ヒーロー殺しさんと可愛い君
ヒーローから警察から逃げて、一般市民を欺いて。着の身着のまま飛び出した私達はお金に困ればスリや色々なことで稼いで裏の仕事とかでも稼いだ。夜の街は少しだけ息がしやすかった。
それから2人でお揃いの夏服のミニスカートのシンプルなセーラー服とカーディガンを買ってか弱い女子高生に成りすました。
そうしたら、世間はちょっと私達に易しくなった。馬鹿みたいな人達だこと。
私は可愛いモノを殺して十字架に吊るして奇麗にした。ヒミちゃんはナイフで切り捨てて血を吸い失血死させて殺している。
好きなように世間を欺いて生きていた、2人でこの息苦しい世界で。
そんなある日、ヒミちゃんは「ヒーロー殺しステイン」と出会ったようだ。
その後のヒミちゃんはまさに恋する乙女で可愛かった。
カァイイカアイイ私の幼馴染みで親友。
血の香りがしてボロボロな人。それにステインさんは当て嵌まったのか。
私も会うかななんて思っていたら思いの外早い段階で遭遇した。それはとある路地裏での事。血溜まりが出来て鉄の匂いがつんと鼻に来る。
「ハァ…子どもか………」
「………ヒーロー殺し?さん、ですか」
推定ステインさんの足許には事切れたマイナーなヒーロー。わぁ、見事な手腕。
「……そうだが?早くどこかに行け、子どもに用はない」
少しの好奇心。ヒーロー殺しはヒーローを殺すからそう呼ばれている。でも、私は知っている。彼は徒に悪意を、力を振り撒く敵も粛清対象。そして一般人には手出ししない。異端の敵。
「…じゃあ、私が自由気ままな敵だったら……」
────来た
ガキン。
「ハァ………なら死ね、………子どもであろうと徒に力を振り撒く者も粛清対象だ…!」
「でも、仕方ないじゃないですか。社会が受け入れてくれない、だから、壊すの」
「子どもの癇癪か………ハァ…信念なき殺意に何の意味がある」
「信念なんて後からついてくるんですよ! 好きなことの為に好きに生きる! それが私の生き方だから! そうなのそれでいいの! 殺意なんておまけなんだから!」
刀、ナイフ、刃、ありとあらゆる刃物が交差する。路地には金属片が散らばっている。絶え間ない応戦の末に互いに距離を取る。
「じゃあ、逆に貴方の信念は何なのです?」
「………ハァ…贋物を排斥し、真に本物の英雄を取り戻す。今≠壊し、正しき社会にすること…だ」
「……へえ」
カチャリ。そう音を出して刀を納めるステインさん。おや、と首を傾げていると
「…ハァ…ハア、お前は………自分も気付いていない信念があるようだな…」
「……」
「………じきに警察や贋物たちが来る…お前を殺すとしたら…またの機会でいいだろう…」
「そうですか。なら、さっさとおさらばしますね。ではまたステインさん……この度の殺し合い、とっても愉しかったです♡」
タン、タンタンと排水管やダストボックス、室外機を足場に建物の外壁を登る。ステインさんもまた、同じように姿を消した。
可愛い人ではなかった。でも、格好いい人だったと思う。ヒミちゃんが好きになるのも判る気がした。
夜風が私の髪をさらりと揺らす。銀の私の髪。刃のようにキラキラしていて手入れは怠らない。パッチンとした切れ味の髪。眼は日本刀のような鈍い灰色で大きな鋭い瞳。個性は身体の特徴すら表すのかと思えてくる。
こんな灰色の世界で、私は今日も生きている。
◇◇◇
その日は満月がキレーな日だった。絵本に出てくるみたいな真ん丸なお月さまの日。うさぎが餅つきしていそうな、そんな日。
拠点にしているカアイイお部屋に弥刀ちゃんはご機嫌な様子で帰ってきた。とってもキレーな顔の白い頬をほんのりピンク色染めててとってもカァイイ。何か良いことでもあったのかな?
「おかえりなのです弥刀ちゃん」
「ただいまヒミちゃん、良いことあったんだ!」
「なんですか?」
「ステインさんに会ったの」
「……! ステ様に⁉ どう⁉ どうでしたか⁉」
「カッコいい人だったよ。血の香りがしてボロボロで………まさにヒミちゃんの理想だったねぇ」
「わかってくれますか! そうなの、とっても素敵なの! 斉藤くんみたいで素敵なの!」
「そうだね。うん、勿論判るよ。だってヒミちゃんの事だもの」
にこりと大きな猫のような眼を細めてカァイイ顔で笑う弥刀ちゃん。
わかってもらえた嬉しさから抱きつきに行くと安定してぎゅっと抱き返してくれた。スリスリと少し上にある弥刀ちゃんの頬にすり寄って笑った。そうしたらクスクスと弥刀ちゃんも笑ってくれてもっと嬉しくなったの。
私は弥刀ちゃんが好き。でも、一緒にずっといて欲しい、その想いの方が大きいから、殺さない、切り刻まない、血は貰うけど飲み干さない。
優しくてカアイくてキレーでステキな弥刀ちゃん。
どうか私に優しくあり続けて。私と一緒に傍にいて。
ずっとずっと大好きです、弥刀ちゃん♡
大好きだと首元に顔を埋めて強く強く抱きつき願った。
彼女が死ぬ時は、私の傍で一緒に死のうねなんて、言うと、約束ねと弥刀ちゃんは笑っていた。
それに優越感と歓喜に満ち溢れまた私も笑った。
- 4 -
前次
しおりを挟む
ページ: