方眼紙
ウマル=ダジャンゴ。トルクメニスタンの第33回アームレスリング地区大会で準優勝した男の名だ。
彼が鍛えあげた上腕二頭筋はジェラルミンよりも固く、そして軽量で持ち運びに便利である。そんな彼のトレニーニング法はこれまでの常識を覆す革新的な手法であり、アームレスリング界では第3次筋肉革命として、飛躍的な技術革新が起こった。
また、ウマルは公営放送「ナッサム=カサム《のど自慢大会》」で上位入賞する程の美声の持ち主でもある。「さようならリバティ」を歌う彼の淀みのない発声方法は、洗濯機の洗浄力と省エネ化を図る為のザブーン水流にも転用された。主婦たちの間ではなくてはならないものとなっている。
さて、彼の功績を挙げればキリがない。しかしここで着目すべきは彼の功績の数々ではなく、彼の功績の中に1番という数字はどこにも見当たらないことだ。
「なにクソ、改まって言われると、ホント腹たつぜ。いつもそうだ、肝心な時に何かが俺の邪魔をしやがる」ウマルの口癖である。
ウマルは間の抜けた男である。ネギのないネギマというか。濁点のないアルファベットというか。靴底のないエアマックスのような存在である。
「ノンノン、お断りだぜその誤解。俺は決してバカじゃない。隙間だらけのこの世界、俺が決した訳じゃな↑い↓?」
つまりこうだ。人の人生は意思決定と実行の連続である。それに伴った結果が訪れる。だが、間の抜けた男ウマルは違う。こういったPDCAサイクルの各モーションに間があるのだ。計画から実行に移る間。実行から結果が出る間。結果を改善する間。これはウマルの性格上の欠点や思考能力に起因する訳ではない。
例えるならミニ四駆の車体である。通常はコースが繋がっていてそこをいかに走り抜けるかが勝負である。
いっけぇぇえ!マグナムトルネェーーーーーーード!!!!!ネェーード!ねぇ?
しかし、ウマルのコースには隙間が存在するのだ。本来ならその隙間に落ちて車体はコースアウトしてしまうのだが、彼は今も駆動し続けている。
何故か。
舗装施工管理技術者が日夜彼らの隙間を埋めているからである。彼らはこうした間抜け共のアクティビティ間の補完を生業とし、連続的な人生のサイクルを支えているのである。
1級舗装施工管理技術者カサイ「ウマルの行動フェーズ!《横になる》《目をつむる》の隙間に《曲を聴く》を挿入!結果フェーズ《眠る》を《オススメ動画で1時間》に変更してターン終了!」
ウマルは明日の会議で研究結果を発表する。「ランダムとランダムの相関関係」についてだ。会議は早朝であるため今夜は早めに布団に入る。そして、横になって目を瞑ってみるとふと脳裏をよぎる「さよならリバティ」のフレーズ。
『自由にゃLサイズコーラによく似合う!御法度ごめんさチキンナゲット(マスタードソース)wow wow 終戦くすぶる禁煙室 へばりつく労働者の鼓動 so 今 狼煙が垂直に煙を上げる みんな息を飲む どうだ 空気は静止し やがて平和が訪れる』
彼はまぶたを開けて、ユーチューブを開く。
そして「さよならリバティ」のカバーバージョンに目が止まるのだ。
彼は大事な本題を忘れ、いつしか関連動画に埋没していた。
ウマル「なにクソ。・・・いつもそうだ。」
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