「…は?用事?」
やっと帰宅してきたかと思えば、第一声が「急用ができてしまった!」だったんだ、怒るだろ普通。
そもそも急用ができてしまったのなら終わらせてから帰ってこいよ…
なんで一旦帰ってきた。「急用ができてしまった!」って言いにだけ戻ってきたの?馬鹿なの?
「…ごめん、なさい〜!」
「…久しぶりに二人きりの時間だって、楽しみにしてたのは…おれだけだったんだね…」
「ぼ、僕だって…」
「どこのどいつだ」
「…ぇ」
「おれより優先されたそいつは、どこのどいつだって聞いてんだよ」
玄関で腕を組んで睨みつける俺と、
靴も脱がしてもらえず睨まれ続ける彼。
アタフタと両手を動かしながら必死に俺を納得させる言葉を考えているのが伝わってくるが、許してやらない。
意地悪をしているんじゃない。怒っているんです。おれは。
「中国から友達が来てて…」
「へぇ」
「きゅ、急だったんだ…分かってたらもっと早くヒョンに伝えてた!」
「ふーん」
「あ、明日の朝帰るって言うから…今日しかもう…会えな…くて…それで……」
俺を抱き締め、頭を撫で回し、額に何度もキスを落としながら、俺の機嫌を直そうと必死な彼が面白くてついクスリと笑ってしまった。
「…ハニ…?」
「…いや。もういい」
「ハニ!!」
「いやいや、もう許すってこと。ごめんね」
そう言って微笑むと、彼はしばらく俺の顔を見つめ、
「ほんと…?」と不安そうに近寄せた唇を俺の唇に当てがった。
ほんの数秒の口付けが終わる。
彼が離れていくのが寂しい。
沢山甘やかしてやりたかったし
沢山甘えたかったのに、とも。
正直なところ思ったけれど、もう十分反省させたしいいだろう。
「気をつけるんだよ」
「ありがとう!!」
「いってらっしゃい」
「帰ってくるまで待っててね!!」
「…先に寝ててね、って言うんだよ。大人の男は」
ぼそ…と呟くと、彼は力一杯俺を抱き締めて、
「僕は大人じゃなくていいから、帰ってくるまで待ってて欲しい」
「…」
「寝てても起こすから」
と真剣な顔で言い放ったあと、またパッと笑って出て行ってしまった。
中国の友人とやらの元へ。
嵐のような奴だ…
俺の感情を掻き回しまくって、居なくなっちゃって。
挙句「寝てても起こす」なんて台詞残して出ていくなんて、本当に無自覚にずるい人だと思う。
「…いや起こすなよ」
まぁ
寝るつもりもないけどさ…
- 7 -
*前次#
ページ: