ストレンジャー4


「あ、あの!か・・鏡を!鏡を貸してください!」なゆたは突然そんなことを言い出した。ビリーは何の事か分からず、何度かその言葉を繰り替えさせた。しかし、何度聞いても埒が明かない事に辛抱できなくなったなゆたは、居てもたってもおられず、先ほどの寝室の方へと駆け出した。

「お、おい!一体どうしたんだね」

なゆたは部屋に戻ると、ガラス窓を除き込んだが、外が明る過ぎる為に自分の姿が映らなかった。そうかと思うとおもむろにクローゼットを開けたり、ベッドの周りを探りだした。そうして、薄型のモニターに顔を近づけていた頃、ビリーがやってきた。

「鏡かい?鏡ならあっちの洗面所に・・・」彼女はそれを聞くと、小さくお辞儀をして、ビリーの指のさす方へ駆け足で向かい、大きな鏡の前に立つと、バサリとマントのフードを払いのけた。そこに映っているのは少し疲れが滲んでいるが、まぎれもなく自分の顔である。

「あ・・・ああ、私だ・・・!私の顔だ!よかった・・・私・・・私だ・・・」彼女は自分の顔が鏡に映ったのが余程嬉しかったのか、終いにはまた目にいっぱいの涙を貯めて、ぺたんと力なく座り込んだ。

「大丈夫かね?」彼女の不安がどういった類のものであるか、大体検討がついていたビリーは、座り込んだ彼女を見つけても、騒ぎ立てることはなかった。

「ビリーさん。見てください・・私なんです・・これは私の顔なんです・・・・」なゆたはビリーにもう自分の映っていない鏡を観るように促す。そして、ビリーがうんうんと頷くのを見て、堰を切ったかのように泣きじゃくり始めたのである。

「ああ、それは本当によかった。大丈夫。きっと他の記憶だって、どこかにちゃんとしまってあるに違いないさ。なに、焦ることはない。君が君であるのなら、あとは記憶を探っていくだけのことじゃないか。さあ、起きたまえ、ほら、可愛らしい顔が台無しじゃないか」ビリーは言葉が通じない事を承知しつつも、根気強くなゆたを慰める。

そうして、ようやく彼女が落ち着きを見せると、再び酒場のカウンターへ連れていき、一から彼女の話に耳を傾けるのである。森のどのあたりにいたのか、彼女が身にしていた靴や服には見覚えがあるのか?また逆に彼女の疑問にも答える。ここはどこなのか、ソウルリンカーとはなんなのか、そんなやりとりを延々と何時間も繰り返すのであった。

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