order of death@
風が夕闇のビル群の隙間を、音を立てて吹き抜けた。
街の重圧で滲み出した哀しみを拾い集めた、暗い風である。
洋介の目前には過去の隘路が広がっている。何処まで進もうが、最早哀愁の中にしか道は繋がっていない。
ふと人生の行く末が判然とした時、洋介は望む事を絶った。
すなわち絶望である。
望みが絶えるのではない。
足取りは重い。ひどくひどく重い。
しかし、立ち止まる事が出来ない。重いと感じる足取りだけが更に心を重くしたが、どうしても立ち止まる事ができなかった。
その日、洋介はいつものよう全く別の事を考えながら、へばり付く様な笑みを浮かべて同僚に挨拶をして帰路についた。
幾何学の構造物を捉えては何度も繰り返した思考が、体のゼンマイを巻き続けるのだ。
洋介は街明かりを反射させて淡く光る薄雲を見上げていた。不明瞭で曖昧で何も特別でない、人を感動させる事の無い雲を見つめていた。
夕闇であった曇り空は深夜零時になっても投影する光を僅かに移り変えながら漂っている。
洋介はもうずっとそこを離れようとしない。
また、一筋の暗い風が凪いだ。
その時、生まれてこの方ずっと背後から迫り続けていた何かが洋介の体を通り抜けた。
「…なんだ。そうか」
「そうか…」
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