我慢とか、辛抱とか
苦手な方ではない。
苦労も、努力も
得意ではないが嫌いじゃない。
その先にある何かが見たいから
その先にある何かに希望を持っているから
ただそれは仕事に関してのことを言っているんだ、俺は。
自分が選んだ道を生き抜く為の我慢、辛抱、苦労、努力。けして、恋人との甘い恋愛生活に関してのことを言っているんじゃない…
恋人とはいつだって甘い時間を過ごしたい!
優しくして欲しい!
甘やかして欲しい!
「優しくないって?」
「いや?シュアはとっても優しくて穏やかだよ」
「声に出てたよ」
「!?」
今目の前にいるこの男はジョシュアといって、あぁそう俺の恋人なんだけど…
帰宅するなりベルトを外しズボンを脱ぎ捨て、この細い身体にはデカすぎるシャツ一枚になってソファに寝転がった。
携帯電話をいじりながら鼻歌を口遊み、華奢な脚を上げたり下げたりして俺を誘っ……てはナイんだろう。
でも俺は誘われていると勘違いして近付いてみたがジットリと睨まれ慌てて逃げ去った。
…なんなんだよ
「お前、風呂入れよ…」
「うん入るよ」
「…そんなカッコして」
「うん?」
「なんでもないですよ」
やれやれと溜息を吐き、俺は自分の部屋へ戻ろうと立ち上がる。
すると彼は鼻歌を止め、上げた脚を俺の尻にチョンチョンと当てた。
「どこ行くの?部屋?」
「…部屋だよ」
「何するの?」
「俺にだって色々やることあんの」
「それって俺より大事なこと?」
彼はそう言っていやらしく脚を上げていく。
シャツがどんだけブカブカだってそんなに上げられたら見ようとしてなくても見える。
彼の肌が、とてもよく見えて…
足の指、甲、踝、ふくらはぎ、膝、太腿…
無意識に
追うように目が動いてしまう
「…いい加減襲うぞ」
「むしろ、いつまで手出さないつもり」
挑発的な表情と声色に理性が切れる。
彼の妖しい微笑みを見て、なんて計算高い奴…なんて本当は思ったけど、もうそんなのどうでもよかった。
気付いたら俺もソファの上に乗っかって
彼のシャツのボタンを乱暴に外していって
俺たちは二人してあっという間に裸同士で抱き合って
欲を満たし合う。
我慢とか
辛抱とか
やっぱり苦手じゃないかも…
我慢すればするほど辛抱すればするほど
手に入った瞬間がこんなに気持ち良い。
彼がそばにいてくれる間はいくらでも我慢も辛抱もしようと思った。
そして彼がいなくなってしまわないように
俺は、努力しなきゃいけない。
嫌いじゃない。どころか彼の為の努力ならば尚更、
それは苦労なんかじゃないとも。
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