……あ』
「どうしたの?」
『ごめん、横取りしちゃった…』
今吹っ飛ばしたのは計4ポイント。地味に大きな横取りである。
その気はなかったものの、やられた側からしたら堪ったもんじゃないだろう。
謝罪すれば、キョトンとした後彼女は笑ってくれた
「良いのよ。助かったわ、ありがとう」
『そう言って貰えるとありがたい…じゃあ、お互い頑張ろうね』
「ええ」
蛙っぽさのある女の子と別れ、再び飛び上がった。
結構しんどいし、カイロは既に二つ開けた。でも、残りは三分切ってる。
この調子でやれば────
『……え』
ズシン、ズシンと地が揺れる。
音のする先、ビルを両手で押し退けながらやって来るそれに、顔が引き攣った
「逃げろー!!!!」
「死ぬ!!死んじゃうよ!!」
「無理だ!!」
『…これがドッスン…』
見上げる様なサイズのロボットが、地鳴りを響かせながら此方に向かってくるのが見えた。
サイズはイカれている上に、0ポイント。つまり此方に何の旨味もない。
とっとと撤収した方が賢明だろう。
皆と同じ様に逃げようとした所で、真下から声がした
「助けてー!!!」
『…?』
視線を落としたものの、首を捻る羽目になった。
いや人…居なくない?
下にあるのは瓦礫だけ、人は…
「誰かー!!」
『…ジャージが浮いてる』
あ、そういう個性の人か。
さっと近付くと、此方に気付いたのだろう透明な人が声を上げた。
「ごめん!そこの瓦礫どけてくれないかな!?足が挟まっちゃって!!」
『あれだね、判った』
ジャージが指す方向に向け、思い切り吹雪を出す。
個性の反動で、一瞬意識が遠ざかりそうになったが、何とか耐えた。
どうにか彼女が通れる隙間は作れた様で、安心する。
『立てる?足やってない?』
「大丈夫!隙間に丁度嵌まっちゃって動けなくなってただけだから」
『それなら良かった。早く逃げよう』
「うん!」
「終了ーーーーーー!!!!」
のしのしと近付いてくるギミックから離れようとした所で、終了を告げる声が響いた。
機能停止した0ポイントを見上げ、女の子の方を見る。
『お疲れ様。私、白露刹那』
「私は葉隠透!お互い受かったら良いね!」
『うん』
明るい彼女と別れ、更衣室に向かう。
着替えを終えて帰ろうとすれば、見慣れた影が校門に寄り掛かっていた
『勝己、お疲れ様』
「おう」
寄り掛かっていた背を離し、ゆっくりと此方に近付いてくる。
すっと出された掌を握ると、お互いに顔を歪めた
『あっっっつ…どんだけ爆破したんだよ…』
「つっめてぇ…お前カイロどうした」
『ポケット』
「片手突っ込んどけ」
『不良じゃん』
「お前の不良の基準は何だ」
『勝己』
「シバくぞ」
そのまま勝己は手を繋いで歩きだした。
周りがぎょっとした目を向けてくるが、離してくれそうにないので早々に諦める事にする。
『そういえばさぁ、こうやって帰るの久々だね』
「……忘れた」
『小学校で勝己がめちゃくちゃ個性使った以来じゃない?』
「その後お前も真冬に個性使って俺が暖めた事あったろ」
『覚えてるんじゃん』
「………」
勝己はむすっとした顔で前を向いていた。
ちょっと恥ずかしそうなその表情をちらりと見て、私も正面に顔を戻す。
『明日筆記だね。頑張ろ』
「数学しくんなよ」
『気を付ける』
試験から一週間が経った。
筆記は自己採点では合格ライン。ただ問題は実技試験である。
『実技、何点あれば合格ラインなんだろうね』
「知るか」
『勝己何点だっけ?』
「77」
『うわー…』
「お前は?」
『40までは…んーと、その後倒したから…44?』
「せめて50取れや」
『だよねぇ…50って合格ラインっぽいよね…』
そんな事を言いつつロードワークをこなし、家に入る。
受かってたら良いなぁ。でもなぁ、44…なんかなぁ。あとちょっとでした、残念!みたいな点数だよなぁ…
悶々としつつお風呂から上がると、母さんが手紙を此方に見せた
「刹那、結果届いてるよ」
『はーい』
どうせ家族には知らせる訳だし、と考えて、その場で封を切った。
入っていたのはカード。不思議に思いつつテーブルに置くと、それは急に映像を映し出した
《私が投影された!》
「わ、オールマイト!?」
「すげー!!オールマイトだ!!」
『へぇ、凝ってるね』
スーツ姿のオールマイトに母さんと優輝が声を上げた。これは帰ってきたら父さんにも見せよう。きっと喜ぶ。
《急に私が投影されて驚いたかな?実はね、今年から私が雄英に勤める事になったんだ》
「良いなぁ姉ちゃん!!オールマイトにサイン貰ってきて!!」
『まだ受かったか判んないって』
《早速だが、白露少女!君の試験結果を伝えよう!》
一拍置いて、オールマイトが口を開いた
《敵ポイント44!これは内緒にしていたものだが、審査制の救助活動ポイント20!
白露刹那、64ポイント!》
ゆっくりとオールマイトが此方に手を差し出して、笑った
《合格だ、白露少女!
雄英が君のヒーローアカデミアだ!!》
『………』
「やったー!!!!」
「お父さん!お父さんに電話!!!」
抱き付いてくる優輝と、笑顔でスマホを取りに行った母さんをぼんやりと見つめる。
…受かった。
それがじわじわと実感できてきた時に、がちゃりと二階のドアが開いた。
「あ!兄ちゃん!!」
「おう。…受かったんか」
「何で判ったの!?まだ言ってないのに!!」
「お前らの顔見りゃ判るわ」
すたすたと階段を降りてきた勝己が、私を見下ろしてふっと笑った
「んだよそのツラ。落ちたと思っとったんか?」
『……ほんとそれ…落ちたかもって、ずっと…』
はあああああ、と息を吐き出す。
安心してテーブルに伸びた私を放置して、勝己が投影を再生していた。
「64ポイント…まぁお前にしちゃ頑張ったんじゃねぇの」
『…へへ、ありがとう』
何処と無く不器用に褒めてくる勝己に笑みを返す。
それから、隣に座った彼に問い掛けた
『勝己は?総合何ポイントになったの?』
「変わんねぇよ」
『え』
思わず身を起こして勝己を見た。
しれっとした顔でソファーに座るソイツに、恐る恐る質問する
『……誰も助けなかったんです…?』
「勝ちゃあ良いんだよ、勝ちゃあ」
『逆に凄いな…?』
え?敵ポイントだけで77?可笑しくない?この人が居た試験会場って何人受かったの?幾ら救助活動ポイント足しても敵ポイントダメだったら厳しくない?
いやこれ同じ学校の人と会場被らない仕様で良かった…勝己と一緒だと落ちた可能性ある…
『勝己、一応聞くね。受かった?』
「当然」
『一位?あれ、順位とかって判るのかな…』
「たりめーだろ。再生しときゃ最後に出んぞ」
『えっ、すご…一位?有言実行マンじゃん…』
「兄ちゃんすげー!!お母さーん!兄ちゃん一位だって!!!」
勝己の結果を聞いた優輝が、母さんが消えた部屋の方に走っていった。
いやあいつ、私の合格より喜んでなかった?なんで?お前は私の弟では?
『ていうか77ってどうやったの?』
「ひたすら敵を殺した」
『それは判る。探し回った感じ?』
「序盤で3ポイント潰して、後半はてめェから寄ってくる1ポイントと2ポイントを殺し続けただけだ。
雑魚の方は、爆破さえ起こしゃあ勝手に捕捉して近付いてきたからな」
『うわぁ…蟻地獄じゃん』
「ブッ飛ばすぞ」
ほんとに違う会場で良かった。
十分間フルパワーで暴れる勝己とか、勝てる気がしない。
同じ会場になってしまえば、狙った仮想敵を爆速で横取りされて終わる未来しか見えない。
苦笑いしつつ、勝己に手を掲げた
『お互い合格おめでとう。雄英でもよろしくね』
「…ハッ、面倒見殺したるわ」
────ぱん、と掌が軽快な音を立てる。
その日の夜、出久から「受かった!」と報告が来て、私は笑った
第一歩
刹那→無事合格した。
個性による反動は眠気と体温低下、霜。
最近弟が自分より爆豪に懐いている気がする。
たまにヨッシーとクッパがごっちゃになる。
爆豪→余裕で合格した。
アホが不意討ちしてくるから笑うのを堪えたりする事は割とある。
ドッスンを知らない希少種を発見した。