涙が咲かせた花の色/角名


※角名くんの高校卒業後について捏造があります。大学進学をするということで話が進むので注意してください。




卒業式に桜は滅多に咲かない。色の濃い梅の花を見ながら渡された色紙を見つめて思った。桜を模したその形の色紙には、お世話になりました、寂しいです、頑張ってください、と月並みな言葉が並んでいる。それに何かを思うわけではない。部活には入っていたけれど、お世話になりました、なんて言われるほど後輩の面倒を見た覚えなどなかったからだ。
長かった青春。いい事ばかりではなかったし、だからと言って悪い事しか無かったかと聞かれればそうではない、長くて、振り返ればあっという間の3年。全て自分における、自分のためだけに存在していた高校3年間が今、終わろうとしている。

「やり残したことはありませんか、だって、ナマエ、なにかある?」
「えー……そんなん、やり残したことだらけだよ。女子高生だからってもう言えないし」
「アハハ、ホントそれ。もう明日からは言えないね」

卒業証書を片手に友達とそんなことを話しながらお互いのアルバムに書き込みをした。私たちから高校生という免罪符はなくなってしまう。
無邪気に笑ってファーストフードのお店でグダグダと喋ることも、プリクラを撮ってはしゃぐことも、きっと大学生になったら途端に恥ずかしくて、ガキっぽいなんて思ったりするんだ。ついこの間まで自分だってそうだったくせに。
女子高生、制服という鎧、私たちはそれだけで無敵だった。着納めの稲荷崎の制服、キャメルのカーディガン、冬に到底向いていない室内履きのサンダル。
ここで3回の冬を迎えて、何度も何度も教員に文句をブーブー言ったけれど、結局この室内履き以外が許されることはなかった。懐かしい。何を言っても関西弁の「喧しいわ」という言葉で終わったなあ。
兵庫の厳しい冬にこの足がほとんど隠れないサンダルはすごく寒かった。ああ、そうだ。ほとんど文句を言うのが女子である中、小さく寒い寒いと言っていた男子がひとりいた。
そんなことを思い返して、私の頭の中には1人の人物が思い浮かんだ。
あ、やり残したこと、あったかも。小さい声で呟いた言葉を耳敏く拾った友達はなんだなんだと身を乗り出す。

冬になると寒そうに元々良くない姿勢の背中をさらに丸める人だった。何を考えてるかよく分からないポーカーフェイスだけれど、その割にSNSをよく弄っていて、多くを話す方じゃないけれど必ずクラスの中心に巻き込まれるような形で入り込む。飄々としているのに、態々愛知かどこか、すごく遠いところからここ稲荷崎までバレーをしに来るような、そのアンバランスさが気になって、ふとした時に目を細めて笑うその横顔に惹かれた。

「角名、くんって……進学、だよね」
「あー……そうだったんじゃない?推薦じゃなかった?ていうかナマエの方が角名くんと仲良いじゃん。聞いてないの?」

友達は興味が無いのかそう答える。聞いてない、聞けなかった、私がそう言うと友達は訝しげな顔をした。どうして、と言わんばかりの顔だった。彼女の言うとおり、クラスの中で私はよく角名くんと話す方であった。県外から来ている、というこの学校ではまあよくある共通点と席替えの度に前後隣、どこかに彼がいたからである。
また近いじゃん、よろしく、と笑う角名くんに心がザワザワとひとりで騒いだ。本当に、数え切れないほど。
それでも彼に卒業後はどうするのか、そう聞けなかったのは、きっと、私に勇気がなかったからだ。元々県外からここ稲荷崎高校に進学したけれど、私はこのまま兵庫に残り続ける。
たまたま親の転勤がこの周辺に決まって、つい先日引越しまで終わった。在学中であったので稲荷崎の寮にとりあえずは住んでいるけれど、今日が終われば退寮日を待たずに引っ越してきたばかりの実家に戻る。1度も足を踏み入れていない真新しい家が実家だなんて、変な話だ。

私、角名くんのこと好きなんだよね。私が呟いた言葉に友達は今日1番の声を発した。何人かチラホラと残っていた同級生は何事かと振り返るので、私はゴメン、と手を振り、静かにしてよ、と元々乗り出していた体をさらに机に乗り出した彼女の肩を押さえる。そんな私に彼女はわなわなと震えると、静かになんかできない、早く、と私の手を取って立ち上がった。そして声高らかに言い放つ。

「好きなのに何も言わないとか、これから一生引き摺るよ。お姉ちゃんが言ってたもん!」

私はこの高校で一生付き合っていける友達を得たかもしれない。まるで自分のことのように早く早く、バレー部だから体育館にいるかも、とまだまだ卒業だからと騒がしい廊下の人混みの中、私の手を引く彼女を見て思った。
隙間を縫うように、時折、ごめんなさい通して、と声を掛けて私たちは廊下を駆け抜ける。渡り廊下では担任の教師が学年主任と談笑をしていて、走る私たち2人を見つけるや否や、走るな、と大きな声を出した。
私の手を引いて走る友達は、無理です、とこれまた大きな声で返す。その声はガラス張りの渡り廊下によくよく響いた。
これが最後、これで最後。まるで漫画のような瞬間を切り取った、今日この日を私は絶対に忘れないだろう。きっとそれは前を走る彼女もそうだと信じて、私は走った。

履きなれたサンダルでも時々脱げてしまいそうだった。バタバタと騒がしかった足音は目的地に近づくにつれて静かなパタリパタリという情けない足音に変わる。
部室棟か、体育館か、どちらに行けばいいのかという分かれ道にきて私たち2人は自然と足を止め顔を見合わせた。走ったからか、友達のつるんとした額は丸見えで、卒業式だからと2人で早起きして巻きあった毛先も取れかかっている。
情けない姿にこんなに走ったのなんてきっと体育の授業でもなかったんじゃないか、お互い上がりきった息で笑い合った。高い笑い声はきっとよく響いたのだろう。部室棟の方からこちらに向かって歩いてくる足音と共に、何しとんねん、と呆れたような声が聞こえた。
聞き覚えのある声に振り返ろうとしたけれど、その前に私の前で今の今まで笑っていた友達が固まり、驚きと僅かな期待に満ちた顔で、治と、角名くんこそ、と彼等の名前を呼ぶ。振り返ろうとした体が止まり、息を呑んだ。まさかこんなすぐに見つかるなんて思わなかったから、急激に迎えた展開に戸惑ってしまう。
部室の整理、置き勉しとってん。宮くんが答えた後、角名くんはこれだよ、ときっと持っている袋か何かを揺らしたんだろう。乾いた音が聞こえて、大きく息を吸った私は意を決して振り返った。

「ミョウジさん、前髪なくなってるよ」
「あ、えっ……うわ、走ったから……」
「走った?なんで?」

角名くんの言葉に私は自分の前髪を慌てて整える。すっかりと後ろに行ってしまった毛先を真っ直ぐに下ろし、何度も毛先を触った。なんで、なんでって、角名くんを探してたから。でもそんな風に答えられるほど、私は素直じゃないし可愛くない。
もう前髪は元に戻ったのに、いつまでも顔の前から手を退けることが出来なくて、きっと前にいる角名くんも宮くんも様子の可笑しい私に気づいているだろう。妙な沈黙が広がった。
すると角名くんが1歩、前に踏み出て、大丈夫?と私に問い掛ける。低いけど、聞き取りやすくていつまでも聞いていたくなるような声。そのあまりの優しさにじんわりと涙が溢れる。ああ、そうだ、こういう意外な優しさも好きだった。ううん、好き。すごく好き。
溢れ出した感情にふるふると体が震えた。それを見て背後にいた友達が突然、治、と声を張る。今日2度目の大きな声だった。

「治を探してたの!私!ナマエ、ありがとうね!黒須先生が呼んでこいって、私に、治を!一緒に行こう!ね!」
「ハァ?なんなんその勢い」

友達はそういうや否や私の背後から飛び出して宮くんの腕を取った。おい、ちょ、ちょい待ち、と戸惑う宮くんをグイグイと引っ張り、私に向かってウインクをする。頑張れ、暗にそう言われたような気がした。そのお陰なのか、身体の震えなんてどこかにいき、涙の滲みそうであった瞳からは熱が引く。
もしもこれが最後なら、角名くんの記憶に泣き顔なんて残したくなかった。よかった、そう息を吐いて私は前髪に触れていた手を下ろす。

黒須先生なんて会ってないことは、今の今までずっと一緒にいた私が1番よく知っている。これは、この空間は、彼女から私への気遣いなのだ。彼女たちふたりの小競り合いが聞こえなくなって、静まり返ると角名くんはクスリと笑い声を漏らす。何アレ、凄いね。角名くんは静かに笑い続け、その肩を揺らした。スラリと高いその背は、猫背だからそこまですごく大きく見えないけれどこんなに近くまで寄るとやっぱり彼がとても大きいことがよく分かる。
教室では気だるそうな顔をしていても試合になれば、真剣そのもので、彼がしっかりとバレーに対して真摯で、スポーツマンであることは彼の試合を何度もその目に焼き付けてきた私は知っていた。
角名くんは、卒業したら、どうするの。そうやって彼に聞いたあと、私は自分の喉がカラカラに乾いていたことに気付く。慌てて咳払いをして誤魔化したけれど、角名くんはもう一度私に大丈夫かと聞いて、手に持っていた紙袋からスポーツドリンクのペットボトルを取り出した。

「さっき後輩から貰ったのでよければ、どーぞ」
「えと、あり、がとう」
「で、俺の進路だっけ?」

聞いてどうするの、なんて言われたらどうしよう。立ち直れない。渡されたペットボトルを音が聞こえるほどに握り締め、彼の言葉に頷くと、愛知に戻るよ、と彼は事も無げに答えてみせた。
愛知。戻る。彼の答えを頭の中で整理して、そっか、と呟くと角名くんはミョウジさんはどうするの、と聞き返してくれる。一種の社交辞令のようなものなのだろう。私は家族がつい先日兵庫に越してきて、そこにそのまま戻ることを伝えた。
初めて帰るのに実家だなんて、変な感じだよね。私がそう冗談めかして笑うと、角名くんもそうだね、と笑って、じゃあこれからはずっと兵庫なんだ、と噛み締めるように呟いた。なんだかそれが嬉しくて、でも少し恥ずかしくて私は顔を下に向けて彼の室内履きを見つめる。
あ、少し履き口のところが破けそう。意外に履き潰していたのか、なんて新たに発見出来たことを忘れないように頭に刻んでいると、ミョウジさんって優しいよね、と角名くんはなんの脈絡もなしに話し始めた。

「そんなことなくない?普通だよ」
「優しいでしょ。吹奏楽部でもないのに、ほぼ毎回試合応援来てくれてたし」
「き、気付いてたんだ……」
「まあ、オッサンだらけの応援団の中にクラスメイト混ざってれば気付くでしょ」

たしかに。大きい大会でない限り宮ツインズ親衛隊はあまり来ないし、基本はオジサンばかりの応援団がアリーナを埋めていた。それを宮くん達は、オッサンのぶっとい声ばっかてつまらん、と笑っていたけれど、私は案外それが楽しかった。何故なら応援団のオジサンたちは、確かに野次を飛ばしたりすることも多かったけれど、侑はこうだから、治はこうだから、ととても分かりやすく解説をする。
正直バレーのルールなんて全く分からなかった私だったけれど、お陰で試合観戦をきちんとすることが出来たのだ。それに、なにかにつけては倫太郎、倫太郎と話す通称倫太郎おじさんから、角名くんがどんな選手でどんなプレーが得意なのかを教えて貰う事も出来た。
私、最初倫太郎オジサンって角名くんの親戚かと思ってたの。ふ、とそんなことを言うと角名くんはその綺麗な眉毛を歪める。そのやめて欲しい、というような顔に、私は笑った。どうやら彼は3年間そのオジサンに応援として受け取るには熱すぎるエールを送られ続けていたようである。
親戚じゃないよ、俺の事すげぇ知ってるけど。角名くんはきっとそのオジサンのことを話すのにすごく言葉を選んだのか視線を少しさ迷わせる。けれども結局選んだ言葉もあまり気に入らなかったのか、顔は歪んだままでなんとも言えない感情が私にも伝わってきた。

「角名くんのこと、たくさん教えてくれたよ。お陰で私も角名くんのこと、すげぇ知ってる」
「ヤメテ。ていうか、ミョウジさんになら俺が教えるから」
「えっと……うん、そっか。聞けば、よかった」

角名くんはきっとなんにも思ってない。だけれどその口から放れた言葉が予想外に私の心を突き刺した。聞けば、教えてくれたんだ。なら恥ずかしがらずに聞けばよかった。聞きたいことは、たくさんあった。
彼はバレーのことで、というつもりで言ったのだろうけれど。言葉だけで受け取れば、私が彼のことを知りたいと言えば答えると言うようにも受け取れる。
角名くん、私、聞きたいことたくさんあるよ。
好きな教科は、嫌いな教科は。食べ物の好き嫌いはあるのか。どんな音楽を聴くの。私服はどんなのを着ているの。好きな人の、タイプ。今、好きな人はいるのか、とか。たくさんあるんだよ。そんなことが頭に浮かんで、さっき引いた目元の熱が一瞬で戻ってくる。気付けば目の前にいる角名くんの目は驚愕に満ちていて、私の頬には涙が伝っていた。
どうしたの、え、大丈夫?と角名くんが戸惑う。紙袋を持っていない方の手が私の頭や肩に触れそうで触れない。そして何回か私の周囲を彷徨った手は、ブレザーを漁り、紙袋を漁る。そして目当てのものを見つけたのか私に向かって角名くんは今日2回目のどーぞ、を今度は気遣うように言った。
差し出された真新しいタオルはきっと貰い物なのだろう。まだ折り目が付いていて、私は受け取れないと首を横に振り、少し伸びているカーディガンの袖で拭おうと腕を持ち上げた。だけれどそれが私の目元に到達することはなく、動きを遮られる。角名くんの大きな手がきゅ、と私の腕を握っていた。

「擦ったら、跡になるよ。タオルなんかいくらでもあるから、使って」
「……むり」
「なんで」
「だって、多分私、捨てられない」
「捨てなきゃいいじゃん」
「振られるのに、捨てられないの、辛い」

私の言葉に角名くんは目を見開いて固まる。は、と辛うじて出したような声は戸惑いに満ちていた。ああ、言ってしまった、私は自嘲する。振られるのに、と言葉にしてしまったのは私で、角名くんはその言葉を聞いて、きっと察せないほど鈍感であるはずがない。角名くんは、どういうこと、と私に聞く。
正直聞かずにいてほしかった。どうせ全てを聞いたところできっと私なんか、ごめん、そんなふうに見た事ないとかなんとかって振られるのが関の山なのに。そんな風に思っていると余計に涙が込み上げ、もうどうにでもなってしまえばいいという気持ちになった。泣き顔なんて最後に見せたくなかったのに。すんすん、と鳴る鼻を啜って私は話す。

「角名くんのこと、知りたかった……何が好きで、嫌いで、どんな服着て、休みは何、するのかとか、全部、ホントは、知りたくて……でも今日、で、おわり……」
「……うん、それで?」
「……終わり、だからほんとは、泣きたくなかった、笑顔、でお別れしたくて……でも、出来ないぃ……」
「ウケる。大泣き」

角名くんは笑った。そして持っていたタオルで私の涙を拭うと、それだけ?と私の話を促した。最後まで、ちゃんと言えよってことなのかな、いやたぶん違う。最後だから、聞くよという彼の優しさなんだろう。私はひくひくとなる喉を落ち着かせるために、角名くんから頂戴したスポドリを1口含んだ。甘酸っぱくて、爽やかな味が自然と私を落ち着かせる。
穏やかになった気持ちと呼吸で、私は彼が促すままに話を続けた。

落ち着いてて、冷めてそうなのに、バレーをするためだけに兵庫まで来てる角名くんのことが気になって、ずっと見てたの。真剣にでも時々ふざけるみたいにバレーをする角名くんが、カッコよくて、いつの間にかこんなに大好きになってました。角名くんのことが好きです。大好き。ずっと応援してる。バレー、辞めないで、プロになって、そしたら私ファンになる。
最後らへんはまた涙が込み上げてしまって、ふにゃふにゃと言葉になっていなかった。それでも角名くんはうんうん、と頷いてプロか、とボヤく。なる気はなかったのだろうか。悪いことを言ったな、と慌てて謝罪しようとすると、角名くんはミョウジさんは、俺のファンになりたいの、と首を傾げた。
ファン、というか。私は言い淀んで、口を閉じた。勿論角名くんがバレーをする姿を見ることが好きだし、それを応援したいと心から思っている。でもそれは、私が彼を恋愛的な目で見ていることが大前提であるのでそれはファンとしては少し、いやかなり偏っているのでは。そこまで考えて、ぷっつりと思考が途切れた。
ファンに、なりたい、わけじゃない。その言葉に角名くんは満足そうに頷いてそれで、どうなりたいの、と改めて私に尋ねる。

「角名くんの、彼女に、なりたい」
「大歓迎です」

私の出した答えに角名くんは目を細めて笑顔を浮かべた。そしてタオルを雑に紙袋へしまうと、私の顔にかかった髪の毛を梳かすように耳にかける。そして悪戯っぽく笑って囁いた。
ミョウジさんから言ってくれてよかった、俺退寮日に言おうって決めてたから、危ないところだった。何がよかったんだ、私は死ぬ思いだったのに、そう言い返したいけれど胸の中に広がる高揚と込み上げる涙で言葉が発せられない。また肩を鳴らして泣き始めた私を角名くんは笑いながら抱き締めた。
未だに信じられなくて、私は彼の腕の中で何度も聞く。角名くんの、好きな物も嫌いな物も聞いていいの。休みの日は何してるか聞いてもいいの。どんな服が好きか聞いてもいいの。そんな私のとりとめのない言葉全てに、角名くんはいいよ、と優しく答える。

「どんな子が、好きなのか聞いてもいいの?」
「それは、ミョウジさんだよ」

その質問には明確な答えがあったようで、角名くんはそう答えると私の体を離して大きな手で私の頬を包み込む。涙を優しく拭き取るように動く指から、彼の優しさや思いが伝わってくるようだった。

「ミョウジさんは、これからも俺の応援しに来てよ」
「いいの?うるさくない?迷惑じゃない?」
「いいんだよ。彼女なんだから」

角名くんはそう言うと再び私を抱き締めた。そして確かめるように私の頭を撫でると、ミョウジさんは俺の応援団長ね、とからかうように私に囁く。それが擽ったくて嬉しくて私は角名くんの背中に手を回して彼を抱きしめ返した。角名くんだけ、ずっと応援するね。私がそう言うと、ナマエがいれば百人力だよ、と言うので私はまた泣いてしまった。でも、これが最後じゃないから、今日だけはたくさん泣いておこう。そう思って私は倫太郎の胸に泣きついた。これからも宜しくね、そんな思いが伝わればいい、そう思いながら。

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