そのいち。 そのいち
「...ふるやれい。さんさい。」
目の前にもじもじと手を弄り、視線を彷徨わせる子供がいる。とても愛らしいその姿に頬が緩みそうになる。普通ならば。しかし、
「...そっかー、れいくんかー。お名前ちゃんと言えて偉いねぇ。」
上司と瓜二つの顔に同じ名前。正直寒気しかない。答えながら半分白目を剥きそうな私を余所にふるやれいと名乗る男の子は褒められたことが嬉しかったのか少し胸を張って得意気だ。本当に聞きたい。何がどうなっている。
今日は珍しく降谷さんが都庁してきていた。『安室透』、『バーボン』として潜入捜査を行っていた私たちの上司にあたる降谷さんは多忙を極める。只でさえ忙しい公安部であるが降谷さんは常日頃文字通り朝から晩まで気を張らなくてはいけない上、公安警察として私立探偵兼カフェ店員として、そして黒の組織の一員として実質的に3つ分の仕事を行っていたのだ。組織が壊滅した現在『 バーボン』の名は捨てた彼だが、日本に害をなすのは何も黒の組織だけではない。これからも安室透として潜入捜査を続行するらしい。私なら、と想像するだけで胃痛がするし吐きそうだ。そんなことを風見さんに零したら君にそんな仕事は降りてこない、とはっきりお前には無理だと言われた。知ってます。でも、そんな真顔で言われると傷付く...。泣いちゃいますよ、と風見さんに冗談ぽく言うと無言で仕事を追加された。冗談通じない唐変木め...、と心の中で恨めしく思っているとジトリと風見さんがこちらを見たので慌てて真面目に仕事を再開する。また仕事を追加されては適わないので。閑話休題、降谷さんは忙しくその職務内容が特殊であるため本庁には殆ど全く来ないのである。2年前くらいに公安部に移動してきた私は実際降谷さんと会ったことは2、3回ほどでそれも会うというより風見さんがどうしても直接情報を渡さなくてはならない時、付き添いみたいな形で一瞬、或いは足に使われ遠巻きに見たという方が正しい。だから私は彼の見た目については殆ど髪色しか知らない。純日本人には持ち得ない綺麗なブロント色の御髪が素敵だったなぁというくらいだ。風見さんに降谷さんについて聞くと酷く優秀で女性受けする見た目であるということは答えてくれた。それ以上のことを聞こうとすると眉間のしわが何時もの数倍酷くなり、お腹を片手で摩り出すので彼にこの話題を出すのはやめるようにしている。好奇心で他の同僚達に聞いても似たり寄ったりの回答でその他については殆どの人が顔を青くして口を噤んだので彼はよっぽど厳しい人なのだろうと見当をつけている。まぁ、私は話したことがないので実感がわかないのだが。そんな降谷さんが今日とある案件でどうしても登庁しなくてはならないらしい。それがわかった数日前の公安部はまるでお通夜ような雰囲気であった。しん、と静まり返り只管に何時もの倍くらいのスピードでキーボードを叩く先輩方に慄いたものである。まだまだ新米の私がこう言うのも生意気だが先輩方は本当に公安警察として優秀な人ばかりだ。そんな方達がここまで登庁だけでこんなに怯えるとは。ここまでだと逆に見てみたい。怖いもの見たさというやつである。それに皆さんが言っていた女性受けするハニーフェイスを是非とも拝ませていただきたいと思ったのだ。
何時もより数倍緊張感が張り詰めた室内で仕事をこなしていく。あぁ、書類が終わらない。やってもやっても書類の山が迫ってくる。ひとつの山を片したら2つの山が出来てるんですけど幻覚ですかね?遠い目をしながら次の仕事を開始する。眉間に深い皺を寄せて睨むように書類を整理する私の耳に来たぞ!と怯えた声が聞こえる。その声につられて入口を見る。そこにはスーツ姿の金髪美人がいた。すっと通った鼻筋にキリッとした目元。文句のつけるところがないほど整った顔立ちに加えてかなりの長身のようで足がとても長い。うわっ、すっごいイケメン...と惚けそうになったがすぐに息を詰める。意志の強そうな青色の瞳が冷ややかな色を乗せていたからだ。絶対零度の視線が室内を見回す。こっわ、と肩を強ばらせすぐに視線を逸らす。なるほど確かにあれはやばい。視線だけで人を射殺せそうなのではと思うほどだ。美人だから迫力が倍増してより怖い。私も降谷さんには関わらんどこ、と書類に向き直る。いやぁ、やばいな。あの顔で冷ややかにそれでも公安か?とか罵倒されたらトラウマになるよ...。想像だけで胃が痛くなるので実際にやられたらたまったもんじゃないだろう。私も今までこの部署について風見さんや他の先輩方にも大分絞られてきたが降谷さんからそれをやられたら立ち直れなさそうだ。心が折れそう...。アイスブルーの瞳が私を貫く様を想像して震える。しかもきっと降谷さんは声を荒げたりしない怒り方をするタイプと見た。冷ややかに失望した視線を受けながら淡々と精神を抉られるような言葉を甘んじる私の姿が鮮明に思い描ける。
まともに話したことがない私でさえこんな風に考えるほど登庁してきた降谷さんは怖かった。流石の風見さんも胃を押さえたくなるよね、といつかの彼を思い出しながら同情しつつ書類をまとめる手は止めない。そんなことすれば仕事が終わらない。と言うかそれで降谷さんに目を付けられたらそれこれ目も当てられない。私はできる子、私はできる子と自分を励まし(洗脳し)ながら手を動かす。するとその横目に風見さんが降谷さんの元へ駆け寄るのが伺えた。何やら一つの資料を渡し、一緒に降谷さんのデスクのある部屋に向かっているようである。降谷さんのデスクといっても彼は正確には部署が違うため此方に用事があるとき使える降谷さん用の仮の机がおいてあるだけなのだが。同じ部屋に机を置いたら他の公安メンバーの胃に穴があくと配慮され、隔離されているらしい。その降谷さんのデスクは私のデスクよりも奥にある。よって必然的に私のデスクの近くを通ることになる。だんだん近付いてくる彼らに緊張で体が少し硬くなる。自意識過剰なのは分かるがもし彼が私を見咎めたらどうしようと、考えてしまい何時もより背筋を伸ばす。カツカツ、と靴の音が響いて降谷さんが通り過ぎる。ふわっ、と一瞬香った香水に意識が引き寄せられる。そのまま降谷さんに視線を向ければ、彼の視線とぶつかる。驚き、目を見開く私を余所に降谷さんは本当に偶々此方を向いただけであったのかふい、とすぐに視線を外して風見さんと話しながら降谷さんのデスクのある部屋に消えた。その背中を見送り、ふーっ、と大きく息を吐く。隣で分かるぞ、といわんばかりに大きく首を縦に振りながら肩を叩いてくる隣の席の先輩の手を叩き落としながら一度深呼吸をしてデスクに向き直る。バクバクと大きくなる鼓動を必死に宥める。視線が絡んだあの一瞬。あの人の瞳には何も色がなかった。がらんどうなあの瞳は確かに私を見ていたはずなのに。何故か私はあの人は何も見ていないと感じてしまったのだ。
「つ、疲れた...。」
あれからひたすら書類を片付け、気付けば既に夜といえる時間になっていた。集中していたためかお昼の時間すら忘れていたらしい。取り敢えず仕事が終わって気が抜けたからか胃が空腹を訴えている。取り敢えず今日はもう帰ろう。何か他の仕事を押しつけられる前に安息の地(自宅)へ帰るのだ。
「みょうじ。」
そそくさと帰る準備を整えていた私を風見さんが呼ぶ。うげぇ、と歪んでしまった顔を隠すことなく振り向く。
「...はい。」
「そう分かりやすく顔をしかめるな。曲がりなしにも上司だぞ。」
「風見さんにしかしませんもん。」
「より悪いだろ。」
只でさえ悪い目つきをより剣呑に尖らせ此方を睨んでくる風見さんにへらり、と笑ってみせる。別に風見さんを軽んじているからこの態度なわけではない。寧ろ風見さんのこととっても尊敬してるが故になんだけどなぁ、と思いつつ風見さんに何の用かを尋ねる。風見さんは釈然としない顔をしながらも答えてくれた。
「君は降谷さんと話したことが無かった だろう。」
帰る前に挨拶でもしていけ、と言う風見さんに呆然とする。え、降谷さんまだ帰ってなかったの。というか挨拶て。風見さん、そんな気を回して下さらなくて結構です。私は降谷さんと面識無いままで大丈夫なので勘弁して下さい。そんな私の思いなど露知らず風見さんが早く来いと急かしてくる。潜入捜査員に仲間とはいえ私との顔合わせを提案するって可笑しくないですか?
流石にNOとは言えず風見さんにドナドナされていく。覚えていて下さいね風見さん。次私が煎れる珈琲が人が飲めるものに仕上がってると思うなよ!なんて脳内で風見さんに文句を垂れながら降谷さんのデスクのある部屋の前にたどり着く。
コンコン、と風見さんが扉をノックする。
「風見です。みょうじを連れてきました。」
「あぁ、入れ。」
何?挨拶するだけだよね?なんかすごい雰囲気重くない?降谷さんっていつもこんな雰囲気撒き散らしてるの?やっばいな。なんて思考を逸らしながら降谷さんの前に向かう。彼は此方をちらりとも見ずに書類に向き合っていた。そんなに忙しいのなら挨拶なんてしなくて良くない?どうせ連絡とる訳でもないし仕事上繋がるのは風見さんくらいじゃないですか。帰っていいですかね。
降谷さんのデスクの前に辿りつくと漸く降谷さんは視線をあげた。その瞳が色を写していて安心する。先程のようにがらんどうな瞳を向けられたら、と怯えていたがその心配は取り越し苦労だったらしい。
「二年ほど前から此方に配属されたみょうじ なまえです。」
「君の上司の降谷 零だ。」
...それだけ?いや、私も名前しか言わなかったけど降谷さんも??そこは!!そこは何か一言あってくれても良いのでは!?ずーん、と重い沈黙が部屋を支配する。帰っていいかな?帰るよ!?ちら、ちら、と風見さんにアイコンタクトをとる。ほら、顔合わせはもういいよね?帰りましょう風見さん!今日の夕飯代くらい出しますから一緒に帰りましょう!お願いします!
そんな私の願いも虚しく風見さんが声を上げる。
「降谷さんとみょうじは会うのも初めてですし今晩食事でもどうですか?」
は?
正直お前何言ってんだ?と風見さんに掴み掛かりたいところだ。しかし強靭な理性により耐え、目を剥いて風見さんを見るに留める。いやいや、私のアイコンタクトそんな意味なかったよ?私と風見さんの信頼関係はそんなものだったの!?もっと私の気持ちを汲んで!?私も風見さんの気持ちを汲んで降谷さんの話題極力ふらなかったじゃん!?こんな時にそんなぼけ面白くないですよ、と言ってやりたい。が、降谷さんの手前黙っておく。いや、待て降谷さんの方が願い下げですよね?あり得ないですよね?仕事忙しいですもんね?おいおい風見〜何見ていってんだよ〜って言ってやって下さいよ〜。
「あぁ...。そうだな。」
ソウダナ?
ソウダナってまさか同意してますか?ご飯行く気なんですか??まさかね?そんなわけ無いですよね。そんなわけ無いと言え。
私が一人荒ぶっているとちらり、と流し目で時計を見た降谷さんが立ち上がる。いつもの場所でいいな、と率先して動き始める降谷さんに風見さんがえぇ、予約はもうしてあります、と返す。え?予約してたの?それもう最初から行くの確定してませんか?風見さん?風見さーん??何故か二人の間では全てが決まりつつあるようで私をおいて話がとんとん拍子に進んでいく。話についていけず呆然としていると話が纏まり部屋を出ようとしていたらしい降谷さんが此方を振り向く。
「...行かないのか?」
「行きます。」
美人怖いよぉ...。
ぶるり、と肩を寒さに震わる。うぅ、寒い。春とはいえ明け方はまだ冷え込む。寒い寒い、と足下にあった掛け布団を被る。毛布がないな...。寝ぼけてベッドの下に落としたのかな。面倒臭いしもういいや。そのまま寝こけそうになりはっ、と枕元の時計を見る。まだ後30分は寝れる...。うぅん、でもこの眠気は30分の睡眠で解消されない気しかしない...。というか頭滅茶苦茶いたいな...。飲み過ぎだこれ...。
昨晩は散々だった。二人に連れて行かれたのは高級和食店の個室。風見さんとご飯を食べるときは大衆向けの居酒屋なので店の前で凄く緊張した。二人は慣れたようにすいすいと進んでいく。聞けば此処はとある政治家や芸能人も利用する口の堅いことで有名なお店らしい。公安メンバーである私たちと潜入捜査員の降谷さんでは一緒にいることさえ知られるべきではないから此処なのであろう。ならわざわざ食事なんて誘ってくれなくても、と思ってしまった私はかなり薄情なのだろう。それから個室に入り緊張で身を堅くする私を余所に二人が料理を注文していく。机の上いっぱいに並べられた料理に唖然とした。正直緊張で何も食べたくなどなかったが勧められたものに手を付けないのも失礼だろうと箸を伸ばす。偶々一番近くにあっただし巻き卵を食べるとびびび、と電流が流れた。
お、おいしい!!
流石高級料理店。一度口にすれば箸が止まらなくなりそれを見た降谷さんに今度はお酒を勧められる。馬鹿な私は美味しい料理に舞い上がり、勧められるがまま様々なお酒を飲んだ。恐ろしいことにお酒が入れば気が緩み、降谷さんとも普通に言葉を交わしていた。本当にどうかしていた。お酒のせいで記憶もあまりはっきりしないが本当に下らない話をしていたと思われる。風見さんの眼鏡のストックは何本あるのか予想してた気がする...。酔った自分の行動に呆れる。何が眼鏡のストックだ。風見さんに聞けば一発で分かるだろ。うっ、と頭を押さえつつその後を思い返す。降谷さんとくだらない話してげらげら笑ってる間に風見さんが潰れてしまい降谷さんがタクシーを呼んで風見さんを押し込んだ。その後、私と降谷さんは飲み直そうという話になったのだ。だけど、いい場所がないな、って話になってそれから...。そうだ、あのとき私は何をトチ狂ったのか家に降谷さんをよんだのだ。降谷さんは二つ返事で頷き二人でコンビニに駆け込んだ。そのまま大量の酒類を買い込んでうちに帰ってきたのであった。
...であった、じゃない。それからの記憶がない。あれ!?ばっ、と上半身を起こす。反動で痛む頭を押さえながら周囲を見渡すと散らばったお酒の容器。ベッドの上、その下にも降谷さんの姿は見えず、耳を澄ましてもお風呂場やトイレから物音は聞こえない。此処まで確認して漸くほっ、と息を吐く。降谷さんもだいぶ呑んでいたけどちゃんと帰れたのか。良かった良かったと胸をなで下ろし二度寝をすべく足元にくるまってあった毛布を手繰り寄せようと手を伸ばす。そしてその毛布を引っ張ったその時。
「...ん?」
毛布に何かのっているのか重い。こんな所に何か置いてたっけ、と思いながら身を乗り出して毛布を確認する。すると...
「すぅ、すぅ...。」
なんかすごいショタが居る。手足を丸めてすぅすぅ寝息をたてる子供に息が止まる。 誰?私昨日酔っ払って子供攫ってきた?そんなバカな。まず昨日降谷さんとうちに帰ってきた時間はこんな小さな子供が居るような時間ではなかった。混乱した頭のままその子供を観察する。少なくとも小学生よりより下であろうその子供は金髪に褐色の肌のようである。とても見覚えのある色だ。しかも此方から窺えるその子の横顔は降谷さんのまんま。つまり...どういうことだってばよ??
えっ、降谷さんの子供?子供うちに連れてきちゃったんですか?勘弁して下さいよ〜...。しかも降谷さん居ないし。此処は託児所じゃないんですよねぇ。まさか酔っ払って連れてきていいとか言っちゃったの私。いい加減にしろよ私。お前は当分飲酒禁止だ。そうしてもう一度子供をみる。そこでポンコツな私は漸くその異常に気付いた。
「シャツ着てる...?」
白いワンピースかと思ったそれは大人用のYシャツであることに気付く。そしてその下には何やら灰色の布が見える。私は恐る恐るその子供を起こさないように注意しながらその布を引き抜く。
「ひっ...。」
その布は昨日降谷さんが着ていたスーツの上下であった。どうしてこんなところに。降谷さんまさか全裸で帰ったの?そんなわけ無いよね...?じゃあなんで此処に彼のきていたスーツが...。うちには男物の服なんてないし、あの時間に衣料品店が開いてたとは考えにくい。となると考えられるのは...。いやいや、まさかそんなわけ無いよ。漫画の読みすぎだよね。まさか...。
「ん〜...」
混乱したまま茫然としていると子供が目を覚まし始めた。あ、やばいと思う間もなく子供はぱちぱちと目を瞬かせ、じっ、とこちらを見つめてきた。
「...だれ?」
そうなるよねー、私もそうなったー!なんて心の中で返事をする。私にできたのは精々母は、と乾いた笑みを浮かべることだけであった。
そして話は冒頭になるのである。布団の上で正座をし頭を垂れる私と小さな足を投げ出してこてんと首傾げるふるやれいくん(仮)。
「えーと...、降谷零はあなたのお父さんの名前じゃないかな?」
「おとうさんはおとうさんだよ。ぼくがふるやれいだよ?」
そっかぁ〜!違うか〜!!先ほどまで上司と瓜二つの姿に怯えていたが子供の挙動にころりとやられる。だって考えたんですけど降谷さんがこんなに可愛い訳がないもん。正直呂律も回ってなくて滅茶苦茶可愛い。だっこしたい。可愛いの暴力。この子に強請られたら印鑑も通帳も差し出しても悔いはない。いや、落ち着け私。流石にやばいぞそれは。
「おねーちゃん、おなまえなに?」
「んんっ...、なまえだよ。」
「なまえちゃん。」
にこぉ、とご機嫌に笑うれいくん(仮)が尊すぎて涙がでそう。こんなおばさんにもお姉ちゃんっていって尚且つ名前にちゃん付け出来るなんてなんて優秀な子なの...。いくら欲しいか言ってごらん?
「なまえちゃん、ぼくおなかすいた。」
先程のにこにこ笑顔から一転してお腹を抑えてしょんぼり顔をしたれいくん(仮)に私は胸を抑える。れいくん(仮)はご飯をご所望かぁ。気合い入れて準備しますね。ちょっと、待ってねー、と立ち上がり冷蔵庫へ向かう。小さい子って何が好きなんだろう、と思いながら冷蔵庫を開く。
「うわ...。」
冷蔵庫の中は空っぽであった。そういえば数日帰れないかもな、と考えナマモノ系は殆ど使ってしまっていたことを思い出す。冷凍庫も開いてみたが小さな子供が食べそうなものなど入っていなかった。仕方ない、コンビニ行くか。
「私とお買い物いってくれる人ー!」
「はーい!!」
ベッドの上でじっ、と私の言いつけ通り待っていてくれたれいくん(仮)に声をかけるとれいくん(仮)は目を輝かせベッドの上で立ち上がって手を挙げた。私はれいくんの元気の良さに満足してうんうん、頷きれいくん(仮)を抱き上げる。そして近くにあったポンチョにもなる膝掛けで包む。外は早朝で寒いし、流石にシャツ一枚の子供を連れていたら誘拐と思われる。誘拐じゃないし。...本当に誘拐じゃないよね?
昨日酔っ払っていたくせにお風呂はしっかり入って化粧を落としていたらしいので近くにあったマスクを付けてスリッパを引っかける。
「行ってきまーす。」
「いってきまーす。」
私が誰もいない部屋に向かって声をかけるとれいくん(仮)もそれを真似て挨拶をする。あぁ、可愛い。
「それじゃ、出発進行だー!」
「おー!」
家にしっかり鍵かけてれいくん(仮)とコンビニに向かって歩き出す。腕に抱えたれいくん(仮)が温かい。そういえばさっきうちにはないはずのメンズの革靴があった気がするなぁ...。
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