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ジョルノは自分からの説明はもう終わりだというように、椅子に座りなおし、私の隣へと目線を動かす。

「では承太郎さん、任務についてお願いします」
「ああ」

承太郎さんは、端にSPWと書かれたファイルを取り出し私にスっと差し出した。私でも知っている、それはスピードワゴン財団のロゴマークである。冷や汗でもかいていやしまいか、と思いながら受け取ると、中にはホッチキスで止められた数枚の紙。可愛らしいあどけない子供の写真がその子らの名前などと共に並べられている。写真の下には日付が二つ書かれている。誕生日ともう一つは何だろう。

「このところ、イタリアで子供の失踪事件が増えている。被害者は全て六歳から十二歳前後の、日本で言えば小学生くらいの子供たちだ」

この写真の子供たちは行方不明らしい。すなわち、このもう一つの日付は彼らが家に帰ってこなかった最初の日ということ。

「行方不明になった子供たちは人体実験に使われるか、もしくは裏社会において人身売買の競売にかけられている。犯人は複数人のグループで、数名はスタンド使いとの情報がある。奴らの顔は割れているが、問題は被害にあった子供たちの対応だ。奴らを仕留める際にその場に子供がいないとは限らない」

私は自分自身が無意識のうちに息を詰めていたのに気づいた。
壮絶な経験や、大きなショックというものはトラウマを生む。それは本人も気づかないうちに心の中に巣食っているのだ。子供たちへの被害がどれだけなのか、想像できてしまい、かなしくなる。

「ルナさんのスタンドは、実際の暗殺任務ではなく、任務の後方援護と被害者保護のためだと考えてもらいたい」

私は承太郎さんの言葉に頷き返した。すると、もう一つ資料を渡された。

「加えて、この任務も並行して行う。特別な弓矢の回収作業だ」

資料の写真には古そうな細工の施された矢尻。何の変哲もない、博物館などに置いてありそうなものだという印象を受ける。どこかで目にしたことのあるような気がしないことも無い。承太郎さん曰く、スタンド能力が発現する可能性をもたらす矢だそうだ。これで傷つけられたものはスタンド使いとなるか、もしくは死ぬかのどちらか。

「これが悪用されることを防止するために回収している。もしかしたら今回の失踪事件にも関係しているのではないかと考えている。大丈夫か?」

承太郎さんの言葉に再び頷き、ちらりと彼を見れば、片眉を上げて視線を返してきた。その目の色に記憶の中にある同様の双眸を思い出し、反射的に顔に熱が集まる気がした。不自然にならない程度に顔を書面に戻した。

「ルナさんにはこちらの任務がメインになるとは思うが、最優先は子供たちの救出だ」

私は矢の写真を見たまま、また首を縦に振る。任務に出てみなければ仕事がどうなるかは分からないようだ。無茶振りとか言うものは、割と学生時代から縁があったから、きっと臨機応変に対応出来るだろうと思い込むことにした。

「事件が起こっているということは理解しました。それで、一緒に働くという暗殺部隊というのはここに居る方達ですか」

私は全体に向けるようにそう言った。承太郎さんとジョルノの他に居る、五人が恐らくそうなのだろうという予想で、だ。その中の黒いフードのかぶった男性が、そうだ、と肯定する。

「俺が暗殺チームのリーダー、リゾットだ。ここに居ないメンバーは今度紹介するとして、お前ら、自己紹介しろ」

リゾット、随分と美味しそうな名前の方だが強面のバリトンボイス。本名では無いのかもしれない。彼に促されて、後の四人も私の方を向いた。

「プロシュートだ、よろしくなァ」
「お、おれはペッシ、よろしく……」

薄く笑みを浮かべる正面の男性と、その隣の気の弱そうな青年が挨拶し、その次に先程ぶっ飛ばされていたブロンドの人と眼鏡の人が続いた。

「俺はメローネ、さっきはごめんね」
「ギアッチョ」

暗殺業となれば本名を知られてはならないのだろうか。あまり言語が出来すぎるのも如何なものかと自分自身に文句を言いつつ、彼らの名前はコードネームか何かだと考えようと決めた。私は努めて笑顔で、よろしくお願いします、と彼らに返した。

ジョルノは私にブルーのカバーがされたスマートフォンを渡して、この会議の終了を告げる。

「任務はこのスマートフォンから確認してくださいね。よし、事務事項も済んだことですし、先程の飛行機のお礼をさせてください。ルナさん、承太郎さん」
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