熱中少女
今日またロキシーさんのお宅でVR自殺が図られ、まだ63歳のダニエル坊やと89歳のガンラルさんが命は断ちました。今月に入って既に17件も同様の自殺が起きています。
彼らの生を蝕む悪魔が呪いを振りまいているのです。
健常な者であっても、その悪魔に唆されればたちまち精神が犯されてしまうのです。
世界政府が4年前にこの事態に警鐘を鳴らし、事態の収束に向けて様々な施策を試みてはいるものの、有効な手立ては未だに見つかっていません。
私たちはまたしても機能を失い、疑いと暗闇を恐れながら暮らす事になるでしょう。
ですが、私にはそれこそが人々に希望という光を射す最後の手段であるようにも感じられます。
光が無ければ影が存在できないのではなく、影があるからこそ光を認識できるのではないのでしょうか。
私は神や人々に祈りを捧げるのを日課としています。物事を綺麗に割り切れる人たちにとっては何の意味も為さない行為だと、嘲られることも多くありました。或いは、持つ者からは、物事には何一つ無意味なものなどないのだと慰められることもありました。
しかし彼らはそう語る口で怠惰を罵倒しなければ気がすみません。まるで怠惰を無意味な物、或いは意味があったとしてもそれには相対的な価値が低かったり、無意味より質の悪いものと見なします。
彼らは結局、時の刻む現象の一部分一部分を切り取って因数として物事を割り切っているのです。何かと何かの現象を意味ある繋がりでしか捉えられないのです。
私の祈りには何の意味もありません。
いえ、私自身それを納得しているわけではありません。
しかしながら私が捧げた祈りによって誰かが救われる事は決してありませんでした。
何度も何度も、祈りました。
やがてそれはただただ自身に苦行を課し、精神を鍛えるだけのただのトレーニングになりかねない危うさの上で、私はやはりただただ祈りました。
人々に対して利己的な善を押し付けんとして祈りました。
しかしながら、祈りとは結局の所無意味であるが故に祈りなのです。
私の祈りは誰に対しても何に対しても作用しません。それは行為ではないからです。
そのおかげで私は意味を見出す事ができました。意味とはただひとつしかないのです。
時の座標は無限です。しかし意味とはただひとつなのです。
今日はボブ爺が悪魔に囁かれる番です。彼らは意味を求めてまたこの世から放たれるのでしょう。
祈りましょう。私は祈ります。悪魔に対してもこの街の人々に対しても、そしてあなたの為にも。
「ああ神よ。お金を沢山下さい。一生困らないだけのお金です。ギャンブルでも何でも構いません。アモーレ!あの給料泥棒の青二才に天罰を!アモーレ!私を鼻で笑った散髪屋の店主を地獄に落として下さい!アッモーレ!」
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
「みんな一緒にーーー!?」
ホッッイ!
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
「2階席ー!元気足んねぇーぞ!?」
ソレ!ソーイ!
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
アッ! モーレ!
バラレルスタジアムで一夜限りのワンマンライヴ。
あの伝説のアイドル達が帰ってきた!
純潔・乙女セリン!
アンコールの手拍子は1週間は続いたという。
しかし、ファンたちの思いは届かない。
決して届く事はない。
なぜならそれは祈りであったからだ
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