フェノメナル・キャット6


「へ?」なゆたは素っ頓狂な顔を浮かべる。

「ダメだよ。なゆた。最初にも言ったけど、ソウルリンカーも付けずに出歩くなんて危ないことなんだよ」

「ど、どういうことなんですか?」

「まず、SLSで暮らす人が初対面の人と会ったら、ソウルリンカーでその人の公開しているプロフィールを調べるもんなの。非公開な部分も多いけど、その人の犯罪歴やポリスからの警告なんかの情報は隠す事ができないから、それでまずは相手が危険な人物でないかを判断するでしょ。しかも、こんな個人のスペースに入る場合はソウルリンカーを使って、お互いの同意を略式の約款で担保するのが普通だし、なゆたの持つ事情が何であれ、個人情報を人に話すなら、より細やかな取り決めをしておかないと、最悪相手側が犯罪に巻き込まれるなんてこともあるからね・・・。今のなゆただと相手に悪意があった場合、どんな危険な目に遭ったとしても文句は言えないよ?」シンディはこの社会でSLSを付けずに出歩く事への危険性をなゆたに言って聞かす。ビリーやマイクがこの事に言及しなかったのには、ずっとSLSで育ってきた事による危機感の乏しさという面は否めない。ソウルリンカーを付けた者同士での犯罪はそのほとんどが未然に防がれものなのだ。逆に言えば現在SLSで暮らしている人間のほとんどがシンディのいうような危険性を思い浮かべもしないのである。その点で言えばシンディ自身が特殊な例であると言えよう。

「そうだったのですね・・・」なゆたは落胆の色を隠せなかった。一瞬でも希望の芽が芽生えてしまった事がなゆたの心を尚更苦しめたのだった。

「ごめん、ごめん。騙すつもりは無かったんだけどね。でも、ほら。まだこの街に来て日が浅いって言ってたから、万が一何かに巻き込まれたら・・・って思ったらさ」シンディは爪でポリポリと頭を掻きながらばつが悪そうにそう言った。

「いえ、教えてくれてありがとうございます。今日会ったのがシンディさんで良かったです」なゆたは素直な気持ちを率直に伝えた。

「はは、ありがと。私も、今日なゆたと会えてよかったよ。それじゃ、そろそろ行こっか」

「はい。ここからだとどれくらいで着くのですか?」なゆたは少し道草を食ってしまった分、店でビリーが待ちくたびれてはいまいかと心配になった。

「ん?」シンディは気のない返事をする。

「えっと、今からスマイルまで行くのですよね?」なゆたは改めてシンディに確認する。

「はは、そっかそっか、いや、実はもうとっくに着いてるんだよね」シンディはなゆたの勘違いに気づいてそう言った。

「え?」

「だから、話してる間にスマイルの近くのハブに着いてるんだ」レイルカーは従来の車両に比べて振動がほとんどないので、走っているという感覚がない。その為初めて乗ったなゆたが勘違いするのも無理はない。

「なるほど」なゆたもようやく納得したようである。

「うん」

「これも私のことを試してたのですね?」しかし、なゆたは先ほどのシンディの話からレイルカーの話自体が偽りであると、勘違いをこじらせてしまったようであった。

「違う、違う!とにかく外に出たらわかるからさ」シンディはそう言って、まだ疑心に駆られるなゆたを外へと連れ出したのであった。

「ほんとだ・・・。もうスマイルが見えてる・・・」なゆたは狐につままれたような顔で見慣れた風景に目を丸くしている。

「はは、ややこしいこと言ってごめんね。さ、私もうお腹ぺこぺこだよ。早くいこ?」シンディはそう言ってニコリと笑った。

「あ、はい!」なゆたはまだ少し現実感が乏しようであったが、SLSで暮らす中でこのような驚きはある意味で日常となりつつある。

こうして、偶然街中で出会った二人は次の舞台へとその活動の場を移していくのであった。

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