order of deathD
「・・・・さん・・・・すけさん」
1+1=5 1+1=89628 1+1=9918738 1+1=442 1+1=1・・・・
「・・・・うすけさん・・・・」
1+1=389749 1+1=752938 1+1=98942377・・・・・
「・・・・ようすけさん・・・・洋介さん!」
「・・はっ!」
宵闇にテトラポットの隙間を漂う藻屑のようにまどろみ漂う私の意識を呼び起こしたのは、同僚の浅野である。
「洋介さん。昼っすよ」
浅野は淡白な口調で改めて声をかけた。
「あ・・・ああ・・・悪い」
私はようやくキーボードから手を離して、大げさに深呼吸をひとつし、意識のまどろみを薄めようと努めた。
「ぃえ・・うわぁ。これもう1000個くらいいってんじゃないっすか?」
ラーメンの残り汁に浮かぶ油脂を見た時の顔で、浅野は私に言った。
「はは、真面目だろだろ?」
「いや、ただのキチガイっすよ」
「分かってないな。気が違ってるくらいが正常なんだよ」
「それ、まじ正鵠」
私と浅野はニヤリと笑い、お互いの無駄口を賛えた。
「さて、昼行くか」
「あいよ」
私は打ち込んだデータをAIに読み込ませた後に、昼食に出かけた。
当然AIは私の1000に及ぶ計算結果を誤ちだと決定づける。AIにとっては造作もないことである。しかし、1年後には1+1が3になっているかもしれない。もしくは1+1を2回繰り返すと2と9になるかもしれない。人間にとっては2かもしれないがAIにとっては10かもしれない。
AIの現実と理論を紐付けるため、未知の可能性を現象させ、AIに判断を委ねるのである。
それが栄華を極めた人類の唯一の仕事であった。
「浅野はどうしてこの仕事選んだわけ?」
オフィス街から離れた小さな定食屋で、くすんだグラスに昔ながらのピッチャーで水を注ぐ浅野に尋ねた。もはや歴史博物館と言えそうなレトロな店内の装いだが、できたのはつい3年前くらいである。
「どうしてって、洋介さんと同じじゃないっすか?ここの人って基本みんなクリエイティブ科出身でしょ?」
「同じなわけあるかよ。浅野はプログレ系だろ。俺はエモ系だよ」
「えー、洋介さんってエモ系なんすか?『小判鮫マキャビティズ』とか好きなタイプっすか?」
「あれはチル系だろ。『摩訶よろしく』とかそっちだよ」
「うわ、萎える。精神偶像による堕落者への苛虐とか容認しちゃう系ってことでしょ?時代錯誤だわ」
「うるさいよ。俺の話じゃなくて浅野の理由聞いてんだけど」
「なんすか。イェァ!俺の内情プライバシー!イエァ!二人の内緒にしたいらしぃ!チェッ!案外乙女だ洋介パイセン!しっかり断る男だ浅野はサーセンっ!!俺のヒストリーをひっそりなんて姑息な話術にげっそりぃェッ!驕り高ぶるやつには話せまノン!ノン!けれど、けれども、奢りたがりのやつには話しまSHOW!YEA!」
「・・・・・・・・」
「ってな感じで」
「うるさいよ。奢るからはやく話して」
「ツレねぇ!世知辛いっす!もうちょっと聞く態度ってものがあると思うっすよ?」
「よし、分かった。もういいよ。なら話題を変えて私が『ヘッドキャップ5軸脚立』について話す」
「いや、いいっす、あんなモグリシーシャ使いの来歴とか興味0っす」
「・・・・・・・・」
「分かったっすよ。話しますよ」
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