Happy Birthday!!
その日の朝は妙に目覚めが良かった。ゆっくりと、ベッドから起き上がる。
バサッバサッ
遠くから聞き覚えのある羽音がだんだんと近づき、部屋の窓枠に一羽の梟がとまった。
「ご苦労様、こんな朝早くに君も大変ね。」
梟が咥えていた一通の手紙を受け取り、くちばしを撫でてやり、ビスケットと水をあげる。
「じゃあ、それを食べたら戻りなさいね。君もまだ仕事が残ってるんでしょう?」
そう声をかけ、嬉しそうに鳴く梟の声を背中に部屋を出た。
「お父様、ヴァルブルガです。」
「入りなさい。」
失礼します、と書斎に入ればお父様はおもむろに椅子から立ち上がり、私の方へやってきた。いつもは私が座っているお父様の方へ行くのにな、と思いながらもお父様へ歩み寄る。
「おはようございます。お父様。」
すぐ近くまで来たお父様を見上げ、朝の挨拶をする。
「おはよう、ヴァル。」
・・・うん。お父様、今日もイケメン。私が生まれた時からイケメンなのに、全然老けてないよこの人。
脳内でお父様のイケメンさについて今日も感想を述べていると、突然お父様の手が頭に乗った。
「そして、11歳の誕生日おめでとう。ヴァルブルガが私の子供に生まれてきてくれて嬉しいよ。」
その一言で、もう満足だった。なんとも言えない幸福感で満たされて、決壊しそうな涙腺をなんとか保って微笑んだ。
「ありがとう。私もお父様の娘に生まれることができて、幸せです。」
お父様は私の言葉に一瞬目を見開くと、ぎゅっと私を抱きしめた。
「い、・・・」
「い?」
「イルマ〜!!!!!」
いきなり叫びだしたお父様に驚いて、お母様が書斎のドアを勢いよく開けた。
「朝から何を叫んでるんですか!ポルックス!あら、ヴァルおはよう。」
ふんわり笑って私に挨拶するお母様。私も大人になったらあんな笑い方できるかな?
「おはようございます。お母様。」
「イルマ!ヴァルはどこにも嫁がせないぞ!!」
「・・・ヴァル、こっちにいらっしゃい。」
お父様を完璧にスルーしたお母様の元に向かうと、お母様もぎゅーっと私を抱きしめた。
「お誕生日おめでとう。あなたの母親になれてお母様は幸せよ。」
決壊寸前だった私の涙腺はついに決壊し、お母様になんとか私も、と伝えるだけで精一杯だった。
私、こんなに幸せでいいのだろうか?