English gentleman
我が家に新しい家族が増えたあの日から8年。ついに今年、私は11歳の誕生日を迎える。
この8年の間に我が家にもう一人、家族が増えた。
「姉さま!今日は何して遊ぶ??」
突然、元気いっぱいの男の子が私に飛びついてきた。
「わっ!シグナス、危ないよ!」
「こら、シグナス、姉様が怪我したらどうするんだよ!!」
「ごめんなさい!姉さま!大丈夫??」
「大丈夫よ。気にしないで。でも、危ないから力いっぱい飛びついては駄目よ。」
「はーい」
シグナス・ブラック。アルファードの1歳年下の弟で、我が家の二男。ちなみに私とは4つ離れている。かの有名なブラック3姉妹の父親にあたる子だ。まぁまだ7歳だけど。
「姉様、勉強は終わった?」
小首を傾げながらアルファードが聞いてくる。
「えぇ、終わったわ。」
多くの純血貴族の家の子供はホグワーツ入学前からある程度の魔法の勉強をこなしている。現に私も8歳くらいから魔法の勉強が始まった。先生はお父様とお母様だ。
「じゃあ、遊ぼうよ!姉さま!僕、今日は箒に乗りたい!」
「え?箒?」
「ダメ?」
「えっと、・・・」
シグナスの可愛いおねだりに正直私は困った。そう、何を隠そう私は飛行術が苦手なのだ。飛行術以外は基本的に出来るのに、如何せん箒だけは乗れない。お父様は学生時代クィディッチの選手だったし、お母様も運動神経が悪いわけではない。私の飛行術の苦手さにお父様はよく苦笑を漏らすものだ。
「お前はまだ、箒の扱いが覚束ないだろ。箒は兄様と今度一緒に練習しよう。」
お父様と同じく、飛行術が大の得意なアルファードは私の飛行術の酷さを知っているからか、スマートに選択肢から箒を除外した。
「ほんと!?兄さま約束だからね!!じゃあ、姉さま、この間の本の続きを読んで!!」
「えぇ、いいわよ。」
わーい!とシグナスが嬉しそうに書斎に走っていく。その場には私とアルファードが残された。
「アル、さっきはありがとう。」
「いいよ。姉様、飛行術ダメダメだもんな。」
面目ないです・・・とうなだれていると、アルが「でもまぁ」と続けた。
「別に姉様は乗れなくてもいいよ。空飛びたくなったら、俺の後ろ乗せてあげるし。」
・・・なにこの子!?いつの間に英国紳士になったの!?お父様、どんな教育したらこうなるのー!!教えてー!!
「ほら、早く行かないとシグナスがうるさいよ。」
「う、うん。」
弟の成長を垣間見たある日の午後のことでした。